コラム

 公開日: 2016-06-21 

晩年のお大師様が表した願いとは? ─迷いを解き、万人を救うために─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 お大師様は、み仏の世界へ旅立つ7ヶ月前にこの文章を書かれました。
 すでに死期を悟り、2年前から穀類を断っているという状況にあって、金剛界と胎蔵界という大日如来の世界を表現し、行者が修法し、ご縁の方々が参拝して救われる仏塔とマンダラを造る事業にとりかかられました。
 しかし、高野山に資材が集まり、人は集まっても、食べる食糧が足りないのでお金一銭、米一粒でも布施していただきたいと願い、以下の文章を書かれたのです。
 少々、長いのですが、一文字たりとも省ける部分がありませんので、筑摩書房の「空海全集」から転記してみます。

「夫(ソ)れ諸仏の事業は、大慈を以(モッ)て先と為し、菩薩(ボサツ)の行願(ギョウガン)は、大悲を以て本(ホン)と為(ナ)す。」

(そもそも、もろもろの仏のなされることは、大いなるいつくしみの心を第一とされ、菩薩の衆生をすくわんとする行為と願いは、大いなるあわれみを、要点としている)

 仏菩薩は、私たちへお慈悲をたれておられます。

「慈は能(ヨ)く楽を与へ、悲は能(ヨ)く苦を抜く。
 抜苦与楽(バックヨラク)の基(モトイ)、人に正路(ショウロ)を示す、是(コ)れなり。」

(いつくしみは人々に楽を与えることができ、あわれみは苦しみから救い出すことができる。
 苦しみから脱し、楽を与えてやることの基礎は、人々に正しい仏の道を示してやることに他ならない)

 動物も植物も人間も、生きとし生けるものはすべて、楽に生きられる方向を求め、死へ向かう苦しみから脱したいと願っています。
 それを見捨てられないならば、救われる正しい道を教えてあげるに越したことはありません。

「謂(イ)う所の正路(ショウロ)に、二種有り。
 一には定慧(ジョウエ)門、二には福徳の門。
 定慧(ジョウエ)は正法(ショウボウ)を聞き、 禅定(ゼンジョウ)を修するを以(モッ)て旨と為し、福徳は仏塔を建て、仏像を造するを以(モッ)て要と為す。
 三世の諸仏、十方の薩、皆斯(コ)の福智を営みて、仏果を円満す。」

(いわゆる正しい道には、二種の行き方がある。
 一つは瞑想〔定〕と智慧〔慧〕をもっぱらにするもので、第二は、善行に因り人々に福を与えることをもっぱらにする行き方である。
 定と慧は、正しい仏の教えを開いて、深い瞑想を修行することを主とし、福徳を与えるのには、仏塔を建て、仏像を造ることを、要点とする)

 私たちがまっとうに生きたいならば、心を平静にして我欲や自己中心の心から離れ、真理・真実を見極めるのが一つ、もう一つは、他者へ福徳を与えることです。
 つまり、み仏の教えに基づいて瞑想の修行をするか、もしくは仏塔や仏像を造り、人々が救われる場とすることです。
 自分自身の心を制御し、他者のために役立つこと、これが歩むべき正しい路です。

「三世(サンゼ)の諸仏、十方の薩埵(サッタ)、皆斯(コ)の福智を営みて、仏果を円満す。
 是の故に比年、四恩を抜済(バッサイ)し、二利を具足(グソク)せんが為(タメ)に、金剛峯寺に於(オイ)て、毘盧遮那(ビルシャナ)法界体性塔(ホウカイタイショウトウ)二基、及び胎蔵・金剛界両部曼荼羅(マンダラ)を建て奉る。
 然(シカ)るに今、工夫(コウフ)数多(アマタ)にして、粮食(リョウショク)給し難し。」

(過去・現在・未来の仏たち、世界全体の菩薩たちは、みなこの福徳の行いをして、さとりの境地を完成するのである。
 この故に、最近、父母・国王・衆生・三宝の恩に報いんとして、すべての苦を除いて、自利・利他を完全になしとげようと思った。
 そこで高野山金剛峯寺に毘盧遮那仏という宇宙の本体を表すため二基の塔を建て、金剛・胎藏二部の曼荼羅をお作り申しあげることにした。
 しかしながら、今、労役する者はおびただしく、食糧を満足に与えられない)

 悟りを開いたみ仏は、智慧を磨き、世界へ福をもたらした方々です。
 自分勝手な考えを持ち、欲しい、惜しいと貪るままで不動の安寧を得ることはできません。
 そうした役割を果たそうとする仏教者として、お大師様は死期を迎えてなお、仏塔とマンダラを造ろうとされました。
 しかし、山上の高野山では、はたらく人々の食べものにすら事欠くありさまです。

「今思はく、諸(モロモロ)の貴賤の四衆と、斯(コ)の功業を同じくせんと。
 一塵(イチジン)大嶽(タイガク)を崇(タカ)うし、一滴広海を深うする所以(ユエ)は、心を同じくし、力を勠(アワ)すが、之(コレ)致す所なり。」

(今思うに、多くの貴者・貧者・僧・尼僧・男女の信徒たちとともに、この仕事を一緒になし遂げたい。
 塵も積もって大山として聳え、一しずくの水が広い海を、いっそう深くすることができるのは、それは心を合わせ、力を合わせてこそ、できるのである)

 人の道を行くよきことは、相手を選ばず、共に行いたいものです。
 私たちは子供の頃から「塵も積もって山となる」と、精進の大切さと価値を教えられたはずです。
 そして、ことをなし遂げるためには、心を一つにし、真に力を合わせせなばりません。

「伏して乞(コ)ふ。
 諸(モロモロ)の檀越(ダンオチ)等、 各(オノオノ)の一銭、 一粒(イチリュウ)の物を添へて、斯(コ)の功徳(クドク)を相済(アイスク)へ。
 然(シカ)らば則ち営む所の事業(ジゴウ)、不日(フジツ)にして成らん。
 生ずる所の功徳(クドク)万劫(マンコウ)にして、広からん。
 四恩(シオン)は現当(ゲントウ)の徳に飽き、五類は幽顕(ユウケン)の福を饒(ユタカ)にせん。
 同じく無明(ムミョウ)の郷(サト)を脱して、斉(ヒトシ)く大日の殿(デン)に遊ばん。
 敬って勧む。
 承和元年八月二十三日」

(心よりお願い申しあげる。
 多くの施主たちが、それぞれ金一銭、米一粒をあつめて、この功徳をなしとげるように。
 そうすれば、きっとこの大事業も、日ならずして完成するであろう。
 その行為によって生まれる功徳は永遠に亡びることなく、世界中に広く行きわたるであろう。
 四恩は現在および未来も、その恩に充分に報いることができ、五類の天は、目に見える。また目に見えぬ福を豊かに垂れてくれるであろう。
 そして皆ともに無知の迷いの世界を抜け出して、そろって大日如来のさとりの御殿に遊べるようにさせたまえ。
 謹んでおすすめ申しあげる)

 これは、西暦834年に書かれました。
 今から約1200年前のできごとです。
 恵まれた環境や、約束された栄誉をなげうって仏道に入ったお大師様は、還暦にいたってなお、烈々たる万民救済の意思を持ち、全身全霊をかけて法務に邁進しておられました。
 宮中で修法を行い、般若心経の解説書を書き、高野山ではこうした活動を行っておられました。
 そのおかげで私たちは、現在、学び、実践し、救われ、救うことができます。

 日本が戦争をせず、子供たちが怒りや怨みやイジメの心を離れ、ひいては世界が平和になるよう願い、祈る当山の「不戦堂」建立運動も、フンドシを締め直して進めねば、と奮い立つ思いです。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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遠藤龍地

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