コラム

 公開日: 2016-06-30 

行者の精進、ご縁の方々の救い ─自利と利他に思う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈広島の平和記念資料館にある被曝人形。もうすぐ撤去される予定だという。今のうちに、脳裏へ刻みつけておきたい。戦争が何であるか、原爆が何であるか。その身震いする実感が払拭された時、平和は言葉だけになってしまうことだろう〉

 27日から282日かけて、新幹線で東京へ行き、当日夜そのまま広島へ、そして翌日、平和記念公園へ出向き、同じく新幹線で帰山した。
 片道約6時間、往復12時間は得難い時間となった。
 大正大学仏教学科編による「仏教とは何か その思想を検証する」が通読できた。
 ほとんど知っていたはずの思想史の基礎だが、今回、集中して読んでみたところ、思いもよらない発見があった。

 あまりにもあたりまえだが、お釈迦様が得られた一切智(イッサイチ)は深遠にして広大であること。
 そして、祖師となられた方々は皆、自分自身が納得を得た後、娑婆の方々の救済法に工夫をこらしたことである。
 これもまた当然だが、プロは娑婆の方々のお支えにより、非生産的日々で道を探求するが、娑婆の方々はそうはゆかない。
 しかし、はたらき、家族を養い、家庭とお墓を守るといった普通の日常生活をして営んでいる方々が救われなければ、宗教の価値はない。
 だから祖師方は、呻きつつ自らの問題に挑み、高度な修行を続けて何かをつかんだ後、今度は、娑婆の方々が自分と同じように救われる方法の発見へ挑まねばならなかった。

 自利(ジリ)、利他(リタ)と簡単に言うが、自らが苦悩を脱する自利の道はもちろん、真剣に考えた利他の道もまた、イバラの道だった。
 しかし、どの道もすべての手がかりは経典にあり、お釈迦様が実際に悟られた境地への憧憬が不退転のエネルギーをもたらした。
 インド仏教の完成形であり、インドにおける〈最後の仏教〉となった密教においてもまた、自利のための修行・修法が高度化したため、利他の方法もまた深く考慮されてきた。
 それは、お釈迦様が終生、続けられた対機説法(タイキセッポウ…相手に応じた説き方)の伝統によって、役割を果たすことである。
 マンダラの思想をふまえ、小乗仏教、大乗仏教すべてを学び、他の宗教宗派と一切、争わずそれぞれのレベルを尊重する密教においては、相手を尊重し相手に合わせることは極めて自然な姿勢である。

 象徴的な例が、淳和天皇(ジュンナテンノウ)の第四妃となった真井御前(マナイゴゼン)の逸話である。
 御前は過酷な宮中の人間関係に耐えられず、西宮の摩尼峰に神呪寺を立てて出家し、如意尼(ニョイニ)となった。
 お大師様を深く信じ、伝授された高度な修行を重ねたが、なかなか悟りへ達しない。
 苦悩する如意尼のため、お大師様は桜の樹で如意輪観音(ニョイリンカンノン)像を彫り、真言の読誦を指導された。
 やがて病気になった如意尼は、お大師様が入定(ニュウジョウ…瞑想に入ったままこの世を去ること)される前日、高野山へ向かい、真言を唱えながら遷化(センゲ)した。

 このできごとは、実に大きな意味を持っている。
 広大な修行や修法の体系はプロにとって死ぬまで探求せねばならないものだが、寺院へ救いを求める方にとっては、その方が救われる実戦可能な方法が授かるかどうかがすべてである。
 その方に応じた方法や考え方を選び、お伝えすることができるかどうか。
 行者が本ものであるかどうかが、ここで問われる。
 祈りはすべて身体と言葉と心が用いられるとは言え、如意尼の場合は、唱える言葉への集中が霧を払う突破口になった。
 隠形流(オンギョウリュウ)居合の場合には、剣を持ち身体を大きく動かしながらご本尊様の印を作るところに突破口を求める。
 気合術では、言葉への集中が主である。
 そして阿字観(アジカン)は、観想という心の用い方を主とする突破口と言える。

 行者は、自分が何らかの方法で突破口を開いたように、ご縁の方々が先へ進めるよう、全力を尽くす。
 また、自分自身ではなかなか実践できない方々のために、その方に成り代わってご加護をいただけるよう、ご祈祷やご加持やご供養などを行う。
 ご本尊様がおられる寺院には救いのきっかけがある。
 何かを感じとっただけでもいい。
 そして、ご本尊様をお祀りする寺院のミニチュア版であるお仏壇にもまた、救いのきっかけがある。
 ご本尊様に守られた墓地や墓所にもまた、救いのきっかけが見つかることだろう。
 信じて手を合わせ、足を運んでいただきたい。
 

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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