コラム

 公開日: 2016-07-08 

宗教者と教団の選び方 ─道具の話・あるべきようの話─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈自分自身で自分の「あるべきよう」を考えよと説かれた明恵上人〉

 宗教とかかわって失敗したという人生相談は絶えない。
 悪因縁を説き、善行が順調に進むよう、幾度も修法してきた。
 二つのポイントを記しておきたい。

○大切なのは、用いる道具がどうかということよりもむしろ、道具をどう用いるかである

 仏教は、教えが心身の血肉となる前は、数ある道具の一つでしかない。
 キリスト教も、イスラム教も、自由主義も、社会主義も、博愛主義も、果てはナルシシズムすらも道具である。
 包丁が料理に役立つ反面、人殺しの手段にもなり、火が清めと共に火事をもたらしたりもするように、道具には多様な可能性がある。
 そして、多くの場合、結果への道を決めるのは、用いる人間の心である。

 ある時、僧侶に裏切られたAさんが嘆いた。
「大学で学び、こんなにも深い仏縁に恵まれながら、何の縁で、このようなことをされるのか。」
 縁となった僧侶が、娑婆的現実に関して、常々の言動とはまったく別人のような面を露呈し、周囲が困り果てたのだ。

 ある時、新興宗教に引きずり込まれそうになったBさんが嘆いた。
「これだけが正しい、他は邪宗だ、これだけをやれば幸せになれる、他は捨てと教え込まれ、苦しくなりましたが、お釈迦様はそんなふうに説かれたのでしょうか?」
 有名な宗教団体なので行ってみたら、カルトや蟻地獄のような恐怖感を覚え、大変な目に遭いながらも、ようやく脱出したという。
 
 仏教に関して言えば、仏教経典を用いているから、まっとうな人であり、まっとうな教団であるとは言えない。
 教えの内容よりもむしろ、教えをどう用いているかが問題だ。
 標語は飾りであり、善良な信者たちが教祖や幹部の隠された〈狙い〉に気づかぬ例は山ほどある。

 もしも、宗教を説く人や教団との縁を深めようとする場合は、教えの〈内容〉から離れ、その人自身が一人の人間としてどう生きているか、その教団が社会内の存在としてどのように社会とかかわり、どのように運営されているか、その〈ありよう〉を客観的に眺めてみたい。
 まず、本分をもってきちんと自立できていなければいかがなものか。
 まず、教団か、それ以外の世間か、二者択一を迫るようでは危険だ。

 お釈迦様は、バラモン教と思想的に相容れないにもかかわらず、弟子たちへ、行者として清浄なバラモンたちへ学べと説いた。
 お大師様は、他の宗派と争わず、むしろ多様に学びつつ、より高いものを求めよと説いた。
 ダライ・ラマ法王は、宗教的立場を超えた地点で、互いに認め合い、互いを思いやろうと説いている。

 このあたりから相手をよく見れば、失敗しにくくなることでしょう。

○人は知っているとおりには生きられない

 自分を振り返ってみよう。
 知っているとおりに生きているか?
 それができているなら、誰かを苦しめなかったはずだ。
 誰かと疎遠にならなかったはずだ。
 何かを奪わなかったはずだ。
 何かを失わなかったはずだ。

 私たちは、〈どう生きるべきか〉をおおよそ、知っているはずなのに、なかなかそうは生きられない。
 一方、確かなのは、〈こう生きたい〉と思う方向へ進もうとしていることだ。
 つまり、あるべきよう、ではなく、やりたいよう、に生きるのが私たちの現実だ。

 今から約800年前に活躍した明恵上人(ミョウエショウニン)は生涯、月輪観(ガチリンカン)の修行を欠かさず「月の行者」とも呼ばれた。
 その遺訓は、「阿留辺幾夜宇和(アルベキヨウハ)」の7文字に貫かれている。

「人は阿留辺幾夜宇和(アルベキヨウハ)と云(イ)う七文字を持(タモ)つべきなり。
 僧は僧のあるべき様、俗は俗のあるべき様なり、乃至(ナイシ)帝王は帝王のあるべき様、臣下は臣下のあるべき様なり。
 此のあるべき様を背く故に、一切悪(ワロ)きなり。」

(人は、「あるべきようは」という7文字を心に刻んで忘れないようにすべきである。
 出家者は出家者のあるべきよう、娑婆の人は娑婆の人のあるべきよう、国王は国王のあるべきよう、臣下は臣下のあるべきよう、を考え、それに背かぬようにせねばならない。
 この、あるべきよう、に背くために、一切の悪事が起こるのである)

 上人の言葉はこうも読める。

「ものの道理や人の道を知っているつもりでいるだけでは危うい。
 自分は自分の置かれた立場なりにどうあるべきか、その道理や道を常に問い、得た答に合わせる努力をし続けなければならない。
 それを怠るところから、この世のすべての過ち、悪行が起こってくる」

 また、気をつけねばならないのは、こうも説かれている点である。

「仏も戒を破りて我を見て何の益(エキ)かあると説い給(タマ)へり。」

(お釈迦様も、戒めに背いていながら、悟った人を崇めたところで何にもならない、と説かれているではないか)

 出家者と在家者を問わず、決して、拝めばまっとうに生きられるのではない。
 まっとうに生きるためには、自分自身を省み、外に学び、内に仏心の声を聴き、それに従う自分自身の努力が欠かせない。
 仏神に祈るのは、〈凡夫はいかに努力しようと何かが足りない〉からである。
 知っているとおりにはなかなか生きられない私たちだからこそ、いかに生きるべきかを常に問い、実践し続けねばならないのは、上人が説かれたとおり、置かれた社会的立場にかかわりなく共通の真実だろうと思う。

 このあたりから自分をよく見れば、失敗しにくくなくことでしょう。

「おん あらはしゃのう」
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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