コラム

 公開日: 2016-07-16 

多様性は宝石のように輝く ─虫たちの声・雑木林の妙・生き直す終括─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 あと3週間で立秋、山里の朝はすでに、虫たちが主役です。
 まだ、梅雨明けもしていないのに、天気予報士たちはあれほど「酷暑」を心配していたのに。
 昭和37年、高橋元吉が書いた詩「鳴く虫」を思い出しました。

「草かげの
 鳴く虫たちの宝石工場

 どの音もみんなあんなに冴えてゐるから
 虫たちはきつといつしんになって
 それぞれちがつたいろの宝石を
 磨いてゐるのだらう

 宝石のひかりがうつり
 いひやうもない色まであつて
 方々の草かげがほんのりあかるい」

 虫それぞれなりのいのちの発露が迫ってきます。
 聴いた作者はついに、「ほんのりあかるい」と見える人にまでなっています。
 全人格、魂をかけて虫の音を受けとめているのがわかります。

 今から20年前、中川重年氏は名著『再生の雑木林から』に、学びと共生の道を示しました。
 人の手が入らず長年、放置された林はササなどに占領され、人間が足を踏み入れられないどころか、多様な植物たちが生きる場も失われます。
 私たちが普段、住んでいる地域からそう遠くないところにある雑木林は、ちょっと工夫して目をかけ、手をかければ、見違えるほどに生き返り、林の中の多様な動植物たちが活き活きすると共に、人間と林の共生も可能になります。
 こうした見通しのよい空間が保たれれば、熊に対する一種のバリアともなり、最近、各地で発生している熊騒動の解決にも一役買うのではないでしょうか。

「雑木林で家族、友達、地域の仲間とともに行動することは、多様な自然の事象にぶつかり、それに対応する判断力、行動力、協調性、共同作業、他人へのいたわりといった、グループとしての質を高める訓練が不断に行われてくる。
 さらに、こうした活動の結果、林床植生にこれまでなかった植物が再生してくることを目の当たりにすると、そのわずかな自分がかかわった自然に対するインパクトが、一部の優占種群を抑え、多くの種類の植物に平等な空間を与えていることに気がつく。
 人間社会のあり方にも、まさしくこうしたことが要求されているのではないだろうか。
 ともに始めた『きずなの森』の活動から、こうした新しい自然と共生する人間の生きる方向性を学んできたように想われる。」

 そうだよなあ、と思っている頭に浮かびました。
〝終括の本質は生きなおしではないか……〟
 いわゆる終活ならぬ人生の締め括りを真剣に考えるのは、それまでの生き方を振り返って一つの区切をつけることであり、その先に必ず、新たな生き方が待っているはずだ。
 新たな生き方をつかんで初めて、終括ができたことになる〟

 私たちが終括を行えばそれで人生の幕が降りるわけではありません。
 また、死後の準備をすればそれで済むわけでもなく、私たちの生は続きます。
 それなら、〈新たに生きる〉意識を持つことが重要ではないでしょうか?

 インドのバラモン教には古来、四住期(シジュウキ)という考え方があります。
1 学生期…学問の期間
2 家住期…社会人として役割を果たす期間
3 林棲期…森林で修行する期間
4 遊行期…遊行しつつ死を待つ期間

 思えば、終括は3番目に当たると言えそうです。
 いきなり家や家族から離れなくても、それまでの人生を省みつつ、人間とは何か、人生とは何か、自分はこれから一人間として何を行いつつ残りの生をまっとうすべきか、という人生の根本問題に向き合うことはできます。
 そして、やがて、モノ金や名誉にこだわらず、自然に死を待つようになれば、理想ではないでしょうか。
  ──一人一人が人生の大事と向き合う貴重な時間……。

 虫の声を聴き、雑木林を想いつつ、こんなことを考えました。
 虫たち、雑木林のいきものたち、それぞれの人生を生きる私たち、めくるめく多様性が輝く世界です。
 いつのまにか虫たちは朝の饗宴を終え、今日も一日が始まっています。


 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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