コラム

 公開日: 2016-07-20 

コンピューター・共生・少子高齢化 「これからの生き方をたずねて」(第一回)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



1 白鳥則郎氏の「合理性プラスα」

 7月9日に行われた記念講演会の冒頭、東北大学名誉教授白鳥則郎氏は、「科学技術の視点から」と題する基調講演を行った。
 以下、要約である。

「コンピューターが誕生してから70年、この間に私たちの暮らしは劇的に変わった。
 この先、半世紀を想像すると、発展の方向性を誤れば、地球環境の破壊と人類滅亡のきっかけとなるかも知れない。
 そうではなく、人類とIT環境との共生が進むかも知れない。

 地球の寿命約100億年に対して、この70年はどのくらいの比率になるか?
 もし100億年を1年に置き換えた場合、70年は、わずか0・3秒でしかない。
 しかし、それほどの短期間ではあっても、コンピューターはこれまでにないほど大きな変化をもたらした。
 コンピューターが出現した当時は、産業社会に役立った。
 その結果、情報化社会となり、豊かにはなったが、一方で、環境汚染・地球温暖化・自然災害・少子高齢化が進んだ。
 これからは、知識、知恵を生かした共生社会を目ざしたい。

 そもそも、産業、情報社会である近代は合理性(経済性・効率性・機能性)を重視してきた。
 それは大量生産・大量消費の社会であり、環境汚染・温暖化・経済危機・大災害などの発生により、脱合理主義が目ざされるようになった。

 脱合理性を目ざす脱近代社会では、合理性だけでなくプラスαが求められる。
 αとは、調和に価値を置く共生の思想である。
 この先、産業は、多品性・少量生産・リサイクルといった方向へ進む。
 20世紀は人が自然を征服したが、21世紀はITを用いた人と自然の共生が求められる。
 こうした未来に向け、鈴虫の音色を聞き分け、侘び、寂びといった繊細な感覚のある日本人は、調和・共生によって地球を救う役割を果たせるのではないか。

 社会の現状を眺めれば、少子高齢化、地球環境破壊、国や地域の紛争が続き、社会主義も市場原理主義も破綻し、これまでの社会モデルは消失している。
 人間にとって快適なだけでなく、省エネ、自立、見守り、健康管理などを支援するシステム、あるいはグリーン志向の生活環境をつくらねばならない。
 また、調和に価値を置いた情報通信のシステムをつくらねばならない。
 それが成功すれば、人と人、国と国、地域と地域の関係において、効率や利害を超えた公(みんな)と私(自分)の調和に価値を置く社会となることだろう。」

2 品格のある衰退

 ところで、作家内舘牧子氏は最新作『終わった人』の「あとがき」において、国際政治学者坂本義和がイギリスに関して遺した言葉を紹介している。

「重要なのは品格のある衰退だと私は思います。」

「衰え、弱くなることを受けとめる品格を持つことで、その後もインドと良好な関係を結んでいます。
(中略)
 品格のある衰退の先にどのような社会を描くか。」

 少子高齢化が避けられぬ日本にとって必要なのは、〈もっともっと〉と、〈よりたくさん〉得ようとする思想ではなく、富を公正に分配し、確かなコミュニティにおいて助け合う思想ではなかろうか?
 人間は、集団で狩猟や採集を行うようになった時期、農耕を覚え定住するようになった時期、そして工業が勃興した時期、それぞれに人口の増加と減少を体験してきた。
 上り坂と下り坂では膝の使い方が異なるように、パイが膨らむ時とパイが縮む時では、ふるまい方が違うのは当然だ。
 日本が直面している減少時期に必要なものこそ、「品格」ではなかろうか? 

3 少子化と拡大・成長の限界

 日本は限られた国土で膨大な人口を抱えてきたが、平成17年から人口減少に転じ、半世紀後は9000万人以下になるだろうと予想されている。
 明治維新の頃は3000万人、それがピークをつけた平成16年には約4倍の1億2800万人にまで膨れ上がった。
 千葉大学の広井良典助教授は、明治以来「相当な〝無理〟をしてきた」と指摘している。
 そして、やりようによっては「現在よりもはるかに大きな『豊かさ』や幸福が実現されていく社会の姿」になると説いた。

 「〝少子化が進むと経済がダメになるからもっと出生率を上げるべきだ〟とか〝人口が減ると国力が下がるから出生率は上昇させなければならない〟といった発想では、おそらく事態は悪化していくばかりだろう。」

「『拡大、成長、上昇』期の発想でしか物事を見ていないことに等しい。
 そうした考え方や方向自体が限界に達し、あるいはその矛盾がきわまった結果として、現在の低出生率があるのである。
 そうでなく全く逆に、そうした『拡大・成長』志向そのものを根本から見直し、もっと人々がゆとりをもって生活を送れるようにする、その結果として出生率の改善は現れてくるものだろう。」

「〝豊かな成熟社会〟のビジョンやイメージを持てるかどうかが、日本社会の今後にとっての大きな分岐点になるだろう。」

 助教授は、ヨーロッパ(特にドイツ、フランス以北)に近い社会のモデルを想定している。
 そうした国々の取り組みに学ぶところ大である。

4 私たちが目ざす社会とは?

 最近、明治安田生活福祉研究所が発表したとおり、20代の独身男女のうち、結婚したい人の割合が3年前と比べて男性で約28ポイント、女性で約23ポイントと大幅に減少している。
 信じられないことに、わずか3年で、結婚したい20代男性は67・1パーセントから38・7パーセントに、女性は82・2パーセントから59・0パーセントへと激減している。
 こんな時代が今まで、あったろうか?
 この3年で若い人たちは、急激に結婚の意思を喪失した。
 それはある意味で、未来への絶望、諦めが広がっていることを意味している。
 戦争への不安、年金や保険への不信が若者たちの心に深く影を落としているのではないか。
 かつて日本がそれ行けどんどん、だった時代、与謝野晶子は『君死にたまふことなかれ』と詠んだ。

「親は刃をにぎらせて
 人を殺せとをしえしや
 人を殺して死ねよとて
 二十四までをそだてしや」

 若者たちの絶望に見るとおり、もはや、国家が示している〈未来像〉に根本的欠陥があるのではないかと疑うべきだろう。
 そこに、「調和に価値を置く共生の思想」はあるか?
 そこに、「品格のある衰退」という視点はあるか?
 そこに、「拡大、成長、上昇期の発想」でしか物事を見ていない」頑なさはないか?
 無定見なグローバリズムと、巨大資本が意のままに跋扈(バッコ)する市場原理主義が、ところかまわず世界規模で富の寡占を押し進め、大多数の人間がどんどん弱者化し、日本のみならず地球的規模で不公正が放置されていることは明らかである。
 エネルギーも、資源も、食糧も、もし寡占されなければ、大多数の人々の生活レベルは一気に向上するだろう。
 地域単位で日々の経済が成り立ち、地域の文化に立った生活が確保できれば、私たちの安心感は増し、若者たちは希望を持ち、人口も安定するだろう。

 白鳥則郎氏が提唱する「合理性プラスα」の「α」について、よく考えてみたい。

「おん あらはしゃのう」
 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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