コラム

 公開日: 2016-08-04 

雪降れば貧しき家も銀の屋根 ─運命の敵視からすべての許しへ─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 詩人で住職の村岡空氏は、小学6年生のおりに詠んだ。
 季節外れの一句だが、忘れぬうちに書きとめておきたい。

「雪降れば貧しき家も銀の屋根」

 氏は、子供の頃に両親を失い、太平洋戦争に翻弄されつつ生き延びた。
 預けられた寺では、奇跡的にニューギニアから帰還した前住職から、病気や飢えのために三千人が戦わずして全滅した絶海の孤島で、「最後まで生き残ってお経を上げてくれ」と戦友たちの食べものを譲られた話に耳を傾けた。
 中学生の頃、希望職種を書けと指示された時は、乞食と記入した。
 次々に訪れる人生の不如意と苦しみに翻弄され、自殺未遂するなど、波浪の先に救いとなったのはお大師様の教えだった。
 人間の心が深まり、み仏そのものへと向上する段階を説いた「十住心論」を読み、氏は気づく。

「結局、心の源を探り、現実の自分の立場をよくわきまえることだ、と言われているのではあるまいか。
 とすると、自分の心は、ただ怒りをぶつけるためだけにあるのではない。
 あたかも水の浄化作用にも似て、すべてを許す、といった慈悲を表すためにもある。
 すなわち親は子供を、そのように柔軟な心を持つように生んでくれたはずである。
 かてて加えて、現実自分の立場はどうか。
 いやしくも、ひとさまに密教を説こうとする者が、これ以上、他人と争い、他人を傷つけることが、果たして許されるであろうか」

 そして、ある日、高野山で祖父、祖母、両親など先祖代々の法要を営み、奥の院で「南無大師遍照金剛」を唱和した。
 そこで、お大師様の言葉を聞いた。

「許せ、すべてを許せ」

 さて、密教の根本経典として日常的に唱えられているのは『理趣経(リシュキョウ)』である。
 そのエッセンスは「百字偈(ゲ)」と呼ばれている部分であり、毎月、行う当山の書道教室においては、最後に一枚、納経することになっている。
 漢字百文字で書かれた詩は、氏によって見事に意訳された。

「知恵があるものは仏だ
 かれはいつも教えてくれる
 われわれが生きているあいだ
 そして教えは亡びない

 原則と適用は
 知恵でできあがり
 存在と実体は
 みんな清らかだ

 欲望が世界を整え
 清らかにしているから
 ピンからキリまで
 われわれは救われる

 みよ、どぶ泥の蓮華を
 あのけがれない姿を
 われわれだってそうだ
 このままで立派に生きられる

 大きな欲望を持てば
 大きな楽しみができ
 いつも自由にふるまえ
 成功疑いなし」

 これほど的確に、かつ、わかりやすく読み解かれた文は目にしたことがない。
 過酷な日々を強いてきたあらゆるものを許す心となった氏の思いが読み取れる。
 当山は、この一文も大切にして行きたいと思う。

「おん さん ざん ざん さく そわか」

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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