コラム

 公開日: 2016-08-20 

タカマツの金メダルと「覚えていない」考 ─会得を目ざす日本の文化─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 隠形流(オンギョウリュウ)居合の道場で、聖ウルスラ学院英智高(仙台市)出身者がバドミントンで金メダルを獲得したことに話題が集まった。
 師範代は、高橋礼華選手(26才)が「19オールとなってから覚えていない」と言った話をとりあげた。
「身体が自然に動いていたんでしょうね」
 彼女はきっと、無心の状態で闘ったのだろう。
 こうやればこうなると、頭が余計な計算はしない。
 何かを得たり失ったりすることが気になりもしない。
 そして身体が動けばそれがきっと、その人にとって〈最善〉というものだろう。
 居合の行者が剣を手にしても同じである。
 刃筋が通り、ピタッと決まった時は、「そうなっている」と言うしかない。

 密教の行者が壇上で印を結び真言を唱え、ご本尊様の世界を観想して〈そこへ入ってしまう〉時と同じである。
 小生はこの状態を「法が通る」と言っている。
 行者の魂が神仏の世界やあの世へと通じてしまう。
 お大師様は、そのこと、すなわち「加持(カジ)」が書かれた『大日経』を発見しても、自分で読んだだけでは実際に通じさせる方法がわからなかった。
 だから海を渡り、伝授を求めてまっしぐらに行動された。
 そして、お大師様が受けた伝授は1200年を経た今でも、世界のどこかで続けられている。
 タカマツの試合ぶりは、私たちが〈そこへ入ってしまう〉時、最高の力が出せることを教えているのではないか。

 行者Aさんから質問された。
「サイコロを振って望みの目を出すという訓練を始めたのですが、丁半なら、どちらを念じても50パーセントの確立を上まわらなければならないのに、私はむしろ、下回ってしまいます。
 どうすればよいのでしょうか?」
 これも初心者によくある現象である。
 表面の意識では「丁」と念じたつもりでも、その底にある疑念や不安などが強いと、意識されない心の部分が〝そうはならない〟と反対に動いているのではないか。
 幾度やっても、心のはたらきが同じパターンであれば、結果は同じだ。
 もしも習い性になれば、結果は表面の意識が願う姿からどんどん遠ざかるかも知れない。
 ここを突破する方法は一つしかない。
 伝授された護身法(ゴシンポウ)をしっかり結び、単純に念ずるという訓練を繰り返すしかない。
 そうしているうちに疑念や不安が薄れ、心全体が単純に「丁」へと向かえば、必ず、「丁」の出る確立は50パーセントを超えてくる。

 タカマツは「覚えていない」状態で勝利した。
 居合の行者は「そうなっている」ところを目ざす。
 密教の行者は「法が通る」ところまでやらねば修法を行ったことにはならない。

 リオデジャネイロのオリンピックで顕著な日本選手の逆転劇には、何かを〈会得〉したという共通の精神的背景があるのかも知れない。
 この〈会得〉こそ、精進(ショウジン)を尊ぶ私たちの文化が持つ精華なのではなかろうか。
 8月7日、フランスのトマ・ブエル氏は、女子体操で活躍する日本人について、「小さなピカチュウがいっぱいだ」「小さい人たちが喜んでいるよ」と中継した。
 差別ではないかという声も上がったらしいが、身体の大きさについてはともかく、日本の文化と日本人のふるまい方がヨーロッパ文化圏の人々からどう見られているのかという興味深い示唆だったと思う。
 科学的関心を高く持ち、狭い国土で大きな人口を養うために何ごとも効率を高め、よいものや、おもしろいものには無心で飛びつく。
 しかし、私たちにはそれだけでなく、とことん自分を鍛え、〈会得〉を目ざすという不退転の文化もある。
 高橋礼華選手の「覚えていない」は歴史に残る言葉となるのではなかろうか。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ