コラム

 公開日: 2016-09-09 

映画『太陽の蓋』を観てください

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈どこか懐かしい露地〉



〈広島平和記念資料館に新しく展示された血染めの服。真っ白だったのに、いくら洗っても色が落ちないという〉



〈広島平和記念公園に立つ招霊木(アガタマノキ)は、いつ眺めても味わいがある 〉

 広島平和記念資料館でのうち合わせを終え、広島市の「横川シネマ」へ向かった。
 佐藤太監督の『太陽の蓋』を観るためだ。
 原爆から再興した時期と変わりないかのような小さな商店街の中に映画館はあった。
 数軒先に暖簾のかかった食堂があり、昼食を摂ろうと覗いたら、スタンドだけの店内は、常連客とおぼしき中高年の男性でぎっしり。
 皆さん、昼飯を食いに来たのではなく、昼酒を飲みに集まっているのだ。
 お邪魔にならぬよう早々に辞し、近くの蕎麦屋で空腹を満たして上映時間よりかなり早く映画館へ入った。
 ちょうど前の作品が終わったばかりらしく、ご高齢の男女が次々と出てくる。
 ひげ面ながら、さっぱりした風情の館主は快くホールでの待機を認めてくださり、読書をしながら待った。

 河合弘之弁護士の事務所から連絡があって知った作品は、期待を超えた完成度だった。
 あの大震災と原発事故からの5日間、政府と東電と報道機関はどのように対応し、被災した人々はどのように行動したのか?
 現役の政治家などが実名で登場する「真実のジャーナリスティック・エンターテインメント」と銘打っただけあり、充分な資料に裏付けされたことが窺える力作だ。
 制作者橘民義氏はパンフレットの冒頭で信念を述べている。

「地震国にいっぱい原発を造った人たちがいる。
 その人たちはそれを安全だと言い続けた。
 その人たちは、これほど大きな事故が起きても、子供たちが甲状腺ガンになって苦しい思いをしても、ふるさとに帰れない人が10万人以上いても、それでも反省の色もなく原発を再稼働しようとしている。
 そしてもう一つ見逃せないのは、その人たちは事故の責任を自分たちではなく、他のある一点に押しつけようと画策した。
 私がこの映画を作りたいと思ったのは、事故以来今日まで大きく歪曲して伝えられた事実を正確に伝え直したいと思ったことに他はない。
 改めて検証した資料は、現場に一番近いところから選んだ。
 その場にいてモンスター(原発)と闘った人が書いた文献、虚偽の発言が許されない国会事故調査委員会の記録、どうしても事実を隠すことが出来ない東京電力に残されたビデオ、そして直接取材して得られた多くの人々の生の声などだ。
 ここから発見された新しい事実は今までの日本のメディアが伝えてきたものと大きく違う。
 これら真実に一番近い情報を元にドラマとして構築した。
 この映画は世界の隅々まで広めたい。
 真の物語として100年先200年先まで残したい。」

 私たち日本人はあの時、それぞれなりの最善を尽くそうとしたのではなかったか?
 それでもなお、原発は人間が到底コントロールしきれないモンスターであることを、私たちは骨の髄まで教えられたのではなかったか?
 日本が生き残れたのは、各現場の尽力もさることながら、原発4号機の燃料プールへ水が流れ込んだ奇跡的と言うしかないできごとなど、数々の僥倖によることを知り、〈次の事故による生き残りはない〉と知ったのではなかったか?
 だからこそ、私たちはあの時、原発からの脱却を決意したはずではなかったか?

 止められた原発の再稼働について、事故に際しての避難経路の確保があらためて厳しく問われ、〈本当に逃げられるのか〉と調べてみれば、そんなことは不可能であることを、この事故と事後の経過は明らかにした。
 狭い国土に密集しながら生活している私たちは逃げようがないのだ。
 だからこそあの直後、欧米人や中国人などはこぞって日本を後にした。
 原発を造った会社は、事故を事実上〈起こり得ない〉と主張してきたが、それが虚構であることを、この事故は明らかにした。
 産・官・学が何を主張しようと、島国であり地震国である日本では、今回同様、いつ、〈想定外〉の地震や津波に襲われようと何の不思議もない以上、「安全」な原発など造りようがないではないか。

 私たちはいつの間にか、「あの時の対応が悪かったからこうなっている」というイメージを刷り込まれてきた。
 そして、「ああいうことが起こらないようにすれば大丈夫」と思わされつつある。
 この二つのイメージコントロールこそ、この映画が断罪しているものだ。
 
 プロデューサー大塚馨氏は「プロダクション・ノート」をこう締め括っている。

「本作で描けたのは震災や原発事故のほんの一片かも知れない。
 あれから5年、これからも新たな事実が次々と明らかにされていくのだろう。
 しかしながら人々の記憶は薄れ、問題意識から遠ざかる一法であることは確かだ。
 あの時発令された『原子力緊急事態宣言』は今だ解除されていない。
 首の皮一枚でかろうじて何を逃れた東日本。
 その危機的状況が現在も続いているという認識をどれほどの人が持ち続けているだろうか……。
 これは本作に関わった全てのスタッフが自分自身に問いかけた疑問でもあった。
 この作品はまだ序章に過ぎない。
 そしていつの日か新たな一歩を踏み出すため、明瞭な解を得ることを願ってやまないのである。」

 仙台市における上映は「フォーラム仙台」(仙台市青葉区木町通2-1-33)にて本日まで。
 上映開始は、11時55分。
 ぜひ、一人でも多くの方々にご覧いただきたい。
 午前2時にようやく帰山したまま、この拙稿を書いている。
 真実の力が蓋をはね除けて輝くよう、願ってやまない。

「おん さん ざん ざん さく そわか」

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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