コラム

 公開日: 2016-09-23 

オバマ大統領の心を想う ─国連での演説について─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 目を閉じると「カッチン、カッチン、カッチン」という柱時計の音しか聞こえない。
 ここは日本だ。
 しかし、戦乱の続く中東では空から爆弾が降り、病院も、食糧や水を運ぶ車も爆破され、子供や妊婦や松葉杖をついた人々が逃げまどっているはずだ。
 膨大な国民が難民となり、逃げる途中でいのちを失い、逃げた先では生きる場もなく、邪魔もの扱いの中で続々と死んでいるのに、祖国では果てしなく殺し合い、廃墟となった国土を奪い合っている。

 9月20日、かねて「核なき世界」を提唱してきたアメリカのバラク・オバマ大統領は、国連総会で最後となる演説を行った。

「我々が核兵器の拡散を止め、核兵器のない世界を追求しない限り、核戦争の危険性から逃れることはできない。
 北朝鮮の核実験はすべての国を危険にさらす。
 合意を破る国は必ず重大な結果に直面する。」

「アメリカを含む核保有国は核兵器の削減を追求し、核実験を二度と行わないよう再確認する責任がある。」

 世界各国で、〈外敵〉を執拗に攻撃して人気を博す指導者が激増した。
 彼らは一様に拳を振り上げて「攻撃的なナショナリズム」を煽り、世論には「粗野なポピュリズム」が広がっている。
 強権的にことを運ぼうとする指導者が好まれ、果実を早くもぎ取ろうとするあまり、少数意見や専門家の知見は無視される。

「歴史を振り返れば、力に訴える者らには2つの道筋しか残らないことが分かる。
 一方は永久弾圧で、これは自国内で衝突をもたらす。
 もう一方は国外の敵への責任転嫁で、戦争を引き起こしかねない。」

 世界の方向性が「弾圧」と「戦争」であるという指摘は恐ろしいが、現実である。
 日本でもそうした徴候は顕著だ。
 9月22日付の読売新聞である。

「大分県警の隠しカメラ問題、捜査員らを略式起訴

 大分県警別府署の捜査員が参院選候補者を支援する団体が入る建物敷地内に無断でビデオカメラを設置した事件で、別府区検は21日、同署の阿南和幸刑事官と守口真一刑事2課長(肩書はいずれも当時)、同課の捜査員2人の計4人を建造物侵入罪で別府簡裁に略式起訴した。
 起訴状などによると、4人は共謀し、参院選公示前の6月18~21日、民進党や社民党の支援団体が入る別府地区労働福祉会館(大分県別府市)への出入りを録画するカメラの設置などのため、敷地内に計5回、無断で侵入した、としている。4人は容疑を認めているという。
 一方、地検は21日、建造物侵入容疑で告発されていた同署の横山弘光署長と衛藤靖彦副署長については不起訴とした。
 地検は『関与を認めるに足る証拠はなかった』としている。」

 確かに、彼らの行動そのものについて刑事責任が問われるのは、他人の敷地へ無断で侵入したこと、撮影された人物のプライバシー権を犯す可能性があったこと、などでしかなかろう。
 しかし、行動の目的を推測してみれば明らかなとおり、この事件における真の問題は、そうした微罪などにありはしない。
 公権力が行っている、国民1人1人の、あるいは個々の政治団体や組織の思想・信条に関するチェックが、ついに、こうした粗雑な行動によってあからさまになるほどの域に達したことこそが重大だ。
 反権力の存在、反権力と権力との緊張感、反権力と正対する権力の自省があればこそ、権力は健全性を保つことができる。
 民主主義も思想・信条・報道の自由も成立する。
 しかし、反権力を潰そうとするなら、それは腐敗と独善と暴走への道に相違ない。

 最近、剣聖上泉信綱が話題になっているらしい。
 有名な話が残っている。
 賊が子供を人質にして立てこもった現場に遭遇した信綱は、僧侶になりすまし、握り飯を手にして賊へ近づき、放り投げられた握り飯に気を取られた賊をたやすく取り押さえたという。
 彼がその〈強さ〉をもって賊を斬り捨てようとすれば、やすやすと実行できたことだろう。
 公衆の面前での鮮やかな剣さばきは、彼をますます高名にしたかも知れない。
 しかし、人質である子供のいのちは、なくなっていた可能性が高い。
 彼は、相手を斃す力を持っていながらそれを直接用いず、周到に作戦を立て、僧侶や住民に理解させ、協力を仰ぎ、最後は自分のいのちをかけて実行した。
 無論、充分な勝算があればこそだろうが、修羅の現場では何が起こるかわからないのに、彼は子供のいのちを守ろうとして剣を持たずに踏み込んだ。
 彼は、いのちの価値も、失う哀しみも、奪う恐ろしさも、胆の髄までわかっていたのだろう。

 ところで、アフガニスタンにおいて不屈の活動を続けている医師中村哲氏は2年前の暮れ、現地から警告を発した。

「日本はこれまで、アフガニスタン国内では民生支援に専念してきた。
 そのことが日本への信頼であり、我々の安全保障であった。
 それが覆されようとしている。
 戦争の実態を知らぬ指導者たちが勇ましく吠え、心ない者が排外的な憎悪を煽る。
 『経済成長』が信仰にまで高められ、そのためなら何でもする。

 武器を売り、原発を復活し、いつでも戦ができるよう準備するのだという。
 それが愛国的で積極的な平和だとすれば、これを羊頭狗肉という。
 アフガンへの軍事介入そのものが、欧米諸国による集団的自衛権の行使そのものであり、その惨憺たる結末を我々は見てきた。
 危機が身近に、祖国が遠くになってきた。
 実のない世界である。」

 世界一の武力を抱えたアメリカの大統領が、職を去るに際してアメリカと国際社会へ言い遺そうとした言葉は重い。
 持てる者がまず、持てる者自身へそのありようを問うという姿勢こそ、「攻撃的なナショナリズム」や「粗野なポピュリズム」といった反知性的暴流への防波堤である。
 日本も学ぶところ大なるものがあるのではなかろうか。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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