コラム

 公開日: 2016-10-06 

漢文『法句経』を読んでみる(その9) ─正しい信じ方は?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



 前回にひき続き、今回も『法句経(ホックキョウ)』の「篤信品(トクシンボン)第四」を最後まで意訳してみましょう。

〔八二〕賢夫(ケンプ)に習(シュウ)し、智あるに習(シュウ)せよ。清流を楽仰(ギョウゴウ)して、善(ヨ)く水を取るが如(ゴト)し。思い冷たくして擾(ミダ)れず。

(仏弟子に慣れ親しみ、智慧ある人とつきあうべし。清流を尊び、求め、よい水が得られるように、煩悩が燃え上がらず、心は澄み、乱れなくなる)

〔八三〕信(しん)あるは他(た)を染(そ)めず、唯(た)だ賢(けん)と仁(じん)のみ。可好(かこう)は則(すなわ)ち学(まな)び、非好(ひこう)は則(すなわ)ち遠(とお)ざく。

(仏道を信じている人は他者の心を悪しく染めない。智慧と慈悲ある人のみが善く染める。仏道修行にとって好ましい人には学び、好ましくない人は遠ざけねばならない)

〔八四〕信(しん)を我(わ)が輿(こし)と為(な)せば、我(わ)が載(さい)を知(し)ること莫(な)し。大象(ダイぞう)の調(ちょう)するが如(ごと)く、自(みずか)ら調(ちょう)するは最勝(さいしょう)なり。

(仏道を人生の乗り物とすれば、自分の我欲が行き先をあれこれと迷うことはなくなる。優れた象がすぐに調教に馴染み、手をかけさせないのと同じく、自分を仏道によって調御するのは最もよい方法である)

〔八五〕信(しん)も財(ざい)、戒(かい)も財(ざい)、慚(ざん)と愧(き)も亦(ま)た財(ざい)、聞(もん)も財(ざい)、施(せ)も財(ざい)、慧(え)とを七(しち)の財(ざい)と為(な)す。

(信仰も、持戒も、自分で罪を恥じることも、告白して罪を恥じることも、仏法を聞くことも、布施も、智慧も、篤く信じることによって得られる財物である)

〔八六〕信(しん)に従(したが)い戒(かい)を守(まも)り、常(つね)に浄(きよ)く法(ほう)を観(かん)じ、慧(え)もて利行(りぎょう)して、奉敬(ほうけい)して忘(わす)れず。

(信じるところに従って戒律を守り、いつも清浄な心で真理を見すえ、智慧によって自他のために仏道を生かし、仏法を敬い尊んで心から離さない)

〔八七〕生(う)まれて此(こ)の財(ざい)有(あ)り、男女(なんにょ)を問(と)わず、終(つい)に以(もっ)て貧(ひん)ならず、賢者(けんじゃ)は真(しん)を識(し)る。

(人は生まれながらにして、篤く信じることによって生ずるこのような財物を持っており、男女を問わず、心は貧しくない。賢者はその真実を知る者である)

 仏道を信じることの意義や価値がくわしく説かれています。
 教えは学ばないと知り得ませんが、知っただけでは人生を動かしません。
 そこにある真理や真実に心を打たれ、納得したならば、それまでの自分を引っぱり、後押ししてきた「我(ガ)」を導き手とし続けるのではなく、真理や真実にこそ、生き方を合わせて進みたいものです。
 人格の陶冶(トウヤ)も、人生の向上もそこで行われ、決して減らず壊れない真の宝ものが生まれます。

 最後の教えは、私たちが生まれながらにして仏法を実現する力に恵まれていると説いています。
 そのことを知り、真理・真実に自分を合わせることによって力を発揮し、仏法に生きるのが賢者です。
 精進しない賢者はあり得ません。
 自力も他力も論(アゲツラ)う必要はなく、生まれ持った尊い種があることに気づき、智慧による水や養分や日光や温度を与え、花を咲かせるのみです。
 仏性を持たない人はなく、精進なくして得られる成果もまた、ないのです。
 お釈迦様は、生きながらにして、本来のみ仏と成ることの大切さを説かれました。
 智慧によってそれを知ったならば、精進によって結果を出すのみです。

 どう精進すればよいか?
 それを探求し続けたのが仏教の歴史であると言えます。
 縁となった教えについて、自分の頭で咀嚼(ソシャク)し、道理であると確信できたならば、黙々とやってみましょう。
 ただし、常に自分を省みて、未熟さや不明を恥じる姿勢は決して失わないようにしたいものです。
 さもないと、思考停止に陥ったり、頑なになったり、たやすく他者を誹謗したりといった悪弊に陥ります。
 だから、お釈迦様は、「川を渡る時にはいかに大切だった筏(イカダ)であろうと、対岸に着いたならば岸辺へ置き、その後は自分の足という別な道具によって先を目ざさねばならない」と説かれました。
 ある筏のみが頼りであると執着した途端、〈その先〉は望めないことでしょう。

 精進し、我執(ガシュウ)を離れ、他者の苦しみに目を背けず、他者のためになる。
 仏教はそうした柔軟で、包容力のある道を示しています

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M

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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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