コラム

 公開日: 2016-12-03 

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─

 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。


〈四国の路傍で〉

 人生相談に来られたAさんから、ご質問をいただいた。

「三回忌などの廻向(エコウ)って何ですか?
 仏教は自業自得ではないのでしょうか?
 どうして、あの世へ行った人が、この世の人の祈りで救われるのでしょう?
 それでは、死後に拝んでくれる人さえいれば、この世でさんざん悪事をやっても大丈夫、ということになりませんか?」

 もっともな疑問だ。
 お答えした。

「確かに因果応報なので、善きことを行えば善き報い、悪しきことを行えば悪しき報いがあり、それは皆、その人自身の問題です。
 ではなぜ、祈りの功徳を廻し向けられるのか?
 それは、ありとあらゆるものが本当は、いっさいの枠を離れた空(クウ)だからです。
 また、私たちは、空の内容をすべて把握できないことも考えておく必要があります。

 例えば、一輪のタンポポを踏んだとしましょう。
 それは一見、自分とタンポポの間で起こった小さなできごとにしか思えませんが、タンポポを当てにしていたハチやチョウチョにとっては、蜜を得る先がなくなったことを意味します。
 あるいは、タンポポの根元にいた小さなミミズまで一緒に踏み潰したかも知れません。
 また、花を踏んでしまったという小さな悔悟の念が、懺悔させ、慈悲心を育てるかも知れません。
 それまでは、いつも花を見つけたら踏まないように心がけていたはずなのに、つい踏んでしまった自分の注意力が散漫になっていると気づくかも知れないし、アッと思っても足が止まらなかったことに、〝自分は年をとってしまった〟と嘆くかも知れません。
 このように、ありとあらゆるモノもできごとも、無限の連なりの中で生じ、滅しているので、神ならぬ身には全体像など知り得ないのです。

 また、例えてみましょう。
 まず、自分のために勉強をすれば成績が上がり、精神も豊かになります。
 希望する進学も可能になるでしょう。
 これは自分に対して結果が出ている状態ですね。
 一方、病気で苦しむ人たちを見捨てられず、救いたいと一念発起して勉強し、首尾良く医師になって活躍するならば医療の力はどこまで及ぶか、はかり知れません。
 実は、御霊のために供養という善行(ゼンギョウ)の功徳(クドク)を回し向ける廻向は、後者の世界と同じです。

 我(ガ)にとらわれない清浄な心で、正しい方法を用い、そして相手を選り好みせず普く供養するならば、〈枠を離れた影響力〉は当然、あの世の相手へ届き、たくさんの御霊へ届き、供養する施主(セシュ)その人自身もまた、善き影響力によって苦や悪因縁から離れる機会になることでしょう。
 自分のために行う善行は小さな因果応報としての〈世俗的善行〉であり、相手を選ばずに行う善行は無限の力を無限に及ぼす〈菩薩(ボサツ)の善行〉であり、両方共に大切です。
 だから誰かへ供養のまことを捧げたいならば、特定の相手に向かって祈るだけでなく、無限の相手に対しても廻向の心で再度、手を合わせましょう。
 その際、イメージを明確にするための伝統的文章があります。

『願わくは、この功徳をもって普く一切へ及ぼし、我らと衆生(シュジョウ)と皆共に、仏道を成(ジョウ)ぜん』。

 こうして、空の心で行う善行は、あの世にいる特定の御霊のためになるだけでなく、結果的に、生きとし生けるもの全体のためにすら、なるのです。

 お盆の故事を思い出してみましょう。
 神通力第一とされた目連尊者(モクレンソンジャ)が、あの世に行った母親の様子を観たところ、餓鬼界(ガキカイ)で苦しんでおり、自分一人では救いきれないからとお釈迦様へ相談に行ったのがきっかけでしたね。
 お釈迦様は、雨季の修行が終わったら皆で祈り、その功徳で救いましょうと指導され、その通りに母親が救われたからこそ、いまだに、廻向の祈りが続いているのです。
 きっと、お釈迦様も、行者たちも、空の祈りを捧げたのでしょうね。
 私たちもまた、縁に応じて、心を広く持ち、尊い廻向となる供養を実践しましょう」

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA

 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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