コラム

 公開日: 2012-01-28  最終更新日: 2014-06-04

眼を持つ難しさ


 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。
 また、当山へかずかずの温かいご支援をくださった方々へ、深く深くお礼申し上げます。



『平家物語』の「祇王(ギオウ)」に、仏と呼ばれる白拍子(シラビョウシ)の舞い踊る姿に魅せられた平清盛が、ただちに側へ召すという場面があります。
 眼前にはすでに清盛の寵愛を受けている白拍子祇王がおり、仏御前は固く辞退します。
 祇王は、いきなり訪ねた仏御前をいったんは「無礼な」とばかり退出させた清盛をとりなして、対面させてくれた大恩人ですから、断ったのは当然です。
 しかし、清盛はその場で「それはならぬ。もし祇王をはばかるのならば、祇王をこそ追い出そう」と言います。

 読者のほとんどは、傲慢さを感じて「清盛はなんという薄情な男だろう」「権力者なんてこんなものさ」「時代が違うんだよなあ」などと思うのではないでしょうか。
 ところが弁護士Iさんは言いました。
「実際はどうだったんですかねえ。
 こんな風にやったんでしょうか。
 書いた人によってつくられた人物像かも知れませんよねえ」
 ここが大事なところで、情報の洪水という現代の蘊魔(ウンマ)にやられないためには、どうしても必要な視点です。
 しかし、それを持つのはそう簡単ではなさそうです。
 
 現に、司馬遼太郎の傑作とされ芸術院恩賜賞を受けた『空海の風景』は、一介の行者からすれば誤りと偏見と独断に満ち満ちていると思われますが、世間ではお大師様について学ぼうとする際の基本テキストになりつつあります。
 誰しもが大作家のネームバリューを信じ、「本当だろうか?」と客観的な眼を持って読むことを忘れてしまっているのではないでしょうか。
 もちろん、お大師様そのものがあまりにも偉大であり、説かれた教えはあまりに高度ですが、読者の直感として「そうだろうか」と立ち止まることはできるかも知れません。
 Iさんの視点があれば、自分の好悪がからんだ価値判断をあたかも事実であるかのように書いている巧妙な表現を見破られるはずです。

『空海の風景』を再読三読してチェックした〈不審な〉ポイントは百ヶ所を優に超え、有名な書物が持つ問題を世に明らかにできぬ自分の能力と徳と財のなさに切歯扼腕していたところ、一人の男が立ち上がりました。
『釈尊になった空海』を書いた松澤浩隆氏です。
 この本は、『空海の風景』を読んだすべての方に読んでいただきたい力作です。
 読み比べれば、人を救い迷わせる筆力というものの強さや恐ろしさ、そしてお大師様の真姿が読者なりに観えてくることでしょう。
 長澤弘隆師の『空海ノート』と菊池寛の『十住心論』も併せて読めば結構ですが、いずれもかなり専門的なので、購入には慎重な判断が求められます。

 あまり世に知られていないと思われる『釈尊になった空海』は、イラク戦争に関して徒歩で靖国神社へ参拝した帰り道、東京駅前の書店で見つけました。
 幸いにして自衛隊員が全員、無事、帰国を果たしたことと、『釈尊になった空海』との出会いは、 お大師様からのご褒美であると確信しています。
(この文章は平成17年に書きました。もうネットで読んでいただけない古い綴りの中から行者高橋里佳さんがピックアップしたものを加筆修正の上、再掲しています)


 
 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。

 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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