コラム

 公開日: 2012-02-12  最終更新日: 2014-06-04

生み生まれる苦しみと死ぬ苦しみの救いは同じ

つかの間の晴れとなった建国記念日
 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。
 また、当山へかずかずの温かいご支援をくださった方々へ、深く深くお礼申し上げます。



 善男善女の求めに応じ、安産守護の法を結び、断末魔(ダンマツマ)の苦を解く法を結びますが、不思議なことにその核となる法は共通しています。
 断末魔は見るからに恐ろしい雰囲気の文字ですが、「断」は「断つ」という漢語であり、「末魔」は梵語の当て字です。
 断末魔は、末魔すなわち、ここへ触れると死ぬという急所が断たれることを意味し、臨終のことです。
 
 なぜ同じなのか?
 それは、人間は生まれてから死ぬまでいつも〈生をかけ死をかけた存在〉だからでしょう。
 今日の日本ではそうした実感はあまりなくなってきましたが、そもそも出産は母子共に生きるか死ぬかの重大事でした。
 出産において、母子は人生で最大の死との対決を迎えていたのです。

 私たちは、人生のどこかで、いのちをかける挑戦に踏み切ります。
 たった一つしかないいのちをかけるとは、実は、この世でたった一度しか迎えない死をかけるのと同じではないでしょうか。
 日々、法務に務めていると、生と死の厳粛さは同じではなかろうかと思えるのす。

 たとえば大相撲を考えてみましょう。
 本場所は初日から始まり千秋楽で終わります。
 場所が始まって終わるのは、死からいのちがけで生へ転換し、生からいのちがけで死へ転換する私たちの〈いのちのなりゆき〉と同じです。
 場所中の15日間こそは、力士にとって私たちがこの世で行う人生修行そのものであり、千秋楽を迎えればその翌日から自分の道場における本番のための修行が始まります。
 私たちも同じように、前世の因縁を背負ってのあの世での修行が熟すればこの世へ登場して初日が始まり、この世での役割が尽きればこの世という舞台から降りる千秋楽を迎え、この世での因縁を背負ってあの世での修行へ向かいます。
 あらゆる因縁から解脱(ゲダツ)して輪廻(リンネ)の輪から悟りの世界へ脱しない限り、この世でもあの世でも修行を続けます。
 それは、力士が年間6場所の90日以外の日々を自分の道場で稽古するのと変わりありません。

 私たちは「死ねば何もかも終わり」とかんちがいしがちですが、死とは、私たちがそこからこの世へ旅立ってきた死の世界へ帰って行くことです。
 そして、その世界が安穏なみ仏の浄土であって欲しいと願うからこそ、死者がみ仏にきちんとお導きいただけるよう葬儀を行い、年忌供養を行います。
 弟子を失ったお大師様は詠まれました。
「阿字の子が阿字の古里 立ちいでて また立ちかえる阿字の古里」

 確かに死に神のイメージは恐ろしいですが、それはきっと、私たちのこの世への執着心が生んだ幻でしかないのでしょう。
 真実は、因縁によってこの世での初日が始まり千秋楽を迎えるだけであり、おりおりに確かなお導きがあって欲しいという謙虚で真摯な祈りこそが私たちにできる最も大切なことではないでしょうか。
 安産守護も、断末魔の安穏も、医学の精華と宗教の修法によって、より確かなものとなることでしょう。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。

 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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