コラム

 公開日: 2012-02-13  最終更新日: 2014-06-04

原発事故の検証は、太平洋戦争の検証と同じではないでしょうか


 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。
 また、当山へかずかずの温かいご支援をくださった方々へ、深く深くお礼申し上げます。




 福島県富岡町の森川長二氏(74才)は、地震で被災した家を片付けている最中に原発事故が起こり、妻と共に30キロ離れた川内村へ避難し、別々に逃げていた娘や孫と再会しました。
 産経新聞への投書ではそれが「人生最高の歓び」だったと綴っています。
 転々としたあげく、9月になり、夫婦だけでいわき市内の仮設住宅で寝起きすることにしました。

 4月に栃木県内のボランティアへ預けておいた愛犬チャッピー(12才)を迎えに行ったところ、家を離れ飼い主から離れたストレスで食欲がなくなったため、17キロの体重は10キロまで落ちていました。

「夫妻の車に飛び乗ると、チャッピーは尻尾をちぎれるほど振りながら、これまでが嘘のようにあんパンをたちまち平らげた。
 しかし仮説に着いても車を降りようとせず、その日からまた何も食べなくなった。
『仮設ではなく、家に帰りたかったに違いない』
 結局チャッピーは10月10日永眠。
 獣医による死因の診断は『ストレスによる鬱血性心不全・腎不全の悪化』だった」

 森川氏は養蜂業を営んでいました。

「私たちは姥捨山のジジだ。
 朝、目が覚めないことを願い床につく。
 子供や孫が帰郷せず、老後を看てもらえない悔しさ悲しさ」
「家も仕事も家族での呉市も失った。
 私たちはあと何十年も生きられず、希望も何もない。
 ただ唯一の夢は、自宅や土地が買い上げられ、そのお金で孫に小遣いをやること」

 暮らしを失った喪失感は人間から希望を奪い、いのちのエネルギーを奪うだけでなく、犬のいのちも奪います。
 これほどの悲嘆の海となった現状は、まだ、あり得た最悪の事態ではないということが明らかになりました。

 3月25日、菅直人首相(当時)の求めに応じて近藤駿介内閣府原子力委員長が提出した最悪のシナリオの内容は驚愕すべきものでした。
 放射能物質から逃れるための強制移転地域は原発から半径170キロ圏以内、自主的移転は250キロを超えるかも知れないという状況だったのです。
 原子力工学が専門で内閣官房参与だった田坂広志氏は言います。

「最悪に至らなかったのは、幸運に恵まれたというのが、危機に対処した人間の実感」(朝日新聞2月12日)
「事態を把握して事故拡大を抑え込んだというより、幸運に救われた面、われわれがコントロールし切れていない何かに助けられた感は否めない」(朝日新聞2月12日)

 朝日新聞の論説委員吉田文彦氏は昭和37年に起こったキューバ危機が「人知の及ばないものに救われたかのように通り過ぎた」ことを例に取り上げ、指摘しました。

「フクシマではどうだったのか。
 最悪にどこまで近づいていたのか。
 それを防ぐのに、どこまで人知による判断が役立ち、どこが『神の見えざる手』に頼るところだったのか。
 キューバ危機で核の抑止力のもろさが透けて見えたごとくに、フクシマの徹底検証は世界に大きな学びを残すだろう。
 それを成し遂げる責任が日本にはある」

 時計は過去へ巻き戻せません。
 失われた森川長二氏の過去の暮らしは帰ってこないことでしょう。
 私たちは不意に予測していなかった状況へ陥った時、答が出ないことを知っていてすら「なぜ……?」と問います。
 知ってもどうにもならないのに、なお、問います。
 そして、回答の手がかりが見つかっただけで、心は変化する場合があります。
 全国へ拡散した膨大な数の〈森川長二氏〉へ社会ができることは、もちろん、生きていくためにより厚い援護の手をさしのべることが一つ、そしてもう一つは、政府や東電などによる〈問い〉への真摯な対応ではないでしょうか。
 
 過日、荒川区議会議員小坂英二氏と会ったおりに申し上げました。
「政党が選挙で掲げるこまごました政策などが状況によって変化するのは当然ですが、バッジをつけた人物の人間性は変わりません。
 選挙民が人間性を見て政治家を選べなければ、今の政治はレベルアップしないのではないでしょうか。
 政党を選ぶだけでなく、人間性をも選べる選挙制度にしなければ、このていたらくは変えられないのではないでしょうか」
 氏は答えました。
「それはそうですが、同時に選ぶ側のレベルアップが必要不可欠です」
 さすが、日々、選挙民と膝を交え、選挙ではビラを貼らずとも当選するだけの人物です。
 こうしたたくさんの〈森川長二氏〉たちの悲嘆を体感している政治家によって、原発事故の成り行きが徹底検証されることこそ、最大の被害者対策であるべきことを忘れないようにしたいものです。
 自分の悲惨な体験が、検証と反省と適切な今後の対策によって結果的に子供や孫の安全につながると感じられれば、それは決して小さくない救いになることでしょう。
(ああ、何と父祖の戦争体験に似ていることでしょうか……)




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。

 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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