コラム

 公開日: 2012-03-11  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(その94)─新たな出発のために─

原点
 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。
 また、当山へかずかずの温かいご支援をくださった方々へ、深く深くお礼申し上げます。
 3月11日には「般若心経百万巻」の供養をしましょう。(http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-3107.html



 あの日からとうとう一年が経ちました。

 3月6日付の河北新報によれば、

「岩手県と宮城県の被災者で、睡眠障害の疑いがある人の割合は約4割」

とされています。
 過去の全国調査では28.5パーセントの方々が睡眠障害に悩んでおられるというのも深刻ですが、被災者の5人に2人が眠れないとは言葉を失う思いです。
 しかも、若林区で医者にかからねばならないほど酷い方々は5人に1人です。

「『軽度の不安・抑うつ状態』と、より重い『専門医の診察が必要』と判定された人を合わせた割合は、全国8.2%に対し、若林区22.0%、雄勝・牡鹿16.6%、網地島9.1%。山田15.3%、大槌14.4%、陸前高田12.7%。」

 津波から泳いで助かったAさんは、しばらく入浴ができませんでした。
 もともと寡黙な方なので、奥さんは「ショックでお風呂へ入る気もしないのだろう」と見守っていましたが、あまりに長期間にわたったので、とうとう「一体どうしたの?」と尋ねました。
「──あのチャプチャプ感が、どうにも我慢できないんだ……」
 瓦礫の撤去率などがいろいろ言われている一方、一日一日を暮らす方々の心の回復はまだまだこれからです。

 さて、昨日、第25回寺子屋『法楽館』を開き、引き続き『ゆかりびとの会』の役員会が行われました。
 そこで83才になられるAさんから、厳しいご意見が出されました。
「住職は津波に遭った地域を托鉢して歩き、とうとう新しい寺院を始めた。
 あの頃の思いをふり返り、よりいっそう、不退転の気持で前進して欲しい」
 そして、Aさんは、平成11年に出版した『托鉢日記第二集』の一部を抜き書きした紙一枚とと、月刊誌『法楽』をコピーした紙一枚を示しました。
『托鉢日記』の「教えの人」に書いた海へと続く川沿いの集落を歩いた時に出会った方です。

「堤防に張り付くように立っている家々。
 瀬音が間近に聞こえる集落の中程にあるこの地域にそぐわぬ小さな自動車整備工場。
 家の中のガレージといった風情の作業場に入ると、ご主人が油にまみれた手を洗いつつ立ち上がる。
『雨ん中ご苦労さんだね、お願いします』
 後をついて行く。
 奥の扉の向こうは開け放った玄関。
 廊下のガラスもいっぱいに開く。
 灯明が点された居間の神棚と仏壇の様子には並々ならぬ信仰心があらわれている。
 精一杯のご祈願を終えると、お布施を用意しつつ後姿の肩越しに言う。
『このあたりは大体八千軒、いや八千人だよ。
 挫けないでやらいよ』
 まるで托鉢の経験があるかのような励まし方に驚く。
      (中略)
 受け取った御札を手に家へ入りつつ、更に忘れ難いコトバを下さる。
『気いつけて頑張らいよ。
 こんで終わりでねぐ、これからもしっかり守ってけさいよ』
 ご高齢の方々や体調の良くない方に守って下さいと言われ、背筋を伸ばすことは度々あったが、これからが大事だと明言されてみると、改めて考えさせられる。
      (中略)
 縁となった僧侶を信じることが前提である以上、その僧侶にしっかりやってもらいたいと思うのは当然なのだ。
 ご縁の方々、そしてこれからご縁となる方々のために
『何としてもやり抜かねばならない』」

 ブログに発表し、月刊誌『法楽』の2月号に書いた「宗教って何? ─被災地に生まれつつある小さな霊場や聖地─ 」の一部です。
 東北学を提唱した赤坂憲雄氏の言葉を紹介しました。

「『海沿いを歩くと、いたるところに、小さな霊場や聖地が生まれつつあります。
 草むらの中に卒塔婆が立っていたり、堤防の脇に花やお菓子がそなえられている。
 一瞬にして奪われたたくさんの命、それぞれの思いや記憶が行き場もなく浮遊しているのです』
 私も、托鉢でお世話になった海沿いの地域をもう一度、つぶさに歩くつもりです。
 かつて、娑婆で何もかも失った私は、見知らぬ集落の一軒一軒を訪ね歩き、地域の方々から生きる糧を与えられ、いかなる僧侶、いかなる寺院であるべきかも教えていただき、今に至りました。
 あちらの集落からも、こちらの集落からも山ほど授かった私は、〈小さな霊場〉で漂っておられる方々へ鎮魂の祈りを捧げ、小さな恩返しをしたいと思います」

 Aさんは、「托鉢から始まった初心に返れ」「恩返しを忘れるな」と叱咤してくださったのです。
 ご加持に救いを求めてご来山される方々の言葉を通じて、皆さんの睡眠に関する悩みを我がことのように心配しており、一つの腹案を温めています。
 そう遠くない日に、皆さんのお近くへ出向き、今も〈挫けないで〉やっている姿をお見せし、〈守ってけさい〉にお応えし、〈小さな恩返し〉とすべく、準備を進めています。
 新たな一年が皆さんに「この世の幸せとあの世の安心」をもたらすための大きな一歩となるよう願ってやみません。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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