コラム

 公開日: 2012-03-17  最終更新日: 2014-06-04

私たちは原発を扱えるか ─防災区域30キロと神様がもたらした幸運─

朝日新聞からお借りしました
 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 私たちは科学を信じています。
 むしろ、私たちが最も信じているものは科学であると言えそうです。
 今回、ようやく、科学的知見から、原発事故に対する避難訓練をしておくべき範囲(防災区域)は半径30キロと発表されました。
 日本の威信がかかった原子力安全委員会による判断です。

 テレビには、その発表によって困惑する人々が写し出されています。
 100万人のスムーズな避難先は?
 避難方法は?
 携帯電話の通じない自然の懐深く暮らす人への連絡と方法は?
 誰がいくら知恵をしぼろうとも、行く先も、方法もありはしないのです。
 これだけ重要な事実がこれまで〈無いこと〉とされてきました。

 こうなってすら、私たちは最悪の事態を〈無いこと〉にしています。
 それは、同時多発的に全国で地震が起こることであり、同時多発的に全国の原発が事故を起こすことです。
 これが科学的に〈あり得ない〉と、誰が責任を持って、万人の納得できる根拠を示しつつ断定できましょうか?
 全国いたるところで地震が頻発する日本にあって。

 私たちの〈逃げて行く先〉などありはしません。
 しかも、生きものたちのうち、人間しか考慮されていませんが、人間の数など、たとえ100万人と言ったところで、その生活圏に暮らす膨大な生きものたちの何万分の一もないではありませんか。
 原発事故により、人間にいのちを預けていたものたちは飢え、死にました。
 野生化した家畜をはじめ、自立していた生きものたちはこれから先、放射能によるどれだけの悲惨さを何代後の子孫まで伝えて行くことになるか、誰にもわかりません。

 この件につき、3月17日付の日経新聞ウェブ版を転載しておきます。

「国の原子力安全委員会の専門部会は16日、原子力発電所の事故に備えて事前に対策をとる防災区域を半径30キロに拡大することなどを盛り込んだ防災指針の見直し案を了承した。
 防災区域の拡大は2006年にも検討したが、経済産業省原子力安全・保安院に反対され見送っていた。
 見直し案は原発から半径8~10キロ圏に設定している『防災対策重点地域(EPZ)』を半径30キロ圏に拡大。
 半径5キロ圏に事故時の住民の即時避難区域を新たに設ける。
 内部被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤の家庭への事前配布、事故発生時の対策拠点『オフサイトセンター』の配置見直しも盛り込んだ。
 安全委は06年3月、国際原子力機関(IAEA)の基準に合わせて防災区域拡大を検討。しかし保安院が「国民不安を増大する」「財政的支援が増える」などとして拡大を押しとどめた。
 安全委の久住静代委員は16日の作業部会後、当時を振り返り、保安院の広瀬研吉院長(06年当時)から「寝た子を起こすようなことをするな、と厳しい口調で言われた」と記者団に証言。
『(防災区域が拡大されていれば)福島第1原発事故直後の避難の対応をもっと早く始められただろう』と悔やんだ。
 保安院の深野弘行院長も16日の会見で『当時の保安院は国際基準を導入する姿勢に欠けていた。問題があると考えざるを得ず、十分反省したい』と述べた」 

 さて、3月8日付の朝日新聞は「二つの幸運 4号機救う」として、現在の状況が〈偶然によって救われた〉結果であると報じました。
 最も怖れられていた4号機の崩壊が免れたのは、震災直前に、不手際から、いつもは水を入れないでおくはずの部分へ大量を水を入れっぱなしにしておき、それが、地震か津波によってうまい具合にできた隙間から使用済み核燃料を貯蔵する燃料プールへ流れ込んだからだというのです。
 日本は、幸運としか言いようのない成り行きで、菅総理が叫んだとされる「このままでは日本国滅亡だ」が現実のものとなって何の不思議もない瀬戸際から救われていました。
 記事の最後にある原子力安全・保安員の幹部の言葉は忘れられません。
「神様がいるとしか言いようがない」

 以下、全文を転載しておきます。

「東京電力福島第一原発の事故で日米両政府が最悪の事態の引き金になると心配した4号機の使用済み核燃料の過熱・崩壊は、震災直前の工事の不手際と、意図しない仕切り壁のずれという二つの偶然もあって救われていたことが分かった。
 4号機は一昨年11月から定期点検に入り、シュラウドと呼ばれる炉内の大型構造物の取り換え工事をしていた。
 1978年の営業運転開始以来初めての大工事だった。
 工事は、原子炉真上の原子炉ウェルと呼ばれる部分と、放射能をおびた機器を水中に仮置きするDSピットに計1440立方メートルの水を張り、進められた。ふだんは水がない部分だ。
 無用の被曝(ひばく)を避けるため、シュラウドは水の中で切断し、DSピットまで水中を移動。その後、次の作業のため、3月7日までにDSピット側に仕切りを立て、原子炉ウェルの水を抜く計画だった。
 ところが、シュラウドを切断する工具を炉内に入れようとしたところ、工具を炉内に導く補助器具の寸法違いが判明。
 この器具の改造で工事が遅れ、震災のあった3月11日時点で水を張ったままにしていた。
 4号機の使用済み核燃料プールは津波で電源が失われ、冷やせない事態に陥った。
 プールの水は燃料の崩壊熱で蒸発していた。
 水が減って核燃料が露出し過熱すると、大量の放射線と放射性物質を放出。
 人は近づけなくなり、福島第一原発だけでなく、福島第二など近くの原発も次々と放棄。
 首都圏の住民も避難対象となる最悪の事態につながると恐れられていた。
 しかし、実際には、燃料プールと隣の原子炉ウェルとの仕切り壁がずれて隙間ができ、ウェル側からプールに約1千トンの水が流れ込んだとみられることが後に分かった。さらに、3月20日からは外部からの放水でプールに水が入り、燃料はほぼ無事だった。
 原子力安全・保安員の幹部は「神様がいるとしか言いようがない」と話している」(奥山俊宏)

 私たちはこれまで、いかなる姿勢で科学の成果を用いてきたでしょうか。
 私たちはこの先、現在の科学力でつかんでいる事実をいかなる姿勢で用いつつ未来を切り拓く道具とすべきでしょうか。
 そうした姿勢を決めるのは、科学の役割ではありません。
 私たちの〈これまで〉を謙虚にふり返りつつ、徹底的に考え、行動しようではありませんか。
 後戻りできない分岐点で誤らないために。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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