コラム

 公開日: 2012-03-20  最終更新日: 2014-06-04

結ぶ絆、ある絆 ─自由のイメージ、縁のイメージ─


 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 今、各地で、善意の人々が「絆を結ぼう」「絆を取り戻そう」と真剣な努力をしておられます。
 仮設住宅で暮らす被災者の自立を後押ししようと「安心見守り協働事業」を展開する『パーソナルサポートセンター』の立岡学理事は言います。

「家庭内の不和をはじめ、独り暮らしの高齢者や生活保護世帯の増加、引きこもり、アルコール依存など、日本が抱える複合的な社会問題が震災で顕在化した。
 しかも、時間の経過とともに事態は深刻化している」

 深刻化している事態を見捨てず、対処できるのは人間だけです。
 誰かが縁という糸を結ばない限り、社会的問題はどうにもなりません。

 こうした〈人間の孤立化〉は、自由というイメージを追ってきた私たちの文明が招いた負の一面です。
 それは震災以前から明らかになっており、はからずも震災後の支え合いや救援活動によって一部修正されつつあるとは言え、震災によって地域が破壊され、よりいっそう進んでしまったことは否めません。
 私たちは自由を望みながら、孤立は望みません。
 若者たちは孤立を怖れて携帯電話にしがみつき、高齢者にとっての孤立はいのちに関わりかねません。
 こんな私たちは、忘れていた真実を思い出し、自由だけでなく、もう一つのイメージを日常生活の伴走者にしたいものです。
 それは「縁」です。

「絆」と似てはいますが、絆には半分の糸を結び合うといった一対一の感覚がある一方、縁は〈網〉に例えられるとおり、無限の結びつきといった意味を含んでいます。
 インターネットが世界をつないでいるように、私たちは無限の結びつきによって成り立っている網を構成する一つの結び目なのです。
 この網から漏れている人は一人もいません。
 さらに心の目をこらせば、人間だけでなく、生きとし生けるものすべてが、幾重にもなった無限の網を作りつつ生き死にをくり返しています。
 しかも、「袖振り合うも他生(タショウ…前世)の縁」であり、今起こっているふれ合いは、遙か前世からつながっている縁の糸と無関係ではありません。
 縁の網は、空間的に無限なだけでなく、時間的にも過去と未来を含み、無限です。

 自衛隊や警察や消防は片時も休まず私たちの安全を守り、豆腐屋さんや魚屋さんは、真っ暗なうちから仕事にかかり、新聞屋さんや牛乳屋さんは、一日も欠かさずほとんど定刻に待っている人のもとを訪れます。
 個人が営む〈一人一人の暮らし〉が集まって、社会が営む〈世の中の暮らし〉が成り立っています。
 電車の車中でじっと腕を組む人は、乗り合わせた誰とも無関係なようでも、実はそうではありません。
 実は、知らぬ同士が、切符を買う人々として共に使う電車の運行を支え合っているのです。
 それぞれの気持はつながっていなくても、縁の糸は確かにつながっています。
 この「私たちは皆、縁の糸でつながっている」というイメージを日常生活の伴走者にしたいものです。

 縁を明確に説いたのが「華厳経(ケゴンキョウ)」です。
 お釈迦様の悟りの世界を描く経典は、「ヴァイローチャナ・ブッダ」すなわち毘盧舎那仏(ビルシャナブツ)をご本尊様とし、この光の仏様は智慧の光で衆生をあますところなく照らし、救われます。
 また、仏様そのものが宇宙であり、衆生は無限の縁の糸でつながりながらその真実世界を構成しています。
 お大師様は、奈良の大仏で知られる華厳宗の教えを尊び、華厳経の説く〈関係性〉の先に〈マンダラ〉の教えがあるとされました。

 私たちは今、あらためて絆の大切さに気づいています。
 自分の暮らしは決して、自分だけの暮らしで成り立ってはいません。
 いかに個人的であろうとも、自分の暮らしは世の中の暮らしの一部であり、あらゆる人々が世の中の暮らしを成り立たせ、支え合っています。
 こうした目に見えない縁をイメージし、縁が具体的に動くさまをマンダラのはたらきとイメージしながら生きれば、絆はここかしこで活き活きと結ばれるようになるのではないでしょうか。
〈自由〉のイメージだけに頭を占領されず、ご先祖様が古来、磨き上げてきた〈縁〉のイメージをも大切にする姿勢で生きたいものです。
「お互いさま」「おかげさま」と声をかけ合いながら……。





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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