コラム

 公開日: 2012-04-13  最終更新日: 2014-06-04

【現代の偉人伝】第147話 ─花火を打ち上げたスコップ団─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。


 3月10日、被災地で活動を続ける『スコップ団』が仙台市泉区泉ヶ岳スキー場で二万発の花火を打ち上げた。
 団長平了氏の目的意識は、記者会見ではっきりしている。

「東日本大震災は、2万人の犠牲者が出た1件の震災ではありません。
 悲しい1件1件の事件が2万件も起きたのです。
 僕たちはそういう認識をもってこれまで活動してきました。
 ですから、この数字は絶対に譲れない。
 絶対に2万発上げたい、と思っています」(http://www.1101.com/schopdan/より)

 当日は雨になったが、混雑を避けるために限定して招待された方々二千人だけが現地で空を見上げた。
 他の地域からは眼にできなかった。


(cap_collection_20120220.jpgをお借りして加工しました)

 CATVが『みんなのテレビ』で放映した番組を基に、『天国にぶっ放せ!』と打ち上げた彼らの思いをふり返ってみたい。

 団員の女性。

「私にとってこの花火は亡くなった方への花火であり、生きている私たちが今から進むための花火だと思う」

 同じく団員の女性。

「たくさんの方々の思いが詰まっている花火なので、天国にいる家族や仲間に伝わればいい」

 花火へ込めた二つのメッセージ『天国に届いていますか』『私たちは元気です』が、汗を流してきた団員たちの魂から発せられたことがよくわかる。

 団長の挨拶。

「前の日の3月10日は、誰もが笑っていたり、どうでもいいことでケンカしたり。
 何で最後に一本メールを打たなかったのか、言い残しとかを俺たちは残してきたのではないかな。
 俺たちは元気でいるんだよというところと、天国に愛している人がいれば『愛しているよ』って伝えようと。
 そんな日が3月10日で、ドンとこう鳴らすしかない。
 それで『ぶっ放せ!』という乱暴なタイトルになっていますが、それは本当にごめんなさい。
 今の俺の気持で決めたのが『ぶっ放せ!』というしかなかったから、そういう風にしました」

 この点でも、団長は明確だ。

「私たちのいちばんの望みは、ほんとうは、復興でもなんでもない。
 3月10日、あの日に戻ること、その一点だと僕は思っています。
 でもそれはかないません。
 どうせだったら前よりもすてきな町にしようという、そういう気持ち、そういう強さが復興につながっていくのではないかと思います。
 そういったことを私たちスコップ団は1年近くのがれき撤去を通じて感じ取りました。

 我々が家の泥をいくらかきだしても、何かを取り戻せることはありませんでした。
 我々が何をしても世界はびくともしませんでした。
 でも、ひとりひとりの世界は確かに変わって笑顔が生まれる、ということがありました。

 3月10日を選んだ意図をよく問われます。
 私はこう思います。

 3月11日を忘れないようにしよう、ということは、よく言われます。
 しかしその日は、忘れないようにする日ではなく、忘れられない日です。
 忘れたいのに忘れられない日が3月11日です。

 いちばん忘れちゃいけないのは、なんてことない、ほんとうになんでもない日々です。
 幸せだったはずの、前の日なんじゃないかと思います。
 だから3月10日に花火を上げたいのです」(http://www.1101.com/schopdan/より)

 無残なあの日は「忘れたいのに忘れられない日」だと言う。
 そして、決して叶わない一番の望みは「3月10日、あの日に戻ること」である。
 もう取り戻せないが、取り戻したいという必死の思いで行動した結果、「ひとりひとりの世界は確かに変わって笑顔が生まれる」ことを知った。

 真の復興はアイディアから始まるのではなく、「ほんとうになんでもない日々」を取り戻さずにはいられない願いから始まる。
 それは無常への抗いようのない闘いではない。
 誰しもが望む〈人間の生活〉を確立しようとする自然な行動である。
 私たちは普段、意識してそれを望んでいるとは限らず、当たり前の昨日と今日と明日が続くと思っている。
 しかし、無くなれば、それがすべての土台だったと気づく。
 土台無しでは生きられない。
 だから、取り戻さずにはいられない。
 その結果として、やがて、笑顔と共に「どうせだったら前よりもすてきな町にしよう」と考えるところへ自然にたどりつく。
 この過程こそが、次の時代を創る真の智慧を生む原動力となる。
 原動力のないところで行われるアイディア競争は真の創造と救済に結びつき難い。
 スコップ団の『ぶっ放せ!』は、過程の終わりが到来しかけていることを告げているのではないか。

 激しい風雨に里の人々は「中止だろう」と思っていたにもかかわらず、山上では虚空に大輪の花々が見事に咲いた。

 団長は語る。

「一年というのは節目であるには違いないが、何かが始まったわけでも、終わったわけでもないと思うし、明日(3月11日)はゆっくり過ごしたい。
 静かに過ごして、ゆっくりと本気で考えて、スコップ団としては、次はどう考えるか、どう行動すべきか、今、問われていると思うので、やめるのではなく、どういう方法が一番いいのか明日、真剣に考えます」

 団長はつぶやく。

「いい意味で何かと闘わなければいけない。
 それは自分かも知れない。
 子供たちがいるんだったら、いつまでも大人たちは……」

『スコップ団から』(http://schop-dan.com/pg62.html)には「ABUT」というメッセージがある。

「必要なものって、スゲー地味に見える。
 贅沢が、俺たちを貧しくしてる。
 そんな事を震災は教えてくれたと思う。
 そんな事を、知れて良かったとも思う。
 ただ、代償がでかかった。

 無駄にしちゃいけない。
 若い俺たちがやるから意味がある。

 お金で買えないものの方が、大切だったりする。
 それを知った。

 たったひとつ、あればいい。

 俺が今日も生きていて、君を好きだってことをちゃんと伝えること。

 それ以外の運命だのなんだのは、もう分からねぇよ。
 ジッとしてられないだけ。

 一緒にどうかね。」

 若者には闘う力がある。
 真実を覆うものと闘う力が。
 日本は大丈夫。
 立派な大人としての彼らが生き残っているから。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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