コラム

 公開日: 2012-04-17  最終更新日: 2014-06-04

守護されている祈りの場 ─なぜ、修法の前後に唄うようなお経を唱えるのか?─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ご祈祷やご供養の修法が終わると、「最初と最後の長く唄うようなお経は何ですか?」と訊かれる場合があります。
 最初に「おんー」と始まるのは、四智梵語(シチボンゴ)といい、大日如来の智慧を四つの方向から讃えるものです。
 この声明(ショウミョウ)にともなって道場は東からも南からも西からも北からもみ仏の光明に照らされ、包まれます。

 まず、東におられる阿閦如来(アシュクニョライ)の智光が降り注ぎ、ものごとをありのままに観る智慧によって私たちの歪んだ見方が正されます。
 次に、南におられる宝生如来(ホウショウニョライ)の智光が降り注ぎ、ものごとをわけへだて無く観る智慧によって私たちの見ていない部分も明らかになります。
 次に、西におられる阿弥陀如来(アミダニョライ)の智光が降り注ぎ、ものごとの違いを見分ける智慧によって、この世の彩りが感受されます。
 次に、北におられる釈迦如来(シャカニョライ)の智光が降り注ぎ、ものごとのはたらきを知る智慧によって、この世のダイナミックなさまがわかります。

 こうして修法の場は智慧の光に満たされ、結界の中にいる私たちの迷妄も取り除かれているので、いつもとは違う心が仏神や御霊へ向かって開いています。

 また、そうしている間に、私たちの心に巣くう四魔(シマ)も封じられ、み仏から分けいただいた無限の仏心である四無量心(シムリョウシン)がはたらき始めています。
 
 まず、東におられる阿閦如来は天魔(テンマ)を断ってくださり、「捨(シャ)」の心が活性化されます。
 妬みや高慢心がなくなり、自分勝手なわけへだてを〈捨てる〉心になります。
 次に、南におられる宝生如来は蘊魔(ウンマ)を断ってくださり、「喜(キ)」の心が活性化されます。
 制御しがたいほどの心のはたらきも、身体のはたらきも、押し寄せる情報も整理され、他人の喜びを心から〈喜ぶ〉心になります。
 次に、西におられる阿弥陀如来は煩悩魔(ボンノウマ)を断ってくださり、「悲(ヒ)」の心が活性化されます。
 自己中心で〈欲しい〉〈惜しい〉とかき集める猪八戒(チョハッカイ)が持つ熊手のような欲がおさまり、生きとし生けるものの苦を〈悲しむ〉心になり、苦を取り除かないではいられなくなります。
 次に、北におられる釈迦如来は死魔(シマ)を断ってくださり、「慈(ジ)」の心が活性化されます。
 宿命としての死は生きものとして最強の恐れをもたらし、人の道を忘れさせる場合すらありますが、空(クウ)の境地に立ち、生きとし生けるものを〈慈しむ〉心になり、皆ともに楽しむ世界をつくらないではいられなくなります。

 これが、四魔封じと四無量心の活性化です。
 本堂であれ、墓地であれ、皆さんの居宅であれ、山であれ、海であれ、結界され聖地となった修法の場では、最初の数分の間にこれだけの法が結ばれています。
 導師も皆さんも別世界へ入り、み仏の心が輝き出しています。

 そして最後に「のうまくー」と不動讃(フドウサン)が唱えられる場合は、大日如来の使者として結界を張り、修法をご守護くださったお不動様を讃え、感謝申し上げます。
 あるいは、「願わくばこの功徳(クドク)をもってあまねく一切に及ぼし、我らと衆生と皆共に仏道を成ぜん」と廻向文(エコウモン)が唱えられる場合もあります。
 今こうして至心にまごころそのものになり、み仏のご加護をいただいた功徳を自分のためだけでなく、この世とあの世の一切へ廻し向け、世界がみ仏の道にそった清浄なものとなりますようにと願うのです。
 導師はただ、経文を〈読んで〉いるのではありません。
 密教の導師は必ず結界を張り、場を聖地化してみ仏を讃え、善男善女の願いをみ仏へお届けし、感謝の法をもって一座を終えます。

 泉墓苑でご納骨が終わり、空を見上げてAさんが言われました。
「ああ、心が晴れたようです」
 本堂で一周忌が終わり、涙の薄膜に覆われた瞳の奥から微かな喜びを発しつつ、Bさんが言われました。
「これまで、自分の悲しみの中だけに閉じこもっていたような気がします。
 やっと歩き始められそうです」
 ご加持(カジ)を受けたCさんが言われました。
「こうして四魔切りをしていただくのが、私の最後の救いの道だと思っています」
 祈りの場は、確かなご守護の場でもあるのです。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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