コラム

 公開日: 2012-04-18  最終更新日: 2014-06-04

反省と責任 ─「君子は刑を懐(オモ)い、小人は恵みを懐う」に思う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



1 論語の「君子は刑を懐(オモ)う」

 加地伸行氏は4月17日、産経新聞へ「あふれる利己主義者」を書いた。
 氏は2例を挙げて利己主義とした。
 一つは、複数の企業などから内定をもらったまま保留にしている学生である。
 結果的にどこかの企業と、就職できないでいる人々へ与える迷惑を考慮せず、自分の都合しか考えないのは人間として重大な欠陥抱えているのではないかと指摘している。
 もう一つは、大阪の寝屋川市で1才の我が子を虐待死せしめ、一審で懲役15年とされたのを不服として控訴した20才台の両親である。
 無抵抗の乳幼児を殺しておきながら我が身に安楽を願うのは、あまりにもあさましい。
 そして、論語の1文を示した。
「君子は刑を懐(オモ)い、小人は恵みを懐う」
 ここにおける刑は「責任をとる覚悟」であり、恵みは「お助け」であるという。

2 閣僚の「反省」

 同日、ニュースに3閣僚の談話が流れ、田中防衛相と前田国土交通相と枝野経済産業相が同じセリフを口にした。
「反省しています」
 そもそも反省とは、まず、自分の過去をふり返り検証するという客観的で批判的な視点に立った行いである。
 ここで欠かせないのは、自分可愛さを超えた謙虚さである。
 そして、見つかった問題点についてはさらに考察を深める行いである。
 ここで欠かせないのは、逃げない真摯さである。
 さて、閣僚はなぜ「反省しています」と言ったか?
 明らかに、責任をとらないで済ますための免罪符として早々と提示したのである。

3 「反省」を求める社会、「反省」で済ます大人

 いったい、この国は、いつから「反省」を免罪符とし始めたのだろうか?
 問題が発生すれば、マスコミを初めとする人々はこぞって「反省していますか?」と追求し、いい年をした大人が軽々に「反省しています」と口にする。
 詫びてしまえば罪を認めたことになり、それに伴う責任が発生し、やがては刑も科せられ得るが、「反省」ならば〈社会通念上、許される範囲での失敗〉として問題が片付けられ得るからである。
 しかし、これでは、二重の意味で「反省」を誤る。
 一つは、反省とは他者とはまったく関係なく一人で深める孤独な、しかし、人間として実りのある一心上の重大事なのに、世間を渡るための道具として用いられた瞬間その道行きは打ち切られ、たちまち欺瞞でしかなくなるからである。
 もう一つは、[1]の論語でいう君子ならずとも、大人と子供の違いは責任をとるかどうかという一点にあるはずなのに、個人も社会もそこをあいまいにして「反省」で済ますならば、個人も社会も〈子供化〉しかねないからである。

4 拙い反省例

 自分の人生をふり〈返〉ってみれば、そこに積まれた愚かさ、失敗、たくさんの方々へかけてきた迷惑の膨大さに立ちすくむ。
 しかも、いかに〈省〉みても、とりかえしようのない問題は消し去られず、誰が忘れたとて、自分は忘れられない。
 こうした悪業(アクゴウ)に慄(オノノ)く思いが今日の一歩への後押しになる。
 画像処理にシャドウという項目がある。
 シャドウを弱めれば画像全体は明るくなるが、陰翳の薄れた画面は精気を失う。
 悪業は人生のシャドウではないか。
 真の反省はそれを観る行為であり、決して、軽々に言葉とはならない。
 むしろ、言葉にしてしまう軽率さは人生から精気を奪いかねないとも思える。

5 反省を口にせず、責任をとる文化

 こうして考えてみると、問題は潔(イサギヨ)さに帰結するのかも知れない。
 反省は黙って行う。
 問題を起こせば、素直に詫び、責任をとる。
 私たちの文化は本来こうした潔いものではなかったか。
 いったい、この国は、いつから「反省」を免罪符とし始め、〈子供化〉し始めたのだろうか?
 それは加地伸行氏が糾弾する利己主義へと傾斜を強めた個人主義と関係があるのかも知れない。
 もう一度、高校で学んだ論語を復習しておきたい。
「君子は刑を懐(オモ)い、小人は恵みを懐う」



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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