コラム

 公開日: 2012-04-20  最終更新日: 2014-06-04

「痛みが美に変わる時 ─画家松井冬子の世界─」に想う(その1)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。


浄相の持続
〈浄相の持続〉
 松井冬子氏の絵に驚嘆し、現代に蘇った江戸時代の絵師を調べてみた。
 作品には死と生の共存、あるいは生から観た死、もしくは死から観た生が描かれている。

 平成20年4月20日、NHK教育テレビは『痛みが美に変わる時 ─画家松井冬子の世界─』を放映した。

 松井冬子氏は油絵にもの足りず、日本画を選んだ。
「現実を超えたものを描くからこそ、リアルでありたい」
「日本画はアリが這うように描く。ものをしっかり見てストイックに」

『世界中の子と友達になれる』『ただちに穏やかになって眠りにおち』『完全な幸福をもたらす普遍的万能薬』『切断された長期の実験』などが紹介される。

 氏は指導者と共に、実験用のラットを解剖する。
 淡々と。
「嘘をついては見る人へ失礼だから。簡単にやってしまうのは嫌。しっかりしていたい」
 内蔵などを調べながらつぶやく。
「よくできてますねえ、しかし」
「すごい。美しい」
 二時間に及ぶ観察の後、制作へとりかかる。
 徹底した写実がリアリティを支える。
 たとえば、まる二日、ヘビを眺めてから『なめらかな感情を日常的に投与する』は描かれた。

『浄相の持続』は九想図(クソウヅ)にヒントを得た。
 九想図は死んだ美女の身体が自然へ還ってゆくさまを九段階に描いたもので、無常を観る眼を養うために寺院で用いられてきた。
 氏は幕末から明治にかけて筆をふるった河鍋暁斎が好きだと言う。
 理由は「エッジが効いているから」
『思考螺旋』『夜盲症』『終極にある異体の散在』が紹介される。

「傷つけたり、傷つけられたり、暴力ということを深く考えさせられた」
 氏には、鼓膜が破れ、首の骨が折れ、顔が腫れる暴力体験があった。
 自分の中のリアリティをそのまま絵として描いているという意識はなかったが、後になってから「ああ、本当にリアリティだったんだなと気づくことはあった」

『腑分図:左鼓膜』は、身体が傷ついても何としても生きようとする人間の執着を表したという。

 氏は、絹本の裏辛から色を塗る裏彩色という明治以降ほとんど使われなくなった技法を復活させた。
『やや軽い圧痕は交差して網状に走る』を描いている夜、画中の顔から「冬子さん」と話しかけられ、びっくりした。
「幻聴を聴いてしまったのか?」
「顔がリアルになってきたのかな?疲れてるのかな?いずれにしてもおもしろかった」
 
 氏は「師」と呼ばれるにふさわしい職人である。
 妥協のない仕事師である。
 だから、迷いの中でではなく現実の中で、作中の人物に話しかけられた。
 生きている氏のリアリティは、絵のリアリティと重なっている。
 追求してやまないリアリティは「エッジ」の曖昧さを許さない。
 作品にある曖昧模糊とした幻想的イメージは、凄まじくリアルな下図からもたらされている。
 見えている身体と見えない内蔵や骨が共存している作品は氏のリアリティとどうつながっているのか?



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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