コラム

 公開日: 2012-05-05  最終更新日: 2014-06-04

傷ついた日本人へ(その4) ─本当の幸せとは何か?(その1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 被災地を訪れたダライ・ラマ法王が高野山で行った講演の概要が『傷ついた日本人へ』という本になりました。
 それを読み解く稿の第4回目です。

「みなさんはどのようなときに『幸せ』を感じるでしょうか。
 いいことが起きたとき、好きな人といるとき、美味しいものを食べたとき、欲しいものを手に入れたとき……。
 人によって実に様々でしょう。
 それでは、この『幸せ』とはどのような感情、状態なのでしょうか。
 なぜこのようなときに『幸せ』だと感じるのでしょうか。」

 たとえば、美味に誘われて幸せ感へたどりつくまでの順番を考えてみましょう。
 まず、調度もBGMもしゃれている雰囲気の佳いレストランで嬉しくなります。
 非の打ち所がない店員さんへ注文し、出てきた料理を見て期待感が膨らみます。
 香りもなかなかです。
 一味食べて、感心します。
 舌触りも嬉しく、どんどん食べて満足感は積み上がります。
 食後のコーヒーも結構で、「こんなお食事のできる自分は幸せ者だなあ」とつくづく思います。
 こうして眼や耳や鼻や舌や肌などの感覚器官を総動員する一連の流れについて法王は断じます。

「食事によって感覚が刺激され、幸福感という反応が起きた」
「私たちが普段『幸せ』だと思うことの多くは、快感による身体的反応に過ぎない」
「『幸せ』と言うとなんだか精神的なもののように思われていますが、非常に即物的、肉体的なものなのです」

 どうでしょう。
 言われてみれば、その通りではないでしょうか。
「おっしゃるとおり、当たり前でしょう。何が悪いのですか?」と疑問を持たれるかも知れません。
 しかし、法王は、〈当たり前〉の先へと進みます。

「この種の幸福感の怖いところは、『自分にとって好ましい状態』であるかどうかで、自分の幸福感が左右されてしまうということです。」
「こうした幸福感は外的要因によって決められてしまう」

 好きな料理を食べられたから幸福感を感じたということは、以下の結果につながります。
 好きな料理を食べられなければ、この幸福感は得られない。
 嫌いな料理を食べても、この幸福感は得られない。
 つまり、〈好きな料理〉と〈食べる〉の二つの要因がなければ、『自分にとって好ましい状態』とならず、幸福感は得られません。
 そしてこの二つの要因は、得られるか得られないかという〈外的な要因〉です。
 以上により、私たちが普通に味わっている幸福感は、自分の外側に条件を求めるという方法によってつくられていることがわかります。

 法王は、〈求める〉欲望に問題があるとされます。

「私たちは、これまでひたすらこの物質的な幸福感を追い求めてきました。
 特に二十世紀は、この追求が頂点に達した世紀と言ってもいいでしょう。」
「どれほど豊かになっても、『幸福』で満ち足りるということがありません。
 それどころか、欲望はどんどん大きくなっていったのです。」

 過去の100年間で科学技術は飛躍的に進み、日常生活へ膨大なモノをもたらし、産業や経済はどんどん膨らみました。
 娯楽も多様化し、テレビの番組は選びきれないほど豊富になり、たった一人で一台のテレビを相手に一日中楽しめるようになりました。
 加齢への抵抗は無限に続けられるという錯覚が蔓延し、樹木希林氏のように「年を取るということにブレーキをかけないでいる」という人は希になりました。
 懺悔と恩返しに余生をかけるべきお年寄りは、産業界を挙げての〈若返り協奏曲〉に乗せられ、時間とお金をつぎ込んでいます。
 実に、私たちは求めて止みません。

 もちろん、いつの世もこうして人間は文明を進めて来たのでしょうが、法王は、現在の暴走に危険を感じておられます。

「なぜ欲望がとまらないのでしょうか。
 それは幸福感が『外部からの刺激』によるものだからです。
 幸福の源が外にあるので、常にそれを求めずにはいられません。
 逆にいえば、欲しがらなければ幸せになれない。
 つまり自分一人では幸福感を感じることができなくなってしまったのです。」
「一部に莫大な財産が集められれば、貧富の差も広がります。
 こんなに豊かな世界がある一方で、食べるのに困って餓死する人がいるのというのは、本当におかしなことでしょう。
 まさに欲望に駆り立てられた社会の腐敗、人間の堕落の象徴ではないでしょうか。」

 私たちは、外にある幸福の源を手に入れようと欲して、お金を求めます。
 お金のない子供は、スターの握手券を利用して詐欺行為を行い、あるいは売春に走りもします。
 お金持ちはどうして増やそうかと思案に余念がありません。
 人間が普通に生きるために必要な手段としての役割からかけ離れたお金が世界を相手に自己増殖しようと暴れ回り、幾度も世界を危機に陥れてきました。
 プロ野球選手一人の身分が数十億円で売買されるアメリカでは、18才以下の貧困率は約20パーセント、実に5人に1人の若者が食うや食わずで希望の持てない日々を生きています。
 黒人やインディアンやヒスパニックは4人に1人が貧困者であり、人種差別と経済格差は恐ろしいほど連動しています。
 今や世界経済の牽引車とまで言われる中国では、賄賂、環境破壊、人権無視、格差拡大、コピー商品の蔓延など、お金を主人公にした文化のひずみが露呈し始め、社会不安が高まりつつあります。
 世界経済の主役を競ってきた国ほど、欲望とお金にからむ問題は深刻化しています。
 法王の断罪「社会の腐敗、人間の堕落」に耳をかたむけないではいられません。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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