コラム

 公開日: 2012-05-09  最終更新日: 2014-06-04

傷ついた日本人へ(その8) ─本当の幸せとは何か?(その5)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 被災地を訪れたダライ・ラマ法王が高野山で行った講演の概要が『傷ついた日本人へ』という本になりました。
 それを読み解く稿の第8回目です。

 前回、真の意味で自分自身に愛情を向け、愛情や思いやりを家族へ広げ、身の周りや組織から地域や社会の人へ、やがてはその輪を世界にまで及ぼすイメージについて学びました。
 では、イメージを具現化する方法とは?
 法王は、仏法が説く二つの方法を紹介されました。

「まず一つは、自分の視点と他者の視点を置き換えてみること。」

 たとえば、親に反発している人は、親の目になって自分を見てみましょう。
 もしかすると、いくら突っかかられてもじっと子供の成長を楽しみに見守ってくれている心がわかるかも知れません。
 たとえば、最も嫌いな人の目になって自分を見てみましょう。
 自分から嫌われている辛さにじっと耐えている心がわかるかも知れません。
 たとえば、裏切られた人の目になって自分を見てみましょう。
 相手が裏切らないではいられなかったほど酷いことをした、あるいは追いつめた自分に気づくかも知れません。
 法王は説かれます。

「自分がいかにたくさんの他者と共に生きている存在なのか、自分の考えがいかに狭く悲しいものだったから自ずとわかってくるでしょう。」

 第二の方法です。

「もう一つは、どんな事象も全て自分につながっていると考えることです。」

 たとえば、自分が生まれてくるまでには、両親がいて、その親たち4人がいて、その親たち8人がいたことが絶対的な条件でした。
 こうして考えてみると、わずか5代遡るだけで、62人もの人々が自分へ血と心を受け継いでいてくれたことがわかります。
 そのうちたった1人が欠けていても、自分はこの世へ生まれては来られませんでした。
 たとえば、一人前になるまで見守り、導いてくださった方々を指折り数えてみましょう。
 幼稚園の先生など、いかにたくさんの人々のおかげで生きて来られたのか、驚くほどです。
 また、記憶に鮮明なできごとを思いだしてみましょう。
 そこには子供の頃の遊び仲間や、辛い時期に一緒に酒を呑んでくれた親友や、思いもよらない形で別れ別れになったまま、会いたいと思いながら会えずにいる人などが登場してくるはずです。
 そして、いかにたくさんの人々が自分の人生にかかわり、自分を人間として成長させてくれたかがわかることでしょう。
 また、いつも挨拶を交わすコンビニの店員さんや、ご近所の奥さんなどを思い起こせば、自分が、いかにたくさんの人々にとって〈関わっている人〉として存在しているかに気づきます。
 こうして思いを膨らませながら過ごしていると、津波に流されてしまった海岸や廃墟となっている村を眺め、被災された方々と言葉を交わす時、愕然とします。
 自分の家が流されてしまったとしても、何の不思議もない……。
 自分がすべてを失い仮設住宅で暮らしていたとしても、何の不思議もない……。
 自分は今、時間的空間的に膨大な関係という糸によって、たまたまここにいるに過ぎません。
 だから、自分に起こっているできごとは必ず、自分以外の誰かにとっても起こっている何ごとかであり、誰かに起こっているできごとは必ず、自分にとっても起こっている何ごとかなのです。

 このように視点を置き換え、関係性の網を考えると、心は次のステップへ進みます。
 誰かの幸せを願えば、そのまま自分の幸せに通じ、誰かの不幸を願えば、すでにその時点で自分は不幸です。

「自分の幸せを願うことは、他人の幸せを願うことと同じ。
 そして他人を疎かにすることは、自分を不幸にすること同じです。」
「相手を自分と同じように捉えることができれば、自然と慈しむことができるでしょう。
 そして、だんだんと利己的な感情が消え、純粋に他者を思うようになります。
 やがて全ての他者、あらゆる命を愛するところまで慈悲の心が大きくなる。
 そして、ただ思いやったり共感したりするだけでなく、その人が幸せになれるように自分が何かしよう、苦しみを取り除いてあげようという段階になります。」

 楽を与えるのは「慈」、苦を取り除くのは「悲」です。
 だから、心から他人の抜苦与楽(バックヨラク)を願うならば、その人はすでに慈悲の権化である菩薩(ボサツ)になっています。

 しかし、このように徹底した生き方は、そうたやすく実現できません。

「もちろん、これほど大きな慈悲の心に近づこうというのであれば、それなりの修行が必要です。
 私もその段階になれるよう常に鍛錬していますが、いまだに修行中なのです。」

 生まれ変わり死に変わりする輪廻転生(リンネテンショウ)にある私たちは、永遠の修行者です。

 幸せになりたいならば、外から何かを得て幸せになろうという自己中心的な考えを一旦、脇へ置き、まず、誰かの何かのためになろうという慈悲の心を育てましょう。
 親や先生などから思いやられ、目をかけ手をかけて育てられた私たちは、必ず、自分以外の人を思いやり、何らかの形で目をかけ手をかけられるはずです。
 実践法法は、自分の視点を他人の視点と置き換えてみることと、自分がいかにたくさんの人々との関係性の中で生かされているかに気づき、誰かに起こっているできごとは決して〈他人ごと〉ではないと考えることです。
 そうして誰かの喜びを自分の喜びと感じ、誰かの幸せを自分の幸せと感じられる時、私たちはすでに、真の喜び、真の幸せを手にしています。
 こうした〈喜び人〉や〈幸せ人〉は、たとえモノなどの外的条件に恵まれていなくても、自然に周囲へ喜びや幸せの気配を発し、誰かを幸せへと導き、自他のさらなる喜びや幸せにつながる縁の糸を太くするものです。
 もしも「自分はグチを言い、不幸を嘆いている」と思い当たる人は、ぜひ、法王の示された考え方と方法とをもって〈喜び人〉や〈幸せ人〉になりましょう。
 それは、何がなくとも心一つで実現できるのですから。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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