コラム

 公開日: 2012-05-11  最終更新日: 2014-06-04

傷ついた日本人へ(その9) ─本当の幸せとは何か?(その6)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 被災地を訪れたダライ・ラマ法王が高野山で行った講演の概要が『傷ついた日本人へ』という本になりました。
 それを読み解く稿の第9回目です。
 
 法王は、本当の幸せを探求し、最後に、未来の幸せへ言及されました。
 子供たちが幸せを得つつ成長する道です。

「心を高めていくことは、仏教に限らずほとんどの宗教が目指していることです。
 これこそ宗教の本質であり、大事な役割とも言えるでしょう。
 宗教というシステムは、心を育てるのにたいへん役立つものです。
 しかし、世界には宗教を持たない方も大勢いらっしゃいます。
 そう考えると、宗教の有る無しに関係ない『倫理観』をきちんと育てることも大切です。」

 よりよく生きようとするならば、結局、心のレベルを上げて行かねばなりません。
 財物や名誉のレベルをいかに上げても、人間として真によく生きて行く最終的な手段になり得ないことは、ここまでに〈ものの道理〉として学んできました。
 ここにおける〈レベル〉とは、誰かと比較してどの位置にあるかといった問題ではなく、自分なりに上りつつ向上して行く階段といったイメージです。
 法王は、心のレベルを上げることを「心を育てる」と表現し、その方法として宗教のシステムが役立つと言われました。

 宗教と俗信との違いは、システムとしての完成度にあります。
 たとえば、宝くじを買いに行く途中でヘビを見かけて拝んだところ、買った宝くじが大当たりしたので、財物をもたらす神様としてヘビを崇め祀っても、それはまだ宗教とは言えません。
 異次元や救済を感じさせる祈り方、体験を支え体験へ至る一定の論理、つまりシステムがあって初めて、いわゆる宗教と呼べます。
 仏教は宗教として、釈尊の時代からずうっとシステムの深化を遂げてきました。
 現在、大乗仏教として組み上げられたシステムの代表的なものは、心を階層的にとらえ深めて行く「唯識(ユイシキ)」と、諸行無常の視点を深めて行く「空(クウ)」と二つの方向性があります。

「仏教は宗派がたくさんあってさっぱりわかりません」
「お釈迦様が言われたとある程度確信できそうなものだけが仏教ではないのですか?」
「宗派がいろいろあっても、仏教って結局は同じなんですよね」
 こうしたお話をよく耳にしますが、心から救いを求め教えを実践する体験によらない限り〈システム〉の体感はできません。
 たとえば、合掌一つとってもたくさんの種類があります。
 もしも、合掌しつつまごころを言葉としてよりはっきりさせたいならば、その言葉は無数にあります。
 金剛合掌し「おん かかか びさんまえい そわか」と唱えれば、その人はすでにお地蔵様の世界へ入るシステムを採用しているのです。
 こうした実践者にとって、前掲した3つの話はあまり意味を持ちません。

 法王が言われる「システムは、心を育てるのにたいへん役立つ」とは、このような実践の勧めではなく、実践を支える論理としての〈システム〉が倫理観をつくるのに役立つという意味です。
 たとえば、因果応報という法則には3つのルールがあります。(「因果の法則『三つのルール』」参照)

1 原因がなければ結果は生じない
 種がない限り、花は咲きません。
2 変化がなければ結果は生じない
 水が凍れば氷になり、炭素が凝縮されればダイヤモンドになるのであり、結果としてこの世にあるすべてのもの、この世で起こっているすべての現象は必ず変化を経ています。
3 原因には結果を生み出す素質がある
 チューリップの種にチューリップの花を咲かせる可能性があるからこそチューリップの花が咲くのであり、チューリップの種を植えておきながら梅の花が咲く日を楽しみにしていても無意味です。

 仏教が説くこの因果の法則をよく学んだならば、軽々に悪事ははたらけなくなるはずです。
 自ずから慎む姿勢ができてゆくのではないでしょうか。
 また、精進できるはずです。
 努力を続けなければ結果は得られないので、夢や希望を持つ人にとってこの法則は支えともエンジンともなるのではないでしょうか。
 これが〈システムが役立つ〉という意味です。

 法王は説かれます。

「特に子どもたちへの教育はこれから見なおさなくてはならない。
 近代の教育は、稼ぐために必要な、実用性の高いスキルにばかり注意が向けられたり、他人より優秀でであることを証明する競争になり代わってしまったりしたからです。
 人としてどう生きるべきか、よい人間になるにはどうすべきか、そういった『人間性』の教育は無駄なことだとなおざりにされ、宗教や家庭に任せきりではなかったでしょうか。
 エゴが増長し、自我意識が肥大化していったのは、それも一因だと思います。
 しかし、未来の世界から戦争という悲劇を断ち切り、暴力を根絶するためにも、倫理観を育てるのは緊急の課題です。
 他者への思いやりや心の平和が、現実的に必要になってきているということです。
 これからは、誠心を育てる科目を、ぜひ子供たちの教育に加えてほしいと思います。」

 そして、決定的な一言を述べられました。

「宗教とは関係なく、現代の一般教育として、心はどのようなものか、どのようにはたらくのか、そしてどうコントロールすべきかを教えるのです。」

 これこそが「宗教というシステムは、心を育てるのにたいへん役立つ」という意味です。
 合掌したり真言を唱えたりといった宗教行為を伴わなくても、宗教的真理をふまえた論理によって心の扱い方を教えれば、子供たちはエゴを増長させ自我意識を肥大化させずに、まっとうな大人として成長し得るのです。
 今の日本は、敗戦後この方、宗教を丸ごと教育から排除してしまった歴史を見直す時期にきています。
 幸せを得るためのモノ金を集める方法をいくら教え、他人より抜き出た能力をつけさせても、子供は必ずしも幸せな人生を送れません。
 法王は、宗教者でありながら、宗教行為そのものを勧めるのではなく、「人間性や倫理観の教育」について話され、子供たちが「理性を育て、智慧を高め、人間としての素質を高め」られるよう努力しておられます。
 子供たちと日本の未来のために、ぜひ、無限の宝が詰まっている仏法を見直していただきたいものです。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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