コラム

 公開日: 2012-05-15  最終更新日: 2014-06-04

傷ついた日本人へ(その10) ─本当の幸せとは何か?(その7)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 被災地を訪れたダライ・ラマ法王が高野山で行った講演の概要が『傷ついた日本人へ』という本になりました。
 それを読み解く稿の第10回目です。

 法王は、幸せを求めるお話の最後に日本人への信頼を述べられました。

「日本はアジアで最も経済発展や産業発展が進んだ国ですし、非常に裕福で進歩的な生活を送っています。
 民主主義がきちんと機能していて、自由な言論が保証されている国家という意味でも、諸外国から信頼が篤いところでしょう。」

 民主主義の機能と自由な言論の保証は、ダライ・ラマ法王がチベットを守り再興させるために中国政府へ対して最も主張しておられる部分でしょう。
 中国にこの二つがあれば、チベット人も、ウィグル人も、心の根を断たれつつあるという悲劇は起こらなかったはずです。
 そうした意味で、日本は確かに、精神を解放させるシステムの進んだ国家として世界の最先端に位置しているのかも知れません。

「しかしこの間、精神や心の豊かさは、経済や産業ほど重視されてこなかったように思います。
 これは日本に限らず他の先進国にも共通の問題です。
 性能のいいコンピュータを作れば生活は便利になりますが、心が穏やかになることはありません。
 日本のカメラも大変性能がよく、体内を映す医療カメラまで発明されていますが、それでも心の状態を映し出すことはできません。」

 これまで当山へ人生相談に来られた方々のうち10人近くが、コンピュータの支配を受けた就労空間に耐えられず、離職しておられます。
 皆さんは異口同音に言います。
「当人同士が近くにいながら肉声でやりとりしない状態を異様であると感じられないことが恐ろしくてなりません。
 このままでは、自分が壊れてしまうと判断して会社を辞めました」
 実に、コンピュータは心を穏やかにしてくれる役割を担っていません。
 メールは自分の意志や考えを相手へ伝えはしますが、それはその瞬間に心へ浮かぶ内容のごく一部であり、送れば修正は効かず、反応が欲しければ一方的に待つしかありません。
 相手が目の前にいないので、どうしても内容が自分の頭の中で増殖膨張し、独りよがりに陥りやすくなります。
 受けたメールには文字しかなく、自分が持っている解読力の範囲で理解するしかありません。
 たとえ身勝手な妄想であっても。
 もちろん、こうしたプロセスを全否定する必要はありません。
 問題は、対面して肉声を交わし合う時の、相手から発せられる膨大な情報をきちんとつかみ、自分からも豊かな情報を返すという〈全人間的な〉交流体験が少なくなると、肝腎なものが失われてしまう怖れがあるという点です。
 肝腎なものは、細やかな感応です。

 相手からは言葉以外にも、服装や、目の色や、姿勢や、気配など、処理しきれないほどの情報がやってきます。
 それを受け、自分もまた、動作や、声の抑揚や、表情など、あらゆるものを総動員して意図するところを発信します。
 双方の頭の中では当然、相手の状態に合わせた思考と感情の変化や発展があり、会話の内容は深まって言葉を交わす本当の目的が達成されます。
 それは〈裸の自分〉による〈相手の魂への理解〉です。
 ここに真の感応があります。
 対人関係がうまくゆかないという人生相談や、対人関係がうまくやれますようにとのご祈祷依頼を受けていて感じるのは、感能力の低下であり、それはもはや、悩んでおられる当人だけの問題ではありません。
 本来の感応力は、人間に対してだけでなく、自然に対しても、あるいは時間空間を超えた人やできごとに対しても豊かにはたらくはずです。
 人間の前で、自然の前で、時間空間を超えた何ものかの前で魂が裸になり、相手をまるごとつかみ、音叉が響き合うように魂が震えるはずです。
 しかし私たちは今、薄れ行く感能力を、好きな人や趣味など限られた対象へ対して精いっぱい発揮しているといった状況にあるのではないでしょうか?
 だから、社会と人間にある種の刺々しさが生まれているのではないでしょうか?
 好きな人へは無性に優しく、好きな車はピカピカに磨きながら、つまらぬことで同僚とケンカし、海を見に行って平気でペットボトルを捨てるなどはその典型と言えます。

 法王は諭されます。

「日本はもう十分に物質的な発展は遂げられたのですから、これからは『次の段階』、すなわち『精神的発展』を遂げるべきです。」
「もともと日本人の精神性は非常に高く、慈悲にあふれたものだと私は思っています。
 たとえば自然を大切にし、畏怖する精神性を持っていたり、神道のような古くからの伝統が大事にされていたり。
 誰もが礼儀正しく、日本に来るといつでもどこでもたくさんの人にお辞儀されます。」
「仏教国としてキャリアを比べても、日本はチベットより先輩です。」
「歴史を振り返りますと、日本の仏教に敬意を払わずにはいられません。」
「これほど仏教の盛んな日本の方なら、たとえ無宗教の方でも仏教的な観念や土台があるように思います。
 利他の精神に共感したり、因果や輪廻を理解したりということも、他国の方より簡単ではないでしょうか。」
「このように、日本人は高い精神性や倫理観と、仏教の伝統の両方をもちあわせています。
 この二つの力でもって人間性の向上をさらに目指していただければと思います。」

 法王の指摘どおり、日本文化の土台には仏教の精神があり、それは気づかずとも私たちの日常生活の支えとなり導きともなっています。
 もしも、言葉の少ない空間での就労に耐えられなくなりそうな時は、皆のためにたとえ小さなことでも何かをやってみましょう。
 あるいは、休日には〈人間〉や〈自然〉とたっぷり感応し合いましょう。
 また、自分の心に偏狭さや邪険さが育ってはいないか、感能力から柔軟さが失われてはいないか、チェックしてみましょう。
 魂の浄化・向上というイメージも大切にしたいものです。
 東日本大震災における広島型原爆3万2千発分にも相当するエネルギーの暴発は凄まじい犠牲と破壊をもたらしましたが、その後、私たちは〈利他の精神〉を思い出し、〈無常〉を再認識し始めています。
 この心の流れをしっかりさせ、感能力を取り戻し、皆が心の穏やかさを得られる社会になるよう祈らずにはいられません。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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