コラム

 公開日: 2012-05-19  最終更新日: 2014-06-04

「すみません」の不思議 ─隠れている道徳(その1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 私たちは、店員さんなどへ声をかける時、自然に「すみません」と言います。
 これは考えてみると不思議な習慣です。
「すみません」は「済まない」という思いを表す言葉であり、それは心が〈澄まない〉、つまり、収まらない、収束にならない、決着がつかない状態を示しています。
 トラブルが発生した際に「謝っただけではすまないと思います」と言えば、〈決着にならない〉ということですが、片方が「すみません」と言った途端、「到底、決着がつかないほどの罪を犯してしまいました」という詫びに転換します。

 では、冒頭のケースはどうなのでしょうか?
 お客さんが店員さんへなぜ、まず、お詫びめいた言葉をかけるのでしょう。
 形を横から観れば、お金を払う方が取引上は主であり、商品を買ってもらう方が感謝する立場です。
 だから、これは、取引上の言葉ではないことがわかります。
 では何か?

 それは、相手の心や時間へ踏み込む際の礼儀なのではないでしょうか。
 つまり「ごめんください」と似たケースです。
「ごめんください」は、「ご免ください」であり、何かを免じていただく、つまり、お詫びの意味が含まれています。
 
 場面をもう一度、横から観てみましょう。
 店員さんは商品を整えたり、掃除をしたり、自分の役割をこなしつつ時を過ごしています。
 お客さんはショウウィンドウを眺めて品定めをしつつ時を過ごしています。
 やがて、意を決したお客さんが店内に現れ、声をかけます。
 これは、店員さんの時間の流れの中へ、お客さんが自分の時間の流れを持ち込み、客として自分が主となる時間の流れをつくろうとしている状態です。

 取引上は、店員さんよりもお客さんの方が立場は優位といった感じがあっても、一人の人間としていのちを燃やしつつ自分の人生の時間を過ごしている人間としてはまったく対等、平等と言わねばなりません。
 それぞれの人生の時間に交わりが生じる際に、自分の意志で自分の時間のペースへ相手の時間を引き入れる方は、相手から時間を〈分けてもらう〉立場です。
 おおげさに言えば、自分の意志によって相手の人生の一部を分け与えてもらうことで、取引へ入ろうとしているのです。
 そこに、そこはかとないお詫びの意識が芽生えます。

 私たちは、こうした微かな心の兆しを「すみません」という言葉に込め、大切にしてきたのではないでしょうか。
 お詫びが表紙となっている言葉の底には、たとえ目立たなくとも、相手を人間として尊び思いやる心が、厳然として在ります。
 私たちは、「すみません」と言う時、まぎれもなく、道徳を生きています。
 俺は客だぞと威張るなどは愚かしいしわざです。
 ありがたく、はっきりと「すみません」を口にしようではありませんか。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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