コラム

 公開日: 2012-05-20  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(その100)─原発避難者の自殺─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 5月18日、福島第一原発事故によって避難生活を余儀なくされた女性が自殺した問題で、ご遺族が東電を相手取り損害賠償請求の訴訟を起こしました。
 昨年7月1日、自宅近くのゴミ焼き場でガソリンをかぶり焼身自殺をしたのは、養鶏場従業員だった渡辺はま子さん(58才)。

 以下、河北新報からの抜粋です。

「原発事故で福島市や福島県磐梯町に非難。
 その後、自宅に戻ったが、山木屋地区が計画的避難区域に指定され、昨年6月12日に新たな避難先として福島市のアパートに引っ越した。
 避難生活は気詰まりして心的負担が増加した。
 2人の息子と別居せざるを得ず、養鶏場も閉鎖されて職も失った。
 睡眠障害に陥り、うつの症状がみられた。
 原発事故に伴う避難生活が自殺を招き、相当因果関係があるとしている」

 夫である渡辺幹男さん(62才)は記者会見しました。

「女房は避難生活で苦しんだ末に死を選んだのに、ただの自殺者で終わってはかわいそうだ」
「何もかも失った悔しさを晴らすために、裁判が長引いても最後まで闘う」

 昨年4月22日に指定された「計画的避難区域」とは
「平成23年(2011)3月に発生した福島第一原発事故に伴い、政府が住民に対して、区域の指定から約1か月の間に避難のため立ち退くことを求めた区域」。
 福島第一原子力発電所から半径20キロメートル以遠で、居住し続けた場合に1年間の積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れがある地域」。
 これを読む区域内住民やその身内以外の方々は、「ああ、そうか。お気の毒に」とは思っても、実際に家を捨てねばならない方々の生活がどうなるのか、いかなる気持でその後を過ごされるのかはほとんど想像できません。
 この記事を10回読みましたが、「おいたわしい」と感情は動くものの、家も職場も人間関係も収入も失い夫と2人で過ごされたアパートでの一年を超える生活ぶりはまるで想像できません。
 睡眠障害とうつ病については、いくばくかは理解できます。
 さまざまな形でご縁になる方々の中に、同じ苦しみを抱えた方々がたくさんおられるからです。
 そこから自殺へ至る途中で次元を超えるジャンプがあったのは確かですが、その抗いがたい誘惑と爆発的な実行力は、追いつめられた心の中にマグマのように溜まっていたはずです。
 マグマを溜める心的過程も、いくばくかは想像できます。
 ご縁になる方々の中にそうした過程を観ているからです。
 それでもなお、渡辺はま子さんの気持はわかりません。

 手を合わせ、瞑目していると、「もう、いい」と凄まじい力で最後に残っているものをも擲(ナゲウ)つ決断のほどが少しは想像できます。
 しかし、そこはもう、聖なる次元です。
 その瞬間のお気持は想像を超えています。
 確かなのは、〈故人をそこへ追いやったのはまぎれもなく私たちである〉ということです。
 文明の恩恵を享受している私たちの責任は確かです。

 昨年9月、文部科学省は森林の汚染状況を初めて発表しました。
 NHKの『森林汚染の実態と除染』はこう報告しています。

「調査が行われたのは、福島県川俣町の山木屋地区で、年間20ミリシーベルト以上被ばくする恐れがあるとして計画的避難区域に指定されています。
 住民が避難した原発周辺の警戒区域や北西方向の計画的避難区域は全面積の70パーセント近くは山林と言われています。
 そのため今後、住民の帰還に向けて除染するためには、森林の汚染の実態を解明することが必要です」
「調査した地区の広葉樹林では最大で1キログラムあたり75万ベクレルときわめて濃い放射性セシウムを検出しました。
 事故の起きた春、まだ芽吹いていなかった広葉樹林では雨とともに放射性物質がリター層に沈着したのでしょう。
 木の上にある放射性セシウムは雨や落葉とともに徐々に地上に落ちていることも分かりました。
 チェルノブイリでは放射性セシウムは一年ほどで木から土へと移行し、そして再び吸収されて木へという放射性物質の循環が始まりました。
 福島ではまだ放射性セシウムは木の上やリター層に大部分が留まっており、循環は始まっていません。
 しかし今後一年から二年をかけて、放射性セシウムが土壌にまで浸透し、チェルノブイリと同じような循環が始まるものとみられます。
 この地域は山のすそ野に住宅が建てられ、まさに森林が家の裏山となり、里山となっています。
 農業や畜産では森林の腐植土を利用する自然農法が行われ、またキノコや山菜などは春や秋に豊かな恵みを住民に与えていました。
 しかし森林汚染はそこを発生源とする放射線という形でも付近の放射線レベルのバックグラウンドを引き上げる原因となっています。
 森林と密接した居住環境が除染してもなかなか放射線レベルが下がらない原因となっています」

 恐ろしい〈循環〉はまだ、序章の幕が上がったばかりです。
 これから先、山でも海でもチェルノブイリ的状況が進み、日本で起こった原発事故の実態が明らかになるまでは数十年を要することでしょう。

 私たちには、故人の心はなかなか、わかりません。
 しかし、私たちの考え方や生活の仕方が渡辺はま子さんを故人にしてしまったことは、はっきりと認識できます。
 ここに立たねば、同時代を生きる人間として、どこに尊厳がありましょうか。
 津波や地震や原発事故やその影響のただ中で生き残った私たちに課せられた使命である〈復興〉や〈再興〉も、そして真の鎮魂もここから始まらなければならないのではないでしょうか。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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