コラム

 公開日: 2012-06-06  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第106回)─落とし文(その2)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




「岩沼民話の会・語りっこ岩沼」が作られた大震災の聴き記し「おとしふみ 第二集」の前書きです。

「落とし文『二』ができました。
 落とし文『一』を見てくださった方々がいろいろ話してくださいました。
 その中にちりばめられていた『つぶやき』を『拾い文』して第二集を作りました。
 重いもの、軽いもの、さまざまです。
 何分にも素人冊子ですが目を通していただけたら幸いです。」

 以下は一部の転載と当山のコメントです。

○農家魂(60才)
 農機具も流され、田も塩害。
 でも今年はなんとかして田植えをする。
─孫におらの作った米を食わせたい─

 米は、工業製品を作るように勝手には作れません。
 四季の移ろいに合わせた作業が必要です。
 それは、四季と共に生きることです。
 だから、米を作ることは人生をかけることです。
 四季の移ろいように人間はかかわれません。
 だから、祈らずには米を作れません。
 自然を相手に祈り、働き手の無事を祈り、自然の生成力と人為の結果としてもたらされた米を大切な人へ食べさせたいと祈ります。
 ここに私たちの持つ敬虔さの原点があるのではないでしょうか。

○七転び八起き(83才)
 戦争、戦争、戦争。
 空襲、食べ物もなく、さまよった焼け野原。
 千年に一度という大震災。
─かけ抜けた80年─

 焼け野原を生き延びた方が、今度は、津波でのっぺらぼうになった故郷を見ました。
 生きものの気配もない浜辺で祈っていると「ここからどうやって立ち直るのか?」と、気持を回復させる道筋がわかりません。
 しかし、皆さんはどこかでちゃんと取り戻しておられる。
 その勁さはきっと〈体験者の強み〉なのでしょう。
 夫と二人で築き上げ、子供も孫たちも懸命に守っていた財物も事業基盤もすっかり流された光景を目にしたAさん(90代)が言われたそうです。
「ああ、せいせいした」
 この話を聴いた瞬間は驚いても、すぐに、あのお婆さんならありそうだなと思われ、素直に脱帽しました。
 ほとんどの方々にとってここまでの達観は無理でしょうが、80年の長きにわたって駆け抜けてこられた方々の心の脚力は信頼しています。

○集団移転(85才)
 おらの生きているうちに、新しい家に、入れねべな……。

 団塊の世代あたりまでは、自分の住み家を持つことが人生で達成すべき目標の一つでした。
 自分と家は切り離せない感覚がどこかにあります。
 自分がいる確かさを〈自分の家〉で確認するのです。
 だから、いつまでという区切りのないままに〈仮の家〉で過ごすお年寄りの心が不安定になるのはわかります。
 こうした点では、若い世代の方が適応力はあるのでしょう。
 家を持つのが若い人々にとって現実的な夢でなくなりつつあることは恐ろしいのですが……。

○大震災(50才)
 最後はみんな「いどご(親せき)」っていう事だ。

 避難し、助け合う中でこう感じた方々はたくさんおられたことでしょう。
 絆を声高(コワダカ)に言うまでもなく、私たちは皆、目に見えぬ縁の糸で結ばれています。
 必ずしもそう思えないのは、縁の糸を強く実感できる機会があるかないかの違いに関係しています。
 ギリギリの現場で「皆、いどご」と感じた方は、以後、人を見、人に接する時、それまでとどこか変わったのではないでしょうか。
 最近の悩みとして多い人間関係は畢竟(ヒッキョウ)、〈関係の感覚〉の問題であり、それは〈縁の感覚〉の問題でもあります。
 この方のような感覚を持てれば、ずいぶん楽になりそうですが……。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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