コラム

 公開日: 2012-06-11  最終更新日: 2014-06-04

僧侶の派遣と業者へのリベートの問題(その1)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈私たちはこうした花に恥ずかしくない生き方をしているでしょうか〉

 6月6日、新聞各紙は、僧侶派遣会社と葬儀社が、お布施をめぐり5億円もの所得隠しを行っていた脱税事件を報道しました。
 かねて、現在行われている様態の僧侶派遣は仏法を破壊する慣習であると考えており、一行者の血肉になった仏法を守る立場から、体験と感想を少々書いてみます。

 私は、托鉢行で仏道を歩み始めました。
 篤志家A氏から提供された家屋敷を修行道場とし、昼は托鉢や人生相談やご祈祷などを行い、夜は所定の修法を身に着ける勉強を行いました。
 家族もおり、一軒一軒と訪ねる托鉢と、人生相談やご祈祷でお布施をいただくだけの毎日は、家計をやりくりする妻を常に悩ませました。
 そうした中で、たまに葬儀社さんから入るご葬儀の依頼はとても家計を助けるものでした。
 何しろ、托鉢で得られる収入の5日分から10日分、まれには一ヶ月分にもなるお布施が、枕経、通夜、葬儀の三回でいただけるのです。
 もちろん、至心に祈って戒名をお伝えし、各種の魂入れも懸命に修法しましたが、いずれにしても飛び抜けた収入でした。
 だから、「又、ご依頼があれば助かる」と考えた瞬間はありました。
 しかし、それは言うまでもなく、誰かの〈死を待つ〉ことです。
 その処置をなりわいとする業者さんは別として、日々、皆さんの求めに応じて当病平癒や身体健護を祈り、他のためになり尽くそうとする菩薩(ボサツ)道では決して許されない考えです。
 だからこうした〈許されぬ希望〉は、どんなに貧しくとも心から追い出しました。
 ご依頼があれば、ご遺族の身になって対応し、ご本尊様から故人の魂にふさわしい戒名をいただけるように努力し、必ずや安楽世界へ入っていただくとの信念で引導を渡し、せめて心だけでもご遺族へ寄り添えるよう最善を尽くしました。
 お布施の金額は決して指定したり希望を述べたりせずにご遺族の常識と良識へお任せし、あるいは業者さんのご提案に心から感謝し、お布施の金額や参列者の人数にかかわらず、まったく平等に戒名をお伝えし、修法しました。
 戒名はどなたでも院居士・院大姉、ご葬儀で行う修法の長さも基本的には同じでした。
 修法へ入った行者はみ仏と一体にならねばならず、み仏の世界には〈差別〉など影もないからです。
 袈裟衣を着けて人生相談を行う時も、引導を渡す時も、心構えは同じです。
 こうした姿勢は今もまったく変わりません。

 ご葬儀をご紹介くださる葬儀社さんへお訊ねしたことがあります。
「私は托鉢行者で、お世話になる際のご挨拶の仕方がわかりません。
 どのようにお礼申し上げればよいのか、ざっくばらんにご指導ください」
 一方的に収入の機会を与えていただく形なので、お礼をどのようにすればよいのかわからなかったからです。
 ところが、これまで当山へご紹介くださった業者さんは例外なく、笑顔でこう答えられました。
「ご住職に拝んでいただければ、それだけでありがたいんです。
 余計な心配は要りません」
 だから、当山はこれまで一度たりとも、宮城県の内外を問わず、業者さんへリベートを払ったことがありません。
 直接ご遺族と話をした場合はもちろん、業者さんがお布施を代理受領されたこともありません。
 業者さんへの恩は、一心に修法し、お通夜でもご葬儀でも行うべき法話を一心に行い、後に続く年忌供養なども一心に行うことによって、ご遺族へお返しする覚悟でやってきました。
 業者さんへの直接の恩返しは、当山をご紹介いただいたご尊家様が修法に納得、安心され、業者さんへ紹介を感謝されること以外にないと考えてやってきました。
 み仏へいただくお布施はすべて、み仏のために、ご縁の方々のこの世の幸せとあの世の安心のためにと念じてやってきました。

 さて、いつからか、「僧侶派遣」という言葉が目に入るようになり、違和感を覚えつつ今日まできました。
 我が身を振り返ってみれば、托鉢行を主としていた時代の私は、現場へ派遣される時を待つ僧侶だったのか?
 でも、自分は〈待つ〉意識を持たなかった。
 あるいは少なくとも、持たないよう努力してきた。
 危ういことろで踏みとどまり、心の分裂は避けられた。
 今、派遣される僧侶の方々はどうなのだろう?
 派遣を〈待つ〉僧侶はいないのだろうか?



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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