コラム

 公開日: 2012-06-12  最終更新日: 2014-06-04

小さな子供を葬儀に参列させるか

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 最近、お子さんがご葬儀へ参列することに関するご質問が重なったので、判断の要点を書きとめておきます。
 三つの観点から考えてみます。

1 習俗によるタブー

 いわゆる〈連れて行かれる〉ことを怖れ、参列させないというものです。
 これはそろそろ脱却しても良いのではないでしょうか。
 旅立つ家族が、幼い子供を道連れにしようなどと願うでしょうか?
 それは逝く方に対して失礼でもあります。
 死者を畏れる心は大切ですが、むやみと怖れる部分は卒業したいものです。

2 死の教育

 積極的には、子供へ死を理解させ、参列という体験も併せて情操教育の一環とするという考え方があります。
 子供に理解力があり、親などの大人もきちんと話ができるならば、問題はありません。
 当山では、祖父さんやお祖母さんのために、お孫さんが写経したり感謝の言葉を書いたりして納める場合もあります。
 生まれる、死ぬといった異次元と接する時間は、子供の魂にも強く響く何ごとかでありましょう。

3 第三者としての参列

 故吉村昭のエッセイに『大人の世界』があります。
 中学一年生のおりに同級生が亡くなり、通夜に逝こうとした故人は母親に厳しく止められました。
 吉村昭の姉が子供の頃に亡くなり、教師に引率された同級生たちが焼香する様子を見た母親がとても辛い思いをしたからです。

「その同級生たちの姿を眼にした母は、必死に堪えてきた悲しみが一気につき上げ、顔を伏して声をあげ泣いた。
 それらの女児と姉のことが重なり合い、元気である彼女たちの姿に嫉妬に近い感情すらいだいたという。
『子を失った悲しみは、親にしかわからない。
 学校の先生は子を失ったことがないから、安易な感傷でお通夜に行こうなどと言う。
 S君の親を悲しませるだけだ。
 決して行ってはならない』
 母の顔には、怒りと悲しみの色がうかび、その形相に私は身が震えた。」

 数年前、中学生の息子をいじめで殺された父親が毎日、現場へ花を持ってでかけ、供養しているうちに、何もなかったかのように続いている教室の光景に我慢できなくなり、そこで暴力事件を起こし逮捕されたという事件を思い出します。

 吉村昭は、幼稚園児の殺害事件を報じるテレビについてこうも書きました。

「死亡した園児の遺体が車で火葬場に送り出される時、告別式に参列していた園児たちが、口々に
『バイバイ』
と、車に声をかけていた。
 その後もテレビで告別式の様子が放映される度に、必ずバイバイと言う園児たちの姿が映し出され、その度に私はチャンネルをまわすか、切った。
 見ているのが堪えられなかったのである。」
「私は、それらの園児を参列させた大人たちに苛立ちをおぼえる。
 恐らくそれらの大人たちは、出棺の折りにバイバイと声をかけるよう園児たちに言ったにちがいない。
 子供を失った親の悲しみがいかに深いものか、この大人たちにはそれを思いやる配慮がない。
 それをまた、テレビ会社の人たちは、葬儀の悲しみを際立たせるシーンとして撮影し、繰返し放映させたのだろう。」

 こうした面については、それぞれのケースにおいて慎重な判断が求められるのではないでしょうか。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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