コラム

 公開日: 2012-06-19  最終更新日: 2014-06-04

宗教は政治へ口出しすべきか(その2)

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 前稿「宗教は政治へ口出しすべきか(その1)」の趣旨は概ね、以下のとおりです。

 政治すなわち、数を頼りとし妥協を旨とする〈大人の世界〉において、宗教的信念を共にするグループが宗教的観点を第一にして右往左往することは、政治を政治の作法によって動かすためにプラスかマイナスかと言えば、マイナスではないかと考えています。
 それは、当然ながら、政治と宗教は拠って立つ原理が異なるからです。
 いかに高徳な宗教者であっても、優れた政治的知見を持っているとは言えません。
 いかに実力のある政治家であっても、優れた宗教的信念を持っているとは言えません。
 また、信徒一人一人の心の面から考えれば、仲間はすべて同一の本尊を信じているので一致団結した宗教的活動は自然に行えても、個々の政治的問題への理解や判断が同一であるはずはなく、一致した政治的活動においては〈本心と異なる〉場面が不可避であり、上層部の指令によって内心と行動を分裂させられるからです。
 宗教の名において心に欺瞞を生じさせるのです。
 また、宗教においても政治においても最優先されるべきは、一人一人が〈主体的に〉納得を求め信念に基づいた行動を行うことであり、宗教的縛りが政治的判断をトンチンカンなものにさせたり、政治的判断が宗教心を歪めたりしてはならないからです。
 一人一人が〈主体的に〉納得を求め信念に基づいた行動を行える日本は、その良き成果を示しつつ、理想的社会構造を持った先進国として世界をリードし得ると考えているからです。

 では、宗教者は政治へ無関心で良いか、メッセージを発する義務はないのかと言えば、そうではありません。

 はからずも、6月18日付の産経新聞は、京都大学教授佐伯啓思氏の「政治は何をするものなのか」を掲載しました。
 氏は、政治とは何かという問いを最初に発したとされるプラトンやアリストテレスの思いから現代の政治状況までを述べます。

「彼らが共通にもっていた思いは、政治とは、何か善きものを実現するための共同の活動であり、そのためには、徳をもった善き市民が政治にあたらなければならない、という考えであった。
『善きもの』とは何かといっても定義は難しい。
 しかし、『善き国家』『善き生活』という何らかのイメージは人々の中にもあり、それを明確に提示するのが、政治家であった。」
「しかし、今日の政治に人々が期待するのはもはや『善い生』や『善い国家』の実現なのではない。
 近代国家における政治は、何よりも国民の生活の確保、国の安全保障を旨とする。
 国民の生命、財産の安全確保、さらに社会保障、これが政治の第一義的な役割とみなされている。
 どうしてこの転換が生じたのだろうか。
 それは、何が『善い』とみなすかは個々人の自由だとする自由主義〈リベラリズム〉が近代の原則になったからである。
 だから、『善い生』中身は人によって違うし、それに『善い国家』のイメージも人によって違う。
 それを一つに集約することはできない、というのである。」

 氏は、アメリカの政治学者レオ・シュトラウスの主張「近代社会では政治のレベルが著しく引き下げられ」「大きな構想をめぐって争ったり、理想的国家への接近を意図するという『大きな政治』は不可能になる」を紹介しています。
 そして指摘します。

「『善き社会』のイメージを構想することは難しくなった。
 しかし、それがまったくなければまた、政治的な意志決定はささいな利害対立や利害調整に終始し、紛糾し、結局は政権構想なき政局へと陥ってしまうだろう。」

 政治が行政化し、誰も国家全体の理想像が描けなくなることを危惧しています。
 最後に提案します。

「一度は、与野党が共同して、今後の日本社会の目指すべき大きな方向について、共通化できる了解点と対立点を描いてみてはどうなのであろうか。」

 ここにこそ、宗教の出番があるのではないでしょうか。
 日本がどこをめざすべきなのかという問いは、本来、不断に問われ、現在出ている答については不断に検証され続けられるべきです。
 もちろん、現在提示されている各政党の主張にはそれなりの答が含まれているはずです。
 しかし、国民にはなかなか見えません。
 政治家も、そうしたレベルでの国民的合意を目指すより個々の政策が喜ばれることを優先し、問いがなおざりになっている嫌いもあります。
 この問いが問われるステージでこそ、宗教者が〈いのち観〉や〈幸せ観〉や〈死生観〉や〈平和観〉などについて、自らの血肉となった信念を披瀝すべきであると考えます。
 もちろん、宗教心を持った人々が宗教的信念から〈あるべき社会〉や〈あるべき国家〉についての議論を行い、行動することはとても大切です。
 しかし、そうした意見は、政治学、社会学、地政学、経済学、倫理学、医学、歴史学などをふまえた意見と共に、あくまでも国民一人一人の思考の材料として提供されるべきであり、決して宗教的権威や政治的権力などを背景に声高に主張されるべきではありません。
 私たちは、名も無き人の心の叫びと名だたる人の堂々たる主張とを平等に聴き、客観的視点からありのままに理解し、判断する精神的レベルを目指したいものです。
 ここにこそ、正しい意味でのヒューマニズムの原点があると信じています。
 無論、特定の宗教が国家権力を背景に幅を利かすようなことがあってはなりません。
 国民一人一人による、あらゆる縛りを離れた主体的判断が常に行われ、それが反映されるシステムの確保こそ健全な政治の基盤ではないでしょうか。

 結論です。
 日本における宗教は分をわきまえた姿勢を堅持し、政治権力には直接かかわらず、人々の心の支えとなりつつ緩やかに社会を見守るべきであると考えます。
 いかがでしょうか?
 賛成であれ、反対であれ、お読みになられた方々の〈主体的〉判断のたたき台となれば幸いです。 


 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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