コラム

 公開日: 2012-06-25  最終更新日: 2014-06-04

7月の聖語 ─他力と自力は拍手の両手─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 今月の「お大師様の言葉」です。

「一手、拍を成さず、片脚(ヘンキャク)歩むことあたわず。
 必ず彼此(ヒシ)の至誠によって、すなわち感応(カンノウ)をいたす」

(片手だけでは拍手ができず、片足だけでは歩けない。
 同じように、仏神へ頼むだけでなく、自らも襟を正す誠心があって初めて願いは達成される)

 明治以降、西洋文化に憧れる知識人などから、密教は祈祷の現世利益宗教であるというふうな見方が行われてきた面があります。
 しかし行者として日々、法務を行い、『密教アーカイブ』が目利き人として紹介している井筒俊彦、湯川秀樹、内藤湖南、岡倉天心、幸田露伴、菊地寛といった面々、あるいは今に生きる目利き人の代表格である松岡正剛氏などの文章を読んでみると、そうした見方がいかに一面的で皮相的であるか、驚くばかりです。
 待ち受けている深みに怖れず、素(ス)の心で踏み込んで行く人へ、お大師様の世界が開けます。
 先入見があれば、怯み、疑い、怖れ、言い訳が生じて、自分の世界に留まるしかありません。
 もしもお大師様に関心を持ち、高名な『空海の風景』(司馬遼太郎著)を読んだ方にはぜひ、さほど高名でないはずの『空海ノート』(長澤弘隆著)と『釈尊になった空海』(松澤浩隆著)も併せ読んでみていただきたいものです。
 少し古いところでは『小説・弘法大師物語』(直木三十五著)が読みやすく、再登場した『弘法大師とその宗教』(菊池寛著)もお勧めです。

 さて、本題ですが、私たちがよきことを行うためには、まず、よきことを考え、願い、実践し、思わぬ雨風に遭えば、やがて祈りが伴います。
 幼い我が子が高熱に浮かされている時、何ものかへ祈る心になりませんか?
 一心不乱に勉強してきた我が子が受験会場へでかける時、何ものかへ祈る心になりませんか?
 剛胆な性格で宮城県内の同業者に一目置かれていたAさんは、生前、戦闘機に乗って太平洋戦争を闘った体験について述懐されました。
「敵艦に爆弾を投下してから反転上昇する時が一番怖い。
 後から弾が飛んでくる中をがむしゃらに逃げるしかなく、完全に運任せ。
 生還した仲間は『お母さん!』とか、『神様!』とか、『南無三(ナムサン)!』とか思ったり、叫んだりしたものです」

 こうして思わず祈る時、私たちは我(ガ)を捨て、すがっています。
 密教には、すがる心の内容に応じて受けとめ、共に仏神へ祈る方法が確立しています。
 現世利益を軽視するむきもおられますが、なぜ、至心に仏神へおすがりすることが問題なのでしょうか。
 たとえば、自分が病気になり、より効果的な治療をしてくださる医師や病院を求める時、すがってはいませんか?
 あるいは、必ずしもほめられるものではありませんが、我が子の受験や就職や入院に当たって、さまざまなつてをたどる時、すがってはいませんか?
 人にすがり、モノや金にすがってなお、不安な時、あるいはそうしたすがるもののない時、私たちは最後のよりどころとして、目に見えぬものにすがりたくなります。
 それは、自分のためであれ誰かのためであれ、自然で、なおかつ高慢心を脱するチャンスでもある、〈まごころの動く時〉です。

 お大師様は、「まごころの動く時、自らを省みよ」と説かれました。
 決して、「ただ、すがれ」と説いてはおられません。
 我(ガ)を離れてすがる心が祈る片手なら、自分自身を省みて生き方を正すのがもう一方の手であれ、と説かれています。
 目的へ向かって歩むのが片足なら、懺悔(サンゲ)をもう片足とせよ、と説かれています。
 密教は決して単純に、拝め、すがれ、というものではありません。
 人生のギリギリの場面でこそ、自らの真姿を誠実に見直し生き方を変えよと説き、その具体的な手ほどきを行います。
 手段のベースは、空(クウ)を中心とした釈尊に始まる思想であり、身体と言葉と心の用い方には変化し発展し続ける仏教2500年の精華が網羅され、整理されています。

 至心に祈りましょう。
 そして、至心に自らを省みましょう。


 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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