コラム

 公開日: 2012-06-29  最終更新日: 2014-06-04

三十七の菩薩(ボサツ)の実践(第二十二回) ─心の本性と空─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 菩薩(ボサツ)になるための実践道、第二十二回目です。
 これは、「法話と対話の会『生活と仏法』」(http://www.hourakuji.net/manabi/houwa.html)において議論するテキストの一つとなってもいます。

「いかなる現象もそれは自身の心であり、心の本性は本来戯論(ケロン…無意味な思考や言論)より離れている。
 そのように理解して主客の諸相に気をとられてしまわない。
 それが菩薩の実践である」

 この教えは、どのように瞑想すべきかという具体的な内容です。

1 「現象」とは、私たちが目や耳など五官六根でとらえられる対象のすべてです。

 たとえば、コップがあって水道の水を入れれば口から飲めます。
 私たちはこのコップも水も見え、手に取り、確認し、飲めるので、コップも水も確かに〈そのとおりに在る〉と思っていますが、よく考えてみると、両方とも、実体は実にあやふやなものです。
 手から滑り落ちた瞬間にコップは姿を変え、役割は一瞬にして失われます。
 そして、ガラス片となったコップはもうコップとは言えません。
 水もまた、果たして本当に飲める水なのかどうか確認せずわからぬままに、昨日、蛇口から出た水と同じものに違いないと無意識に判断し、口にしているだけです。
 実際は、とんでもない物質が混じっていたとて、不思議でも何でもありません。
 そもそも、昨日、飲んだ水はもうとっくに自分の喉を通って分解されどうなったかもわからず、今、コップで受けた水は昨日の水とはまったく別ものなのです。
 
 また、水は誰にとっても同じ存在として眼前に現れているのではありません。
「一見四水(イッケンシスイ)」の教えによれば、人間が飲んだり洗濯に用いたりする水は、天界の住人にとってはその上を歩ける水晶の床、魚にとっては住む家、餓鬼にとっては燃える膿なのです。
 また、励ましをこめた「がんばってね」という一言は、聞く人によって嬉しい力づけともなり、無慈悲な刃ともなります。
 このように、現象は決して固定した実体を持ってはおらず、すべては空(クウ)です。
 そして現象をとらえる私たちのさまざまなありようによって、現象はさまざまに在り、すべては夢か幻のように思えます。

2 「心の本性」とは、私たちの心の奥底におわしますみ仏のことです。

 私たちは、み仏からそのおいのちもお心も分けいただいた〈み仏の子〉なので、いつでも、み仏そのものになれる可能性を持っています。
 み仏に成る、つまり即身成仏(ソクシンジョウブツ)するには、本性の邪魔をしている心の曇りをとり除けばよいだけのことです。
 この本性を仏性(ブッショウ)と言います。

3 「戯論(ケロン)」とは、仏性を忘れて、曇ったままの心であれこれ考え、あれこれ言い立てる私たち凡夫の日常的な思考状況です。

 仏性は空(くう)に立ち、凡夫は、空というあり方を正しく観ないで自分にこだわり、人にこだわり、モノにこだわり、ことにこだわります。

4 「主客の諸相」とは、認識する〈主〉としての自分と、認識される〈客体〉としての対象とのありようです。

 主客のありようにとらわれないとは、自分と対象と分けて認識する状態を超え、対象がありのままに五官六根へ写っている状態です。
 そもそも、自分というイメージも、対象というイメージも、そのように分ける分別(フンベツ)の心によって仮に考えられているだけであり、真実を観るみ仏の心に分別はありません。

 最近、(株)アーク・イメージギャラリーのパンフレットをいただき、カメラマン遠藤功之さんと話をしました。
 パンフレットに掲載されている日常生活の一瞬における〈人間の表情〉を撮った16枚の写真は、どこにでもいそうな人々のどこにでもありそうな表情なのに、いのちの勢いをシャワーのように発散しています。
 特に、小さなお子さんの笑顔が二つ並んでいる作品は圧巻で、思わず「後に続くこうした元気ないのちがあることを実感できるのは本当にありがたく、先に逝く者は大きな安心をいただけます」と言いました。
 遠藤さんはまっすぐにこちらを見て、「皆さん、普通の人ですよ」と微笑みます。
 俳優えなりかずきがテレビドラマ『渡る世間は鬼ばかり』に登場した頃を思い出しました。
 ホームドラマだから当然の演出とはいえ、普通の子供が普通に話しているような演技に、彼の大きな可能性を感じたものです。
 彼はきっと、自分を出す、自分を出さないといった意識のないところで、セリフを口にしていたのでしょう。
 パンフレットの写真にある人々の笑顔も皆、実に自然です。
 遠藤さんは「こうしてお話をしながら撮ったりもします」と笑います。
 冒頭の文章は一見、難しく感じられますが、実は、このように、私たちの生活のあちこちで普通に実践されているのです。

5 自分も空(クウ)、目に見え耳に聞こえるものも空(クウ)と観想し、余分な我(ガ)が顔を出さず、心が解放される時間の体験を重ねましょう。

 自分であれ、ネコであれ、車であれ、私たちは〈在る〉ものを実体視し、空であると観られないので欲しい惜しいとこだわり、苦が生じます。
 私たちは、夢が一時的な心的現象であり、夢で会った人と今、会話できないことを知っています。
 松明を廻してできる火の輪は、輪に見えるだけであることも知っています。
 同じように、今、目の前にいる人もまた、自分の五官六根に写っている一時的な心的現象であり、一旦別れれば明日、会えるかどうかわからないのに、なかなかそうは思えません。
 空である勝手に相手を実体視して愛憎を生じ、苦しみます。
 我を離れて対象と一体になる時間を大切にし、空を正しくイメージする瞑想を行い、自他共に苦を離れたいものです。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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