コラム

 公開日: 2012-07-09  最終更新日: 2014-06-04

年老いた鯉が生き続けています

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 知人のご紹介で、大きな鯉を22匹いただきました。
 急遽、横幅7メートル、奥行5メートル、深さ1・5メートルほどの穴を掘り、ブルーシートを敷いて井戸水を注入し、養殖業者さんのご協力を得て搬入しましたが、大雨で周囲から泥水が流れ込み、今度は、その内側へ二重にしたブルーシートを敷いて移すことにしました。
 これがなかなかの難作業で、仕上がるまで、ほとんど丸一日を要しました。
 特に、泥水をかき出しながらうまく敷き、鯉をなるべく傷めないよう、姿がほとんど見えない泥の中から抱えて移すのは見るからに大変でした。
 足場の悪い池に入り、泥水にパンツまでつかりながら体長約80センチメートルもあろうという大物に挑戦する鈴木さんが成功するたび、「おお」という歓声が上がりました。
 
 鯉たちはほぼ元気でしたが、最も大きな金色の鯉は当山へ運ばれた当初から体調が悪そうで、まるで溺れているようにアップアップする姿に、目にする皆が「がんばれ」と声をかけていました。
 この大騒動のさなか、動きが悪くてうまく立ち回れず、とうとう、新しい水が溜まりつつあるブルーシートの下へもぐってしまい、鈴木さんがようやく助け上げた時は、横向きに浮かんでしまう状態でした。
 ところが、二つの井戸から汲み上げた水が合ったものか、徐々に動き出し、ほぼ三時間ほどで周囲の仲間たちとそれほど変わらぬ姿で泳ぐまでに回復しました。
 作業してくださった方々は全員、金色の鯉の様子を確認してから帰途につかれました。

 ご寄進くださった方のお話では、30年以上も丹精込めて育ててきたそうです。
 きっと、金色の鯉は最も古参のメンバーだったのでしょう。
 薄暗い早朝、短期間に引っ越しを二度、行い、危うくいのちを落としそうになった鯉の無事を確かめました。
 環境の激変で最も影響を受けるのは、乳呑み児と高齢者です。
 ひときわゆっくりと泳ぐ鯉を我が身に置き換え、年配者である檀信徒・友人・知人に置き換え、合掌しました。

 それにしても、環境へ身を委ねるしかない境遇でどうやら死線を越えた鯉の行方はどうなるか?
 自分もまた、一瞬後のありようさえ、大いなるものへ身を委ねるしかないことを実感する年代になり、鯉の行方は、文字どおり他人事ではありません。

 精神科医故浜田晋の「見知らぬ『あなた』へ」が思い出されます。
 そのラストです。

「東京の老人ホームは今満員です。
 大勢空席待ちですって。
 でもいやですねえ。
 人が死ぬのを待っているなんて。
 そしてそのあとに入るなんて。

 だからあまりあばれないでください。
 『お世話になる方』にあまりご負担をかけませぬように。
 彼らも『あなた』を抱えて疲れきっているのです。
 世の中と板挟みになっているのです。
 『あなた』をとるか『社会』をとるか追いつめられているのです。
 あまりあばれると、ひどい『病院』に入れられて、すぐおなじみの『天国』へ送られるかもしれません。

 でもあなた!
 まだ死なないでください。
 ただ生きていてください。
 『生きる意味は?』と『あなた』に問う人がいるかもしれませんが──『あなた』はもう『意味』を超えたところに生きているのです。
 『普通の人』『健康な人』は、ただ生きることがむずかしい人たちです。

 『あなた』ならできます。
 『普通の人』ができなくて『あなた』にできる。
 一寸愉快ですね。
 それは『豊かな国日本』のあり方に対する最高の警告──挑戦なのかもしれません。

 『あなた』の『存在』自体が、何かへの『怒り』です。
 『美しく老いる』なんてくそくらえ!
 この『志しを忘れた国日本』の、生き証人として、『あなた』は何もせず、ただ生き続ければよいのです。
 それがすべてです。
 私もやがて『あなた』の後を追います。」

 鯉が惚けるかどうかは知りません。
 自分はと言えば、明らかに物忘れや、一度に複数の情報を処理する能力の減退は始まっていますが、医師の言う『あなた』ほどになるかどうかはわかりません。
 ただ、老いたとおぼしき鯉がアップアップしていたのにシャンとなった様子は嬉しく、医師のような人がいたのもまた、嬉しいことです。
 
 どうぞ、『金色の老いた鯉』を観にきてください。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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