コラム

 公開日: 2012-07-10  最終更新日: 2014-06-04

いじめという悪業は毒水の一滴 ─自殺した中学一年生中井佑美さんを悼む─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 平成17年に自殺した埼玉県北本市の中学一年生中井佑美さん(当時12才)の両親が国と市へ対して損害賠償請求を行っていた事件は、請求棄却となりました。
 東京地裁の判断です。
「自殺の原因がいじめと認定できない」
「同級生から『きもい』んどと言われていたころはうかがわれるが、継続的ではなく、自殺の原因となるような『いじめ』ではなかった」
「遺書からは自殺の原因が具体的に特定できない」
 結果を受け、父親の紳二氏(62才)は印象的な言葉を絞り出しました。
「いじめはコップに水が溜まるようなもので、最後の一滴によってコップから溢れ出した時に自殺が起こる。
 その一滴だけしか見ていないようだ」

 自殺した人はもう語れず、惨(ムゴ)い言葉を投げかけ、もしかすると肉体的暴力もふるっていた人々が口をつぐんでいる以上、もう、事実は明らかになりません。
 しかし、原因のない結果はなく、もしも、自殺という結果に結びつくいじめが原因としてあったとしたなら、いじめた人々は刑法上は無罪でも、決して無実ではありません。
 刑法上は罪人とされなくても、いじめの言葉を一言、投げかけた以上、人道上は罪人です。
 まして、人が死んだという事実がある以上、人を死へ追いやった罪人です。

 お釈迦様は説かれました。

「人は生まれながらにして口の中に斧(オノ)を持っているようなものである」

 自分の好き嫌いや気分次第で、言葉は相手を傷つける刃物になってしまいます。
 だから、常に、相手の立場に立つという思いやりが欠かせません。
 互いに相手を思いやらなければ、互いに傷つけ合うしかありませんが、互いに相手を思いやれば、互いに相手のためになり合え、互いに安心を得つつ向上できるのです。
 自分が傷ついて嬉しい人がいない以上、お釈迦様の教えは真実であり、「斧を持っていると知り、それを用いない」のが互いに救われる方法です。

 もしも、こうした意識がなく、愚かしいままで弱い相手へ言葉の斧をふるえば、相手がたとえ「痛い」と言わなくても、確実に小さな切り傷を負わせています。
 それは、自分が言葉の斧をふるわれたことを想像すれば、誰にでもわかるはずです。
 紳二氏が「いじめはコップに水が溜まるようなもの」と言ったのはこのことです。
 傷の一つ一つは小さくても、やがてはいのちに関わるような事態となって何の不思議もありません。

 お釈迦様は、悪しき言葉や行為や考えを毒水の一滴と説かれました。
 それが悪業(アクゴウ)であり、まさに紳二氏の言葉どおりです。

「悪業は水の一滴のようなものであり、一滴一滴は、いつしか岩石にすら穴を穿(ア)ける。
 悪業という原因があれば、たとえすぐに結果が出なくても、必ず、自他を苦しめる罪過・災厄がやってくる」

 誰かに「きもい」の一言を発した瞬間、その人は恐ろしい悪業を積んでいます。
 確実に相手を傷つけ、自分の人格へ墨を塗っています。
 相手は望まぬ苦を与えられ、自分は愚かさの闇を深めています。
 もしもその一言が、相手に結果が出る〈最後の一滴〉であるとしたなら、自分は人殺しになるかも知れません。
 たとえ刑法で裁かれなくても、明らかに罪人です。
 その一滴は、自分に結果が出る〈最後の一滴〉でもあります。
 相手は苦しみと怒りと怨みと呪いの塊となっていのちを失い、それを受け続ける自分の人生には、必ず自業自得の恐ろしい結果が待っています。
 原因があれば、いつかは結果が出るのであり、因果の法則を逃れられる人はいません。

 言葉であれ、行為であれ、思考であれ、いじめは悪業です。
 弱い者をいじめるという卑劣な心を持っているという事実は、自分に過去の悪業の結果が出ているということです。
 一刻も早く卑劣な心を追い出さねばなりません。
 それには、〈いじめられている自分〉をリアルに想像してみることです。
 たとえ今は、〈いじめる自分〉であっても、いじめという心の傾向を抱えていれば、やがては世の中で〈いじめられる自分〉になります。
 その時ではもう、遅いかも知れません。
 大人の世界でのいじめは、すぐに人生を左右してしまうからです。

 さあ、〈いじめられている自分〉はどうですか。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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