コラム

 公開日: 2012-07-17  最終更新日: 2014-06-04

徒歩参拝とオーディオのこと

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈Aさんにひざまづく思いです〉

1 Aさんの徒歩参拝

 仙台市在住のAさん(72才)は、炎天下を5時間半かけて徒歩参拝されました。
 第二回目になります。
 第一回目は、寺子屋建立の願をかけた虚空蔵求聞持法(コクゾウグモンジホウ)が成満間近となっていたやはり真夏の暑い日でした。
 ご誠心にうたれてさらに励み、おかげさまにて真言百万遍を唱える法は成満し、まもなく地鎮祭へとこぎつけ講堂が完成しました。
 今回は奥様の体調回復を祈念する修行であろうと推測しましたが、当山にとってはいかなる意味を持つのかも考えてみました。

 ちょうど、泉墓苑の納骨にでかける時刻と重なり、Aさんとはほとんど言葉を交わせませんでした。
 でも、力を振り絞って真言を唱えておられる後姿を観て、ああ、よかったと思い当たるふしはあります。

2 やってきたスピーカーなど

 大震災の後、当山に、とても味わい深いスピーカーがやってきました。
 山元町在住の音響研究家浅見薫先生の家が地震で傾き、置けなくなったので当山にご縁となったのです。
 その後、二度ほど皆さんと一緒に音楽を楽しむ機会がつくられ、小さな頃は作曲家を夢見た時代もあった私は一定の満足感を持っていました。
 ところが、ある時、長老から、本堂に大きな音響セットのあることに違和感を感じる意見が出されました。
 私自身は、一旦、袈裟衣を着ければご本尊様と一体になる修法に入り、作業姿でアンプのスイッチを入れる時は芸術の世界に身を委ねる切り替えがハッキリとできていたので、問題なく日々を過ごしてきました。
 佳い音楽で皆さんをお迎えすることの価値も実感していました。
 ただ、寺院の実情に詳しい方から、「これほどのオーディオを備えているのは、こちら様とあと一ヶ寺さんくらいですね」と教えていただいた時、傍から〈趣味〉で好きなことをしていると観えているのではないかという小さな疑問が起こりました。
 そこへ違和感のご意見です。
 考えてみました。

3 宗教の役割

 そもそも宗教の役割は、自分と同じ宗教の信者を増やして社会的な力を持つところにあるのではなく、一人一人の〈魂の解放〉と〈霊性〉のレベルアップにあります。
 その目的は、芸術やスポーツなどによっても、あるいは自分の役割に精進しても、叶えられる可能性があります。
 だから、レベルの高い音響装置で一流の演奏を聴いていただく機会をつくることは、当山なりの役割の果たし方の一つであると考えてきました。

 また、音楽の発祥は大いなる者への捧げ物だったのでないかという説に共鳴もしています。
 天照大神(アマテラスオオミカミ)がお隠れになり、世界が真っ暗になった時、女神天宇受賣命(アメノウズメ)が半裸で歌舞を行い、この世に再び天照大神の光明を取り戻したという故事は、歌や踊りと救いとの関係を暗示しているのではないでしょうか。
 伊集院静作『いねむり先生』にも、月下で踊る半裸の男三人に訪れた救済の場面があります。
 だから、捧げ物の心で音楽を楽しむことに問題はないと考えてきました。

4 皆さんの違和感

 しかし、です。
 最近、自主的な護持会である『ゆかりびとの会』の役員が集まった席で、会議などはご本尊様の前で行い、懇親会的なものは、どこかの会館をお借りするなど場を替えてやってはいかがというご意見が出されました。
 賛同の意見が出るのを待つまでもなく、直感しました。
「ああ、皆さんは、厳粛な修法の場で鳴らされる音楽に、いかがなものかと感じておられるのだ」
 すかさず、そうしましょうと意見を述べ、方向は決まりました。
 次の役員会では、大きな音響装置が撤収されており、装置を除けてくださいとは誰も口にしなかったのにそうなっていたことに皆さん、驚かれました。
 
 それから間もなく、Aさんが徒歩参拝をされたのです。
 清々(セイセイ)した本堂でAさんをお迎えできたのは、やはり、良かったと思いました。
 浅見薫先生が丹精込めたスピーカーは、きっといつの日か、別な形で皆さんと私の魂の解放に役立ってくれることでしょう。

5 感謝、感謝

 住職になるとどうしても〈ひとりよがり〉になる危険性があります。
 住職の行う判断はすべて宗教的見地から行われていますが、その見地には、行者と共に僧宝(ソウボウ…み仏と教えを信じ、守る人々)として、仏宝(ブッポウ)と法宝(ホウボウ)とを支えてくださるサポーターのお心が含まれていなければなりません。
 それを忖度(ソンタク…推しはかること)するのが住職の大切な責務なのに、〈ひとりよがり〉になればアウトです。

 『ゆかりびとの会』の役員さん方、Aさん、本当にありがとうございました。
 当山は、また、一歩、前進させていただきました。
 南無大師遍照金剛(ナムダイシヘンジョウコンゴウ)。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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