コラム

 公開日: 2012-07-22  最終更新日: 2014-06-04

なぜ新居のお清めをするのか ─ある幸せの得られ方─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈納骨堂『法楽殿』の天井画です〉

 ある町で、まだ20台半ばの青年が念願の家を手にし、入居前のお清めを依頼されました。
 内装は明るい色で統一されており、はしゃぎまわる少女の屈託ない声が着替え中の耳に入りました。
「ねえ、ベンジョって何?」
 おしゃまなそぶりをしてもまだ小学生の彼女は、集まった大人の口から未知の言葉を聞いたのでした。
「便所の敷物も良いのが見つかったわねえ」

 この地を守る仏神へのご挨拶と感謝とご供養を行い、八方天地をお守りいただく法を結び、再びの感謝と讃歎で修法は終わりました。
 途中、皆さんへお焼香をお勧めしました。
「この家とご家族と皆々様をお守りくださる仏神をご供養し、私たちへいのちと心をバトンタッチしてくださったご先祖様と、あらゆる御霊へ感謝するために、どうぞ、お焼香をお願いします」
 やがて、真新しい畳の匂いにお香の淡い香りが入り交じり、結界(ケッカイ)の中で集う人々の思いは一つになりました。
「この場で、よき未来がもたらされますよう」
 
 畳の上で車座になった面々とお茶を前にしながら、子供の頃は隠形流(オンギョウリュウ)居合の道場へ通っていた青年へ声をかけました。
「よくやったね。
 こんなに嬉しい修法をさせてもらってありがとう」
 はにかみがちに青年は応えました。
「親の願いを叶えただけです」
 ぐっと詰まりました。
 無口でひたむきな青年の精進ぶり、お母さんの苦労、少年だった彼を仙台市内の道場へ送り迎えしてくれていた叔母さんの熱心さなどが一気に胸に迫ったからです。

 夕刻、例祭での護摩法が終わり、いつも通りに短い法話を行いました。
「私たちは、だれしもが、幸せを求めています。
 今日、安全な食事を摂り、生き抜くことも、すでに幸せの範疇(ハンチュウ)です。
 食べて、着て、住み、はたらく。
 こうしたことごとに願いを持ち、確かな日々がもたらされるよう汗を流す。
 その過程に誠実さが伴っていれば、まっとうに生きられます。
 過ぎたことにあれこれとグチを言わない、自分の好き嫌いを相手構わず主張しない、自分の領分と他人様の領分を劃然(カクゼン…はっきりしている様子)と分ける、明らかなことがらと不明瞭なことがらを混同しない、などは、誠実さを高めるための努力目標です。
 それは、自他へ基本的な幸せをもたらすために欠かせず、その方向性は正しいと言えます。
 何も、因果応報(インガオウホウ)や、空(クウ)などの深遠な真理を持ち出すまでもなく、私たちは互いに幸せを求めながら正しく生きられます。
 このような導きを世俗諦(セゾクタイ)と言います。
 お釈迦様は、日常生活をまっとうに生きられるための「世俗諦(セゾクタイ)」と、まっとうな日常生活に疑問や亀裂や閉塞(ヘイソク…ふさがり)が生じた際の救いとなり、自他の人生へ深刻な破綻をもたらさないための修行ともなる「勝義諦(ショウギタイ)」の両方を説かれました。
 自分に厳しく、他人へ優しく、約束を守るなどの世俗諦をきちんと実践していれば、安心な食事や納得できる衣装や疲れをとる居住空間や汗を流して本望な仕事などがもたらされます。

 最近、お清めを行った新居の主は世俗諦の見事な実践者です。
 そして彼は、守本尊様の祈り方も知っています。
 いざという時は、きっと一段深い勝義諦が支えともなり、救いともなることでしょう。

 私たちはこれからも、両方の教えを学び、実践して行きましょう」





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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