コラム

 公開日: 2012-07-28  最終更新日: 2014-06-04

家相が悪いと生活がおかしくなるか? ─円筒形タワーマンションから紙の本による読書まで─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。








 家相(カソウ)、いわゆる家の相(すがた)に関するご相談は絶えません。
 新築にせよ中古物件にせよ、希望にまといつく一抹の不安を払拭しようと、善男善女がご来山されます。

 お大師様が、世界初の開かれた総合大学のような綜芸種智院(シュゲイシュチイン)を創られたことでわかるとおり、密教の行者は仏教だけでなく易学なども学んでいるので、伝統的な判断法はふまえた上で、以下のようなお話もしています。

 かつては、田んぼがあればおおよそいかなる位置にいかなる家を建てれば最も安心か、あるいは大道に面した店と居宅の関係はどういう形が合理的か、あるいは武家屋敷が敵の襲来にどう備えたらよいかなど、ある程度のスペースが確保された上で、住む人の目的に合わせて研ぎ澄まされた形が探求されてきました。
 そこで、理想的家相が考えられ、伝えられてきましたが、現代の私たちは、そうした時代とはほぼ反対に、〈制約された条件の中で自由に〉間取りを考える時代に生きています。

 それは、円筒形のタワーマンションを想像すればすぐにわかります。
 膨大な人口が密集する大都会で、限られたスペースにできるだけ多くの人々が住むためには、こうした形をとるのが最も合理的です。
 タワーマンションに限らず、都会では小さなアパートに至るまで、すべてが南向きのコマだけというわけにはゆきません。
 狭い日本で人口が増え、それが都会へとだんだん集約されつつある時代にあっては、居宅として確保できるスペースに最初から制約がかけられています。

 その一方で、かつては、間取りを考える際に最も優先順位が高かった神棚や仏壇と無縁の家が多くなり、最近では、和室がないのはもちろん、ほぼ全フロアが解放空間に近いイメージのお宅も珍しくはありません。
 お清めにお訪ねすると、隔世の感があります。
 独立して鍵のかかる子供部屋がよいのか、それともおる程度オープンな形がよいのか、などもさまざまに議論され、設計士たちの研究と哲学によって実に多様なパターンが提供されています。
 白地に絵を描くのと同じく自由に間取りを考えられる時代になったのです。

 こうした私たちが家の相を考える上で大切なのは、鬼門や裏鬼門がどうこうというよりも、限られた中で何を確保せねばならないかという発想です。

1 健康と安全
 たとえ南向きにリビングルームが作られなくても、風通しの工夫、光の採り入れ、温度と湿度の調整、静謐の確保、などに知恵を絞って最善を尽くすことは可能です。
 もちろん、他者の進入を防ぐための防備も欠かせません。

2 プライバシーと団欒
 前段で子供部屋を考えたように、家族といえども、互いに一個人としてのプライバシーを守りながら、かつ、かけがえのない家族としての一体感を保つ場をどう形づくるかもまた、相の大きなポイントになります。
 特に、子育てのありようにも直結するのでよくよく考える必要があります。

3 仏神とご先祖様への崇敬
 震災後は、和室がなくても神棚や仏壇の置き場を考える方々が増えてきたように感じます。
 長男に限らず、ご先祖様がおられたからこそ、仏神のご加護があればこそ、今の生活があるということを忘れずに暮らせば、心を清め安定させる強い〈心の核〉を育てられるはずです。

4 来客をお迎えする重要性
 玄関は社会への窓です。
 おかげさま、お互いさま、といった社会への感謝と奉仕の心があるかないかで、一家の運勢は大きく左右されます。
 私たちは携帯電話や各種のネットで他人とつながっているつもりになっていますが、そこで発信し、得られる情報は、人と人とが面と向かって得られる情報とはほとんど質が違うと言ってもよいのではないでしょうか。

 哲学者黒崎政男氏は『哲学する骨董』に書いています。

「読む、という行為は目と手を使う。
 一瞬で見ることもできる写真画像とは違って、書籍はどうしても一定の時間が必要であり、読み手が見て触れるための物質的接触面の必要性は、音や写真に比して格段に高い。
 紙でできた書籍は、このインターフェースという意味では、きわめて完成され尽くしたメディアだと思う。」
「日々アップデートが必要な、変化が身上の情報や、検索して使用する辞書類などは、早晩デジタルが支配するだろう。
 これに対して、著作や作品など、完成された後の変化を嫌うものは、紙という〈モノ〉に印字され、ほぼ永遠に固定されていることが必要である。
 ここにある書籍の内容は、燃えてなくなり朽ち果てるまで、同一であり、絶対に変化しないのだという信頼感。
 電子化は流動性とともにあり、この安定感を欠く。」
「カントの『純粋理性批判』を私が、デジタルディスプレイで熟読する可能性は九十九パーセントない。
 もし紙の書籍がこの世界から消えるとしたら、それは、大方の文学や思想が同時に消え去っている時だろう。」

 私も、高任和夫氏の『月華の銀橋』、長澤弘隆師の『空海ノート』、神部眞理子医師の『松籟』などをデジタルディスプレイで熟読する可能性はほとんどありません。
 それほど紙の本による読書は濃密なものですが、人と人との顔を合わせた接触にも、他の接触方法とは違った次元での濃密さがあります。
 それが薄れれば、情緒が消え去りはしないでしょうか。

 玄関は自分の好みで選んだ人にだけ解放されているのではありません。
 新たな縁、新たな未来の可能性のすべてに対して開かれています。
 その重要性を忘れずに、玄関の相を考えていただきたいものです。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ