コラム

 公開日: 2012-07-31  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい(その5) ─努力は万事を征服す─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈今年のユリに妖しく禍々しいまでの勢いを感じ、身震いするような思いで眺めているのは私だけでしょうか〉

7 「と」 努力は万事を征服す

 人の生まれつきには、多少の優(マサ)り劣りがある。
 しかし結局は努力だ。
 あくまでもあくまでも努力だ。
 努力しないで成功した人は、一人もこの世になかった。

 7月5日、将棋の羽生善治棋聖は、新鋭中村太地六段に三連勝して棋聖位5連覇を達成すると共に、通算タイトル数は81、故大山康晴十五世名人を抜いて歴代単独一位となりました。
 第三位が中原誠の64勝、第四位が谷川浩司の27勝、第五位が米長邦雄の19勝であり、ここまではベテラン勢です。
 以下、ライバルと目されている佐藤康光が13勝、森内俊之が10勝、渡辺明が9勝と続いているだけであり、羽生善治棋聖が同世代の中でいかに頭抜けているかがよくわかります。
 この歴史的一戦の観戦記を書いた記者が、ある場面で「人間にこの手が指せるのか」と驚嘆していたのが印象的です。
 それは、対局相手の中村太地はもちろん、別室で戦況を分析していた第一級の棋士たちも誰一人として予想しなかった手です。
 最前線での戦いが佳境に入り、あと数手で勝敗のゆくえが定まろうとしていた時、羽生善治は突然、戦いの中央にいた最も強い駒を自陣へ引いたのです。
 よく見ると、この一手により相手の有効な攻撃法を封じ、しかも、このままにしておけば次の一手で相手陣は総崩れになるという、将棋の神が降りたような瞬間でした。
 たまたま新聞でこの場面を目にした私は、記者の記事で指摘されるまでもなくコロンブスの卵に圧倒され、才能が持つ恐ろしいほどのすさまじさをあらためて実感させられました。
 人の生まれつきには、確かに、どうしようもないほどの「優り劣り」があります。

 一方、こうした教えに接すると必ず思い出すシーンがあります。
 私が小学生の頃は生徒の数が多く、体育館をベニヤ板でしきった急ごしらえの教室で裸電球をたよりに勉強しました。
 そんな時代、たまに全校生を集める勉強会があり、東京から来た先生の講義を受けました。
 ある先生が生徒たちへ問いかけました。
「偉くなれる人は、才能がある人でしょうか、それとも努力する人でしょうか」
 そして、それぞれに挙手を求められましたが、私は質問しました。
「どちらとも言えないのではないでしょうか?」
 結局、先生はそれを言いたかったらしく、自分に与えられた才能を伸ばす努力をした偉人たちの様子を子供たちへ教えてくれました。

 ここでは「あくまでもあくまでも努力」と強調していますが、決して「努力次第で望みは何でも叶う」のではありません。
 人には生まれ持った才能と、生きる環境という、自分を〈限定する〉条件があるからです。
 だから、望みは、自分の甲羅に合った望みでありたいものです。
「甲羅に合った」とは、亀がいくらがんばっても自分自身であり自分の家でもある甲羅よりは決して大きくなれないことから、「分相応」のたとえです。

 私は中学生の頃から政治家になって世の中を変えたいという強い望みを持っていましたが、受験の失敗をきっかけに「四十にして惑わず」と言われる年令に達するまで、迷いに迷いました。
 しかも、自分では何をいくらやってもダメで、ついに無一文になってようやく、「分相応」の意味するところを否応なく体得させられました。
 よく言われる「高転びに転ぶ」という状態になって初めて、「高望み」の愚かさを知ったのです。
「高転びに転ぶ」とは、ある僧侶が織田信長を評した言葉とされ、自力や基盤を超えて分不相応に舞い上がった者は、やがて高所から墜落するような憂き目に遭うことのたとえです。

 なぜ、努力を説く教えなのにこうしたことを書くかと言えば、若い方々に私と似たような失敗をして欲しくないからです。
 しかも、これからの日本は、このままであれば、ますます〈敗者復活戦〉に厳しい世の中になるだろうと予想されるからです。
 ノウハウものが盛んに流す〈ネットやグローバルの時代は一攫千金〉といったイメージに惑わされず、走馬燈のように現れては消える〈時代の英雄〉たちに憧れはしても、軽々に「ああなろう」と考えないことです。
 自分のいのちを養うために自分の口から入れる飲みものや食べものをつかむのは自分の手しかないという真実をしっかりイメージしましょう。
 その上での努力なら、必ずや相応の結実をもたらすことでしょう。

 仏法は正命(ショウミョウ)という正しく聖なる道を説きます。
 これは正しいなりわいです。
 正しい方法で生きることです。
 たとえば、合法だからといって脳へ異常な反応をもたらすハーブや薬を売ることは、明らかに正命ではありません。
 法に罰せられるかどうかは社会人として最低限度の決まりことを守るかどうかでしかなく、罰せられないことなら何でも正しく、許されるわけではありません。
 他人の心身を害するものを提供して私腹を肥やそうとする醜い心は、たとえ刑法による処罰は受けなくても、必ずそれ相応の人格と人生の汚れや崩れをもたらします。
 因果応報の原理からは誰一人逃れられないからです。

 正命を忘れず、人の道にそった自分なりの努力をコツコツと重ねましょう。
 羽生善治は何百年に一人、五輪の優勝者は何百万人に一人の勝者であり、彼らと同じ高みに達することはほとんどの人に不可能です。
 しかし、人の道にそった自分なりの努力により分相応の望みを達することは、ほとんどの人にとって可能です。
 望みの邪魔をするものは征服され得るのです。
 最後に、分相応かどうかは、なかなか自分では判断できず、そこに指導者や師のかけがえのない価値があることもチェックしておきましょう。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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