コラム

 公開日: 2012-08-12  最終更新日: 2014-06-04

震災後を生きる方々、生きる私 ─渡辺祥子さんの「寺子屋」講演(その1)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 東日本大震災から1年5カ月後の8月11日、あの14時26分をまたいで、言の葉アーティスト渡辺祥子さんの講演が行われました。
 寺子屋『法楽館』でのお話をメモに基づいて書き残しておきます。
 ニュアンスや言葉などの書き間違いはお許しいただきたく存じます。

「私は物語の世界を直接、皆さんにお届けしたいと願ってこうした活動を始めました。
 もともと、言葉に敏感ですぐに傷つくタイプだった私は、敏感なだけ、他の方の気づかぬところで、言葉によって喜び、励まされてもきました。
 言葉や物語に出会って感謝すると、それをどなたかへ伝えることが、恩返しと思うようになりました。」
「あれから1年5カ月が経った今日を迎え、当時の状況をふりかえってみます。
 震災直後、鳴った電話のほとんどは、仕事のキャンセルと安否確認でした。
 家庭の事情もあり、動くためのガソリンもなく、この先どうなるのか不安ばかりでした。
 オリンピックに出る男子Aナショナルチームの試合で、三浦知良選手のゴールを見て感動し、泣きました。
 私は感動を伝える人だったはずなのに、こうして何もできない人になってしまった……。
 そのことも耐えられなかったのです。
 号泣していると、母からポンと言われました。
『──バカだねえ』
 これで我に返ったなどというできごともありました。」
「4月7日に起きた大きな余震の時、私は体調を崩して検査入院しており、手術したばかりで点滴を外せず、オロオロするしかなく身動き一つとれませんでした。
 あれで、震災後どうにか頑張っていた建物や会社などが相当ダメになりました。
 私も大きな衝撃を受けましたが、翌朝目覚めて、もう逃げ隠れできないと気づきました。
 そして、被害地から言葉を届けようと決心しました。
 ある意味で自分のスタートラインだった童話『星の子物語』を録音できたのは、大震災から49日に当たる4月28日でした。
 5月11日に行われた南三陸町の追悼集会へ参加し、9月11日まで毎月、欠かしませんでした。
 宇部市に始まった講演会は、これまで、全国50か所で行うに到りました。」
「被災された方々と言葉を交わしているうちに、ユーモアが持つ価値の大きさを知らされました。
 たとえば、大損害を受けながらも立ち上がった方が『俺は10億円かけてダイエットしたぞ』と言われます。
 たとえば、避難所暮らしをしている旅館の女将さんが『泊まって行きなさい』と言われます。
 厳しい現実と自分をちょっとした距離感と共にとらえなおす時、笑いが生まれ、悲しみや辛さが薄れます。
 また、立ち上がる強さも教えられました。
 たとえば、63才で仕事を再開した方が『僕は、この年になってまた初めからやる気力と体力が残っていたことを、ついているなあと思っています』と言われます。
 たとえば、ある社長は『あの惨状を見て、これからは決して声を荒げて怒らないと決心しました』と言われます。
 私は、皆さんの印象的な言葉をいただいているうちに、ふと、思いました。
『もしかすると、被災地で強く生きる方々の力を被災地以外の方々へお届けできるのではないか』
 そして、動きたい、言葉を届ける仕事をしたいと強く願って宇部市の方へ連絡をとったのです。
 返事はこうでした。
『あなたは藁にでもすがりたい思いでおられるようなので、私が一本の藁になりましょう』
 これが宇部市から始めた理由です。
 ありがたいことに宇部日報社さんに連載をさせていただき、そのうち、岩国ロータリークラブから被災地へ立派なトラクターが寄贈されるというできごとも起こりました。」
 
 当山は、平成12年、仙台市旭ヶ丘青年文化センターにおいて、寺子屋建立を旗印とする『春風コンサート』を行いました。
 その時、『すべてを超える翼』という雁が海を渡る物語の朗読してくださったのが渡辺祥子さんでした。
 物語へかける熱意の深さに「心の伝道師になったらいかがですか」と余計なことを口にしたところ、「和尚さんが伝道師なんて言っていいんですか」と突っこまれたのが昨日のできごとのように思い出されます。
 今の渡辺祥子さんは、鋭いアンテナを装備した録音機であり編集機でありスピーカーであるような気がします。
 心へ留め、発信する、そしてご本人は空(クウ)。
 いわば無色透明の〈役割〉そのものに成り切り、〈役割〉を果たしたいという熱意だけを発信する時、波紋のように人の輪が広がりつつあるのでしょう。
 そのあたりの様子は次回に。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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