コラム

 公開日: 2012-08-21  最終更新日: 2014-06-04

『津波のあとの時間割』を観て ─石巻・門脇小学校の生徒たち(その2 青池憲司監督の言葉)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。







〈山形県在住の方が手作りのストラップをたくさん送ってくださいました。描かれているのは兎野にある当山のキャラクターラヴ姫です〉

〈山形県在住の方が手作りのストラップをたくさん送ってくださいました。描かれているのは兎野にある当山のキャラクターラヴ姫です〉

 前回、書き残したことがあります。
 それは青池憲司監督の言葉についての感想です。
 監督は、上映後の挨拶で率直に述べられました。

「被写体となる被災者の方々へ、ある種の引け目を感じつつの仕事でした。
 私も撮影スタッフも、現地の方々のように被災を体験してはいないからです。
 だから、目的を持った作品として、撮らせてくださった方々に受け容れてもらえるだけの表現ができているかどうかを厳しく問いながらの製作でした」
(これは録音から起こした文章ではなく、私の記憶による要約です)
 
 監督は、今回に限らず、ドキュメンタリーものの製作についてはいつも〈引け目〉を禁じ得ない旨の発言もされました。
 それは人生相談を受け、法話や説法として恥じつつ言葉を紡いでいる身としてもよく理解できる感覚です。
 監督のお気持にはいくつもの要素があるものと推測されます。
 ──たとえば。

1 被写体の存在という絶対的で厳粛な真実に対してただ観る・撮るという立場で接すること
2 目にする真実の圧倒的な力へ小さい自分の表現力で立ち向かうこと
3 手を差し伸べたい気持に負けず、映像のプロとして真実に迫ること
4 被写体に対して無責任でない結果を追究すること

 ブログ「映画『黒い雨』を観ました」に関するお便りの一部です。
「広島の原爆に爆心地から1.1KMで被爆し、兵舎の中から掘り起こされ蘇生したとき、周囲には戦友の屍が祖父を護るようにして折り重なっていたそうです。」
 こうして九死に一生を得たAさんの祖父。
 戦友たちのおかげで原爆にいのちを断たれなかった祖父の戦後があり母が生まれ、やがてこの世に生を受けたAさんは述べられます。
「先人の無念を昇華すべく生きることは、小生にあっては義務なのだ」 
 今、Aさんは祖国を護るべく、銃を持たずほとんど報道もされない不断の戦争へ身を投じておられます。

 Aさんの文章を繰り返し読みながら、被曝体験から遠い私は引け目を禁じ得ず、ただAさんの思いに想いをはせ、Aさんのために祈るしかありません。
 それでもまた、人生相談や法話の中で戦争・原爆・生・死をとり挙げます。
 ──自分に以下の三つを命じつつ。

1 恥を忍ぶこと

「恥を忍ぶ」とは何と大きな救いをはらむ言葉でしょうか。
 恥にただ耐えるのでなく、恥を振り払うのでもなく、恥じつつ恥に押し潰されず恥じたまま恥を堪(コラ)えて行うこと。
 愚かしい自分の救いはここにしかないとすら思えます。

2 目的意識を揺るがせにしないこと

 菩薩(ボサツ)を目ざす永遠の未熟者は、恥じつつ行う以外、生きる道はありません。
 画家であり詩人でもあった故船田玉樹は『目のなき魚』を詠みました。
 生来身体が弱く、終戦間際に除隊となり広島県へ帰った詩人の昭和23年における心模様です。
「海そこに
 目のなき魚の住むといふ
 目のなき魚のかなしやと
 ひとのうたへるうたよみて
 われもかなしと思ひたりしよ

 わがこのごろのうたごゝろ
 おのれひとりのひとりごと
 目のなき魚の岩かげに
 籠もりて泣くに似てあれば
 かのうたびとのうたひたる
 うたにならひとわれもまた
 目のなき魚のかなしやと
 声をあげてうたふなり」

3 勇気をふるい起こすこと

「やればできる」は若い人の世界、「やれるところまでやる」のが老人の世界です。
 遠からず死を迎える者は、自分なりにやり切るしかありません。
 どこまでかはみ仏の定めるところであり、勇む気力の果てた時、この世での役割を終えるだけのことです。

 監督が暑く薄暗い会場で吐露された「引け目」を自分なりの節操の根拠としつつ前へ進みたいと念じています。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ