コラム

 公開日: 2012-09-01  最終更新日: 2014-06-04

映画『3月11日を生きて』─石巻・門脇小・人びと・言葉─に想う

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 DVD『3月11日を生きて』を観ました。
 石巻・門脇小学校の教師と生徒にとって、3月11日から12日朝まではどのようなものであったかが証言されています。
 映画『津波のあとの時間割』とセットになった貴重な資料です。
 その一部を書きとめておきます。
 記憶によるので記述には不正確な部分があるかも知れません。

 まず、5年生の男子生徒が登場します。
 彼は地震に怯えて泣き、日和山へ避難してなお、泣きました。
 父親に「お母さんはきっと生きている」と言われ、信じようとします。
 三日目に母親が足を泥だらけにしてたどりつきました。
 瓦礫の中を渡波(ワタノハ)から歩いて来たのです。
「僕を抱きしめてくれた。泣いていた。僕は安心して嬉しかった」
「この震災で僕たちはたくさんの人から助けられている。皆さん本当にありがとうございました」
「震災から五ヶ月が過ぎ、僕たちは今、幸せに暮らしています」
「僕はあの日あの時のことを忘れられない。忘れない」

 生徒たちの「その時」の様子。 
「お父さん、お母さん、助けてという声で教室が割れそうになりました」
「何もかもこれから崩れて行くような気がしました」
「お父さん、お母さんはどこにいるのだろうか。弟などはどうしているのだろうか」
 こうした雰囲気の中、違う受け止め方をしている生徒もいました。
「机の下に隠れて笑っていました。揺れが強くておもしろかった」

 校長先生と教頭先生は、揺れがおさまらないうちに、すぐ校庭へ、そして近くの日和山公園へと避難する指示を出しました。
 生徒224名と教師19名、それに、学校へ避難してきた住民も一緒に「上がれ、早く上がれ」と声をかけ合って日和山へ上りました。
 この時、一人の生徒も漏らさず避難させるよう、普段は先頭に立つ校長先生が「いのちより大事な」USBメモリを持って最後尾につきました。
 日和山公園では、雪と寒さの中、男性教師が抱えて上った大きなブルーシートを生徒たちの頭上へ広げました。
 6年生の生徒がシートの端を握り、年少者たちを守りました。
 ある教師は一連の行動をふり返ります。
「地震が来たなら校庭へ避難し、津波に備えて日和山をめざすという行動は、一連の流れとして訓練されていたので、スムーズに逃げられた」
 校長先生も、学校の立地条件に見合った独自の防災訓練をしていたと言います。

 一方、教頭先生を含む3人の教師は、避難所に指定されている学校へ逃げてくる人々への対応のため、残りました。
 車が続々と到着し、下校途中から戻ってくる生徒や保護者や地域住民を誘導していた教頭先生は、「得体の知れない大きなものが近づいてくる気配」を感じ、津波であろうと察知しました。
 もう、日和山をめざす余裕はありません。
 皆、早く校舎へ逃げろと叫び、急いで歩けない病気持ちの方や脚の不自由な方も、皆で抱えるようにして二階から三階へと上りました。
 体育館のひさしの下で地面に座り、もう私はここにいますからいいですと諦めかけていた人々も、皆に救われました。
 たちまち、あたり一面は海に変わり、校舎の二階から上は孤立しました。
 そこへ、日和山方面から助けに来てくれた人々がありました。
 机を並べるなど、いろいろ工夫して校舎から山側へと脱出する途中、先に行った子供から「お母さんも、早く!」と急かされても後に続く人を思い、若い自分が逃げる前に何かお手伝いしておきたいと逡巡する母親。
 山側から「おばあちゃんも、早く!」と急かされても、「私は大丈夫だから、途中で水に落ちそうになっている人を先に助けてください」と叫んだ年配婦人。
 ギリギリの場面でも人々は冷静に助け合い、午後4時過ぎ、ついに学校から日和山への避難が終わりました。

 先に日和山公園に着いた一行は、さらに上の鹿島御児(カシマミコ)神社めざし、社務所へ入れてもらいました。
 校長先生はようやく「ここまで来れば大丈夫」と思いました。
 4時半頃になって教頭先生などの一行がずぶぬれで到着し、無事の再会を果たしました。
 校長先生は一言。
「本当に嬉しかった」

 暗くなり、雪と寒さの中、保護者への引き渡しを行いました。
「ああいう時に何が一番必要かといえば、名簿でした」
 全校生徒が記録されている名簿を持っていた先生が一人おられ、それを学年別に引き裂いてペンを調達し、一人づつ確認しながら引き渡しました。
 女子生徒。
「泣いている子がいたので慰めていたら、突然、父親から自分の名前を呼ばれ、思わず抱きつき、泣き叫びました」
 残った40名ほどの生徒と教師22名で石巻女子校へ行き、最後に石巻高校へたどり着きました。
 会議室を借りて一夜の宿としましたが、大声で泣く子もいなくて健気でした。
 男子生徒。
「とにかく今日を乗りこえようと思いました。次の朝も、今日を乗りこえようと思いました」
 男性教師。
「全員の引き渡しができないのでこの先がわからなかった。一夜だけは感情が先に立っていましたが、翌朝、起きると仕事モードになり、何をすればよいかと考えました」
 教師たちは自分の個人的事情を脇へ置いてはたらきました。
「自分の子供も生きていてくれたらいいな」
「家族もきっとだいじょうぶだろうな」
「まず、眼の前の子供たちのことを……」
 石巻高校での避難生活は10日間、続きました。

 あらためて「あの時」をふり返る生徒たち。
「あの時は、一番、助け合いました」
「避難していてもらった一本のソーセージを分け合って食べましたが、なぜかとてもおいしかった。外は火の海でした。それまで気づかなかった幸せもたくさん見つけました」
「神様がいてもいなくても、神様に頼らずしっかり生きて行ける人間になりたい」
「友だちがいてすごく幸せなんだなと気づいて、楽しく過ごしています」
 
 子供たちは実に健気で、生命力にあふれています。
 インタビューに答えるどの子供も、年令より遙かにしっかりしている感じがします。
 先生方はよくぞ救い、守ってくださった。
 子供たちがまっすぐに成長すれば日本は大丈夫。
 やがては日本を救って欲しい。
 ──邪険でない温かな人、無責任でない恩を感じる人、恥を知る誠実な人になって………。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ