コラム

 公開日: 2012-09-05  最終更新日: 2014-06-04

いじめている人、いじめられている人へ贈る言葉は?

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 高校生からいじめについて訊ねられ、最後にこう求められました。
「いじめている人、いじめられている人へ贈りたい言葉はありますか?」
 グッと窮しました。
 親の責任や社会の問題など、さまざまな面の問いへはすぐに答えられていたのに、どうしても言葉が出ません。
 これには、私自身が驚きました。
 しかし、これまで人生相談に来られた方々を思い出し、自分の子供時代をふり返っても、本心から皆さんへ語りかけたい言葉が出てきません。

 5秒、10秒が経過し、真っ白になった頭の中で問いとは別な思考が渦巻き始めました。

「一般論で有効な言葉と、個別具体的な現場で有効な言葉は違う。
 お釈迦様の対機説法は何と不可欠だったことか……。
 初めて対機説法の深い意義を知った。
 仏教行者の歴史は一面、お釈迦様の対機説法から一般論を導き出す作業だった。
 そこで精緻な推論が行われたが、教えによって人を生かす対機説法の現場から遠ざかった時、仏教離れが起こったのではないか。
 お大師様が世界史に屹立するレベルの哲学を打ち立て、天皇の帰依まで受けていながら、四国八十八か所などに明らかなとおり庶民から慕われ続けてきたのは、托鉢や説法に歩き、対機説法を欠かさなかったからではないか。
 日本でも、インドから最後の仏教が伝わったチベットでも、現代科学と対論できるほどの仏教哲学はできている。
 宗教が戦争を生む時代に私たち行者へ求められているのは、地道な対機説法ではないか」

 しばしの沈黙があり、正面で待っている若い瞳へ語りかけました。

「今までお話ししてきたのは、一般論です。
 一人一人へ話すのは、人生相談に対応するようなものです。
 その場合、相手は人が違い、状況が違い、真に必要な対策もまた千差万別です。
 そこでは必要な言葉が千差万別であるだけでなく、まなざしや沈黙すら必要不可欠であるケースもあります。
 一般論はほとんど通用しません。
 だから、残念ながら、未熟な私にとって、全員へ有効と思われる言葉は見つかりません。
 先の人生を考えてみなさい、相手の身になってみたら、あるいは、上がらない雨はありません、み仏は必ず観ておられます、などの言葉が、いじめの現場にいる子供たちの心へ大きな力を伴った形で届くとは思えないのです。
 いじめが起こる社会的要因、心理的要因、一人一人の心の成り立ちやはたらき方などについて、ここまでお話ししましたから、あとは皆さんの新鮮な感性で、その真理を表現する言葉を見つけてください。
 同じ世代のあなた方の言葉こそ、いじめに悩む同輩の心へ染み入るのではないでしょうか?
 たとえば、いじめの原因が社会にもあることについては、『君だけが悪いのではないよ』『一人だけで背負わないでください』など、いろいろ出てくることでしょう」

 あらためて、自分があまり〈標語〉を信じていないという事実を知りました。
 確かに、ともすれば標語を口にして事足れりとし、その有効性をすっかり信じこんでいるような状況にはずっと懐疑的でした。
 標語に一定の有効性があることは認めても、〈それで良い〉のでなく、〈それが万人に有効〉なのでもありません。
 当山が「この世の幸せとあの世の安心のために」と掲げているのも標語ですが、当山はそこにすべてをかけており、それをいわゆる寺のあり方などと一般論化するつもりは毛頭ありません。
 だから、私がいくら真剣に考えても、確信と誠意を伴った言葉はついに浮かびませんでした。
 むしろ、標語とは正反対の対機説法の価値を教えられた貴重な時間となってしまいました。

 待っていた高校生さんには、対機説法の件は話しませんでした。
 誠意に満ちた彼らはきっと、夕べから、仲間のために、確信の持てる言葉を真剣に探し始めていることでしょう。
 そして見つけることでしょう。
 頑張れ!
 私はじっとご加護を祈っています。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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