コラム

 公開日: 2012-09-27  最終更新日: 2014-06-04

子や孫のためにふり返っておきたい先人の導き(その24) ─偉人・ホームレス・思いやり─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





24 「ゐ」 偉人には僕がなろう
 偉人を特別の者と思うな。
 誰もはじめから偉人ではなかった。
 諸君の中からも多くの偉人が出るはずだ。
 否!「僕がなろう」と志せ!

1 思いやり・現場・志

 ホームレスとなった方々のみが販売する『ビッグイシュー日本』という新聞があります。
 月に二回発行されるこのストリートペーパーは創刊9年目になりましたが、そもそもは、平成3年、イギリスのゴードン・ロディックとジョン・バードがロンドンで売り始めたもので、今では、世界中で売られています。
 平成2年、大企業を主催するゴードン・ロディックはニューヨークで『ストリート・ニュース』という新聞をホームレスから買い、事業化しようと思い立ちました。
 社内調査では不評でしたが、詩人同士の交わりをしていたジョン・バードへ独自の調査を依頼します。
 一時は自らもホームレスだったジョン・バードはまず、ホームレスとなった人々との対話から検討を始め、「物乞いをするくらいなら、何でもする」という言葉に深く共鳴し、「仕事は人々に平等を与える一番のツール」であると確信して、その社会的必要性に応えねばと考えました。
 こうして始まった新聞は、社会の人々にホームレスの世界を知ってもらうのではなく、他の新聞と同じく、世界で起こっているできごとを新鮮ななスタイルで報道しています。
 ホームレスの人々は普通の事業に携わるのと同じく自主的に参加し、規律を守って努力しながら社会復帰をめざします。

 それぞれが事業者でありながら詩人でもある二人のホームレスへ対する思いやりがすべての始まりでした。
 そして、決して望まないのにホームレスとなった人々の心そのものに触れることが、社会的使命感を奮い立たせました。
 もちろん、希望的観測などでなく冷徹な計算がなければ事業は始められませんが、まっとうな仕事であれば、その根底には誰かのために「やらねばならぬ」という志があるはずです。

2 ダライ・ラマ法王の励まし

 ダライ・ラマ法王の言葉が『ビッグイシュー日本』に掲載されました。
 お釈迦様の説法にかけた放浪生活をふまえ、亡命者でおられる法王はホームレスであることの意味をどう考えるかという質問への回答です。 

「困難な状況に直面している人々と会った時は必ず、私は次のようなことを話します。
 多くの困難が眼の前に立ちはだかっていたとしても、一人の人間としての誇りを持ち続け、前を向いていかなければならないと。
 困難にくじけ、誇りや希望、願いを完全に失ってしまえば、困難から逃げることはできず、そしてその困難は、本物の絶望へと変化していきます。
 ですから、希望と決心を胸に抱き続けることは、何よりも重要なことなのです」
「絶望は何の役にも立ちません。
 どれだけ状況が困難なものであっても、自信と信念を持ち続けなければならないのです」

 また、孤独を体験しておられる法王からのアドバイスはないかとの問いへ答えられました。

「個人的にですが、『私はチベット人だ』とか、『私は仏教徒だ』などと自分自身を意識した時、それらの言葉によって距離が生まれてしまいます。
 そこで私は自分自身にこのように言います。
『そんなことは忘れてしまえ。私は人間で、70億人の一人に過ぎないのだ』と。
 そう言ってしまえば、私たちの距離はとても近いものになります。
 みなさんが『私は貧乏だ』とか『ホームレスだ』『みんなとは違った境遇にいる』と思ってしまうと、そのために、互いの違いを際立たせることになります。
 そうすると、自分が不幸だと感じる境遇を抜け出すことはできません。
 確かにそれらは、現実です。
 けれども、自分は70億人のうちの一人なのだということも、もう一つの現実です。
 こう考えてみると、現実的な助けにはあまりならないかも知れませんが、精神的にはあぢぶ救われるのではないでしょうか」

 チベットの最高指導者が〈孤独〉であることはなかなか納得できないかも知れません。
 しかし、一人で生活している人だけが孤独なのではありません。
 法王のように頂点にいる人は、一人しか立つスペースのない山の頂上で足を踏ん張っているようなものであり、雨にも風にも自分で耐えるしかなく、耐えられなくなれば自分で降りるか、もしくは倒れて堕ちるしか道はないのです。

 ホームレスの方々を勇気づけるこうしたレベルの言葉を掲載し、読者をも救済する事業が思いやりから始まった事実の持つ意味をあらためて考えさせられます。

3 思いやりで生きよう

 偉人になることは、権力者になるとか、有名人になるとか、周囲から誉めそやされる人になるという意味ではありません。
 いわゆる偉人と言われる存在には〈結果的になる〉のです。
 では、ここで説く「僕がなろう」とはどういうことか。
 それは、こういう意味です。

「自分にある思いやりの心を、僕は決して放置しない。
 思いやりの心が命じることを、僕は僕自身でやり通す」

 たとえば、偉人の代表格である野口英世博士を考えてみましょう。
 博士は世界中から賞賛され、その死は、各国の新聞で一面にとりあげられたほどでした。
 博士の評価における第一の要素は、科学者としての科学的成果そのものもさることながら、〈科学者として誠意を貫き通した〉ところにあると考えています。
 当時、最も恐れられていた黄熱病の研究を行うため、病後の身体をも省みず遺言状を作ってまで南米へ入った博士は、ついには罹患してガーナの地で果てました。
 すでに名声が世界中にとどろき、世界最高水準のニューヨークのロックフェラー研究所にいるにもかかわらず、船員さえも近寄りたがらない危険な南米へと駆り立てたものは〈放っておけない〉という心だったのではないでしょうか。

 誰の心にも、思いやりが宿っています。
 それは持って生まれ、親や周囲の人々から思いやりをかけられることにより、必ず育っています。
 そして、それを大きく伸ばして自他へ本当の喜びをもたらす主人公は自分です。
 自分へかけられた思いやりという恩へ応えるべき人もまた自分しかいません。
 野口英世は、どこへ行っても「私は教えにきたのではない、習いにきたのだ」と謙虚さを忘れず、恩を忘れませんでした。
 ダライ・ラマ法王も、野口英世も、思いやりの心と一つになって生きたからこそ偉人です。
 決して有名人だから偉いのではありません。
 大いに憧れ、一歩でも近づくために恩を忘れず、思いやりの心で生きましょう!!



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ