コラム

 公開日: 2012-10-07  最終更新日: 2014-06-04

ひたむきな人々 ─大滝秀治、高倉健、そして……─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈とある喫茶店3〉

 役者大滝秀治氏が亡くなった。
 若い頃に左の肺を失い、耳が遠く、腰痛を持ち、肺ガンにもかかりながら87才まで演じ続けたとは。

 遺作となった映画『あなたへ』では、高倉健を小さく見せるという場面もあった。
 古びた漁師小屋の奧で、どっかと腰を下ろし、大股を開いたまま、遺骨を海へ撒くために船を出してくれと頼む高倉健の願いを聞く。
 そして断る。
 高倉健は、亡き妻が夫を遺書で故郷まで導いた意図がわからず、逡巡を抱えたままでいた。
 大滝秀治には、漁港の人々と共に泣き、笑い、耐えつつ生きてきた年輪があり、船主として船出にかかわる精細与奪の権がある。
 こうした役柄上の演出によるのは当然にしても、相手の心に迷いを観てとり、申し出をはっきりと断る大滝秀治の存在感には、神のごとき絶対性があった。

 人生には、自由意志や運の良し悪しなどという言葉を持ち出させないほど〈そうでしかあり得ない〉選択の場面がある。
 嫌だとか、辛いとか、悲しい、などの言い訳を許さない、その人がその人であるために動かせない道へ進むのである。
『あなたへ』を彩るのは皆、そうした人々である。
 大滝秀治、高倉健はもちろん、獄囚となった好きなを失い、「貴方の時間を止めないでください」と言ってくれた高倉健にすがる田中裕子。
 妻を失い、種田山頭火の句集を友とし、車上荒らしをしながら放浪するビートたけし。
 妻の不倫を知りつつ、出張販売に精を出す草彅剛。
 自分の保険金で妻子の暮らしを立て直すために、自分を死んだことにした佐藤浩市。
 夫の生存を知りつつ、港町で商売をしながら我が子を育てている余貴美子。

 誰もがひたむきだ。
 こらえつつ、〈そうでしかあり得ない〉人生を歩んでいる。
 大滝秀治も、高倉健も、皆がひたむきな人になりきって銀幕を生きている。

 演じているうちに、ひたむきさは、もう、役者そのものに染み込んだのではないか。
 あるいは、まれに見るひたむきさを持った人々だから、ひたむきな役を演じてこられたのか?
 それは、素人にはわからない。

 小説や映画ならぬ私たちの人生にもまた、〈そうでしかあり得ない〉選択の場面が訪れ、〈そうでしかあり得ない〉がやってくる。
 ひたむきに生きていれば、そこを外さず、おもしろおかしかろうが、そうでなかろうが、その先もひたむきに生きていけるはずである。
 ひたむきさが重なれば人生は重くなる。
 その人の存在感とは畢竟、この重さに他ならない。
 権力や財力や知名度などとはまったく無関係である。


〈『生きる』よりお借りして加工しました〉

 大震災の被災地を撮った写真集『生きる』に一枚の写真がある。
 津波から助けられなかった母親の遺体が眠る瓦礫の山を前にして泣く平塚義勝氏(当時66才)である。
 母親を大切にし、家族を大切にしながらひたむきに生きてこられたからこその涕泣(テイキュウ)に違いない。
 悲しみに感情を揺すられるよりも、背景となっているひたむきさ、人間としての存在感に圧倒される。
 
 高倉健は大滝秀治を見習うべき先輩として仰いでいた。
 私も、会ったことのない平塚義勝氏のひたむきさを見習いつつ生きたいと願う。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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