コラム

 公開日: 2012-10-13  最終更新日: 2014-06-04

一月万水 ─み仏の月光と映し出す湖水─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 一月万水(イチゲツバンスイ)という言葉があります。
 天空に照る月はたった一つだけれど、海、湖、池、あるいは水たまり、どこであれ、無数の静謐に澄んだ水が皆、その姿を映していることです。
 それは、たった一尊のお慈悲の光が万人を照らし続けているのと同じです。
 こうした真実に気づくか否かは、私たちの心が光を映しとれるだけ穏やかで清浄であるかどうかにかかっています。

 深山にいたおり、散り敷き、舞い降りる花びらが目に入って見上げたら、競い合うように茂る樹々の上へと伸びている一本の山桜が木の葉隠れに見えました。
 私たちは、花びらを見れば、たとえ樹木そのものはよく見えなかろうと、桜の樹木があることを確信します。
 目の見えない方は、もしかしたら、香りや気配だけで桜の樹木に気づくかも知れません。
 肝腎なのは、心を澄ますことです。
 では、どうやって?

 仏道修行はその一つですが、もちろん、方法は、まっとうな人の生き方の数だけあります。
 Aさんは、20年座禅してもよくわからなかったけれど、ある音に浸った時、心の平安を得たと言います。
 Bさんは、愛憎の渦でもがき苦しんでいた時、かつて聴いたお不動様の真言が心に浮かび、夢中で唱えているうちに、脱出できたと言います。
 Cさんは、人生を深く悔い、夫婦して生前戒名を受けてから生活が驚くほど穏やかになったと言います。
 皆さん異口同音に言われます。
「脱してみれば、あれほど苦しかった葛藤が、一体、何だったのかと思えるほどきれいさっぱり、あたかも最初から無かったかのように消えています」
 厚い雲を抜けて上昇した飛行機から雲海を見下ろすのと同じ体験は、私にもあります。

 ダライ・ラマ法王は、一つのヒントを示されました。
 怒りは最も激しい心の激流であり、元警視徳永重正容疑者(86才)による隣人殺人事件に類する隣人トラブルが続発している現在、とても参考になるものです。

「私とは誰なのか。
 今現在、傷つけられているこの者は誰であるのか。
 相手とは何なのか。
 傷つけつつあるその人は肉体であろうか。
 それとも心であろうか」

 この教えは修行の一部として示されたものですが、私たちがつまらぬことでカッとなった時、一呼吸おき、こう、問い尋ねてみるのは頭を冷やすとても有効な方法です。
 私はかつて、夫婦げんかが始まると、激高する妻の言葉を聞きながら、黙って考えたものでした。
「何がこう言わせているんだろう?
 自分に原因は無かったのか?
 これは、み仏のお試しではないだろうか?」
 そうすると、自分の口からは、必要最低限度な言葉が静かに出ます。
 こんなことをやっているうちに、〈心の湖〉が取り戻せるものです。

 また、説かれました。

「私たちの心の中には、二つの異なった方向の心理があります。
 一方には怒りや執着があるのに対し、もう一方では、公平さ、満足、愛、同情などがあります。
 しかし、同時に一つの対象に対して、執着と怒りを持つことはできません。
 時間的に前後して生じることができるだけです。
 たとえば、今日の敵は明日の親友ともなりえます。
 このことは国際政治の場面でも、プライベートな関係でもしばしば見られるところです。
 このことは、これら二つの方向の感情が、同じ対象を相容れない仕方で捉えている、ということを示しています。
 このことは、これらの心理のうち、一方のものが増大すれば、もう一方のものは減退するということを示しています。」

 空(クウ)を理解すれば、慈悲や謙虚さなどの善なる方向へと心はつくられ、ものを実体視する誤りから抜けられなければ、怒りや自惚れなどの悪しき方向へと心はつくられて行きます。

 先ほどのAさん、Bさん、Cさんに共通しているのは、自分への執着心が薄れているということです。
 それとは気づかぬうちに、空(クウ)の感覚と空(クウ)の視点がはたらき出しておられるのではないでしょうか。
 善なる方向へとつくられた心が穏やかで清浄な湖となり、み仏の月光を映し出しておられるのではないでしょうか。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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