コラム

 公開日: 2012-10-14  最終更新日: 2014-06-04

東日本大震災 ─東北関東大震災・被災の記(第115回) 前石巻市立門脇小学校校長鈴木洋子先生の講

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 10月13日の寺子屋『法楽舘』では、「東日本大震災─その時学校は─」と題し、 前石巻市立門脇小学校校長鈴木洋子の講話をお聴きしました。
 断片的なメモですが、その真実を記録しておきます。
 
「津波の後、4月になり、声が出なくなった。
 4月15日の卒業式は大変な思いをしながら、マイクに頼り、乗り切った」

「焼け焦げた屋上に掲げられている『すこやかに育て心と体』は津波の前のものだが、今も燦然と輝いている門小の理想である」

「石巻港から出荷される伊達南部藩の米は、江戸に集まる米のうち、3分の1から2分の1を占めるとまで言われていた。
 こうした伝統のある町を背負って行く人になるのだからと、生徒へお茶を教えてきた」

「石巻の被害は甚大で、被災して亡くなった方々のうち、3分の1以上が石巻の人々である」

「校長室の耐火金庫は倒れたが、3月30日、ようやく業者に焼き切ってもらい、中身の無事を確認した。
 そこには、紙でくるまれ保護された3つのものがあった。
 137年の歴史を記した学校沿革史、確かな希望のあかしとなった卒業証書、指導要綱である。
 残っているということの心強さを知った」

「3月11日は2時45分に授業が終わり、1分後に地震が起こった。
 下校中の子供たちも学校へ戻り、学校に集まった子供たちは皆、助かった。
 家族と一緒に行動した7名が犠牲になってしまったのは残念だった」

「ほとんどの人々は『学校まで津波は来ない』と思い『もし学校まで来たら石巻は全滅だ』と言っていた。
 学校は地震の避難所だが、津波の避難所ではなかった。
 普通の認識として『よもやあるまい』があった」

「地震が起こった時、二つのことを恐れた。
 大震工事前だったので、校舎が倒壊するのではないか。
 子供たちがパニックになり、安全な避難が困難になるのではないか。
 しかし、普段の訓練で、廊下を走らず静かに歩く、教師の話を聴く時は私語をしないなどの訓練が生き、子供たちは整然と行動してくれた。
 階段で将棋倒しになるなどの事故も起こらなかった」

「電気が使えず校内放送が役立たなければ、現場へ走り肉声を用いるしかない。
 その訓練も欠かせないことを知った」

「校庭で245名の安全が確認された時、鈍色の空が低くなり、横殴りの雪が降ってきて不穏な気配となった。
 校庭には避難者たちがどんどん入って来るが、体育館は天井からの落下物などで使えない。
 そこへ大音量の津波警報が鳴った。
 日和山へ待避するしかなく、結果的に体育館に留まれなかったことが幸いした。
 また、『率先して避難者たれ』と心がけた常々の地震と津波とを連動させる訓練が役立った。
 整然と高台をめざす児童に続いて避難して住民の方々も救われた」

「日和山に着いて30~40分経った頃、津波が来た。
 この間、忘れ物を取り行うと山を下りた方々に犠牲者が出た。
 津波の勢いを見て更に高台へ避難しようと、鹿島御子(カシマミコ)神社をめざした。
 途中から町の様子が見え、涙声で話す子供たちはいたが、大声で泣くなど取り乱す子供はいなかった」

「宮司へ頼み社務所へ入れてもらったが揺れが酷く、外へ出たところへ、住民など40名もの人々を逃がした後で高台をめざした教頭以下4名の教師がやってきた。
 子供たちの無事に安堵する一方で、しんがりとなった4人を津波で失ったのではないかと思っていたので大感激だった」

「児童の引き渡しが始まったが、安全な場所での引き渡しという鉄則の大切さを再認識した。
 もしも混雑する校庭でやっていたなら、半数は犠牲になったのではないか。
 非難する際は出席簿を持つことになっていたが、実行できず、3年生の教師が名簿を持っていたので引き渡しが行われ、この時点で児童7名の不明は把握できていた。
 紙一枚、鉛筆一本ないことの苦労が身に沁み、そうしたものを入れた非常袋を用意する必要性が実感された」

「誰も迎えに来なかった児童40名と教師21名は午後6時過ぎ、石巻孝行へ入った。
 途中で学校が焼けているのを見た。
 こうした避難経路、避難所については、地域住民とよく話し合いをしておく必要性を実感した」

「校長はそのまま駅の近くにある教育委員会へ向かった。
 自家発電でテレビが見られ、仙台市と気仙沼の様子は映ったが石巻はなかった。
 北上川側から津波がひたひたとやってきて、翌朝は腰までの深さとなった」

「児童のうち、父を失った者が5名、母を失った者が6名、孤児となった者が1名だった。
 教師と共に過ごした子供たちのうち最後の1名は、5日後に、遠い叔父さん夫婦が迎えに来た。
 話を聞く前に親たちがいなくなったことを察知した子供を引き渡す時は辛かった。
 この子はその後、二度、転校し、現在は東松島市の小学校へ通っている。
 家族を失った職員はいなかった」

「11日目に門脇中学校へ移った。
 子供たちはどんどん県外へ移るなどしており、早く通常の生活に近づけねばならず、職員室をどこへ置くか懸命に探した。
 情報は得られず、情報は探すしかなく歩きまわった末、門脇中学校から校舎の三階を提供してもらった。
 教育委員会へかけ合い、固定電話がようやく設置されるのを見届けた3月31日、定年退職した。
 仙台市で辞令をもらう際、自分で着付けした着物でというのが夢だったが叶わなかった。
 しかし、避難所の人々が出席され、花束までもらった」

「授業作りと防災教育と日常の生活指導を重視してきた。
 実践的な避難訓練を行い、引き渡し訓練にも力を入れた。
 赴任2年目から行った引き渡し訓練については、最初の一回目が暑さの真っ盛りということもあって保護者たちから大ブーイングを浴びた。
 しかし、何度もやるうちに手順が早くなり、皆さんの意識も変わってきた。
 防災訓練に関するアンケートをとったところ、保護者の98パーセントが回答を寄せ、そのうちの99・1パーセントが肯定的評価をするまでになった。
 その一ヶ月後に大震災がやってきた」

「たとえ保護者が嫌がろうと、必要なことは一緒にやらねばならず、『子育ては共に』である。
 それが実際に役立つ防災教育にもつながる。
 授業参観は保護者と児童が並んで座るようにした。
 最初は50人程度の保護者しか参加しなかったが、最後は180名以上が参観するようになった」

「これからの防災教育について
1 自分で判断し行動する子
2 地域との連携(複数の避難経路・避難所の検討)
3 授業作り
 震災を体験したからこそ、しっかり考える子、自分で判断できる子になって欲しい」

「神戸へ避難した児童が、たった4日の在籍だったが、その学校で卒業証書をもらった。
 辛い思いと共に感謝の気持も伝えてよこした。
『救いとなったのは二つです。
 あの時、先生が早く上がれ、早く上がれと声をかけ、助けてくれことです。
 学校の授業が楽しかったことです』
 自分でしっかり考えながら生きて行ける人間に育てるためには、やはり、授業が大切なのです」

 先生の声は低いけれど、表情や言葉には、役割を見極め信念をもって実行してこられた力強さがあふれ、被災したとはいえ、この学校で育った子供たちの幸せを想いました。
 これからは、映画『3月11日を生きて〜石巻・門脇小・人びと・ことば〜』の英語版を作り、支援してくださった世界中の方々に観ていただくことが先生の願いです。
 一日も早い成就を祈っています。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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