コラム

 公開日: 2012-10-19  最終更新日: 2014-06-04

教師は生徒によって教師となり、親は子によって親となる ─誰でも知っている空(クウ)の話─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈ある喫茶店6〉

 勤め上げた校長先生Aさんは言われました。
「何度、泣きたくなったかわかりません。
 でも、泣いていてもしょうがないんです。
 明日になれば、生徒たちは、おはようございますと学校へやってきます。
 明日になることと生徒たちを相手にする時間が始まることは同じであって、逃げることなどできません。
 生徒一人一人の顔を思い出しながら夜中まで採点し、理解の遅い子へ話しかけるようにガリ版へ向かいました。
 あの生徒たちのおかげで、教師生活をまっとうできました。
 私は生徒によって育てられました。
 教師が一方的に生徒を育てているのではありません」

 娘を結婚させた母親Bさんは言われました。
「娘は反抗期が酷く、何度、叩きたくなったかわかりません。
 でも、私も子供の頃、叩かれた悲しい記憶があるのでガマンしました。
 夫もよく理解して、私を支えてくれました。
 ふり返ってみれば、短気な私がよくガマンできたと不思議な気もしますが、おかげで少しは短気さが改善されました。
 娘の心は私に見えないところで立派に育ち、とても安心できる伴侶を見つけてくれました。
 これ以上の親孝行はありません。
 考えてみれば、娘のおかげで、親の暴力に苦しんだ自分の過去も洗い流されていたのです。
 娘の旅立ちを迎えて、私もやっと一人前の親になれたような気がします。
 子供のおかげで、一人前の大人に成長させられました。
 親が一方的に子供を育てているのではありません」

 
 こうした方々に共通しているのは、自分の未熟さを認め、悪戦苦闘させられる生徒や子供と正面から向き合い、逃げないことです。
 また、教師や親を生徒や子供より〈上〉に置かず、それぞれの立場として平等に観ていることです。
 もちろん、教師にも親にも、生徒や子供のせいにできない重い責任があり、観念的に平等といっても無意味ですが、関係性という視点からはまったく平等なのです。
 生徒がいてこそ教師であり、子供がいればこその親です。
 学ぶ生徒がいなければ教師として生きることはできず、子供のいない親はあり得ません。
 こうした〈関係性〉で観るのが仏法で説く空(クウ)の考え方です。

 私の仏道修行は托鉢から始まりました。
 訪れる先々で、私より遙かに永く人生を生きた方々から、あるいは戦いのまっ最中の方々から、あるいはこれからキャンバスに自分なりを画を描こうとしている方から、人生の多様性や限りない深さや、とてつもない可能性や恐ろしい闇について教えていただきました。
 僧侶や寺院や仏教についての忌憚のない考えを聞かせてもいただきました。
 当山の姿勢や法務の方向性は、そうしたすべての方々とのご縁が積もり重なって醸成されました。
 法楽寺は、仏法との出会い、師との出会い、そしてあらゆる出会いを縁として生まれ、今も変化発展し続けています。
 そうした法楽寺は、建物にあるわけでなく、私という人間にあるわけでなく、檀信徒にあるわけでなく、変化し続ける〈縁の糸〉の総体としてあります。
 やがて後継者ができ、四国八十八か所巡り道場が完成すれば、それもまた、新たな縁を生じるきっかけになることでしょう。

 あらゆるものが空であればこそ、発展性も希望もあります。
 その実感は、冒頭の教師や親御さんのように「おかげさま」から始まります。
 それが「おたがいさま」へと進めば、人生に潤いと充実感が深まります。
 私たち日本人は、誰もが知っているこの二つの言葉で、互いに救い救われる心をつくってきました。
 大切にしたいものです。



 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
Q&A
セミナー・イベント
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
村上春樹氏の「影と生きる」に想う ─影が反逆し始めた世界─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

自衛隊員の本音 ─出征する覚悟、辞める無念─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 不戦堂建立への道 ]

12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ