コラム

 公開日: 2012-11-02  最終更新日: 2014-06-04

なりすまし社会と人間性の崩壊

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈縄文の女神〉

 11月1日のNHKテレビは「クローズアップ現代」において「なりすまし」をとりあげました。
 ライターの夏原武氏が人員採用の現場を鋭くとらえていたのは印象的でした。
 雇用する側は、ほぼ、提出されたデータのみで、面接される人間を判断しようとします。
 能力や経歴、つまり役に立ち、安定的に役割をこなしてくれるかどうかだけが問題であり、その判定根拠は経歴書になったデータです。
 もちろん、意欲がなさそうだったり極端に協調性に欠けるようであれば問題ですが、そうしたマイナス面が薄ければ、データによる点数だけで決まります。
 データを記入し報告する人の〈人物〉という計数化されないありようは、ほぼ、問題にされません。
 おそらくは、データで順番をつけておけば、問題が発生した時に面接担当者の責任問題になりにくいという面も関係しているのでしょう。
 それは誠実さや志といった霊性の発露として最も重要な部分が軽んじられ、反対に、仮面や虚偽といった影の部分も見過ごされることを意味します。
 ここに「なしすまし」発生の下地があると指摘しています。

 私たちは、お互いに遠ざけ合う社会をつくってしまったようです。
 その一方で、ぬくもりが薄い不安を補おうとするかのように、携帯電話やメールの依存症が増えています。
 血の通った人間とどう向き合えばよいかわからず、あるいは必ずしも自分の意のままにならないやりとりから逃げようとし、互いに〈見せたい部分〉だけを見せ合って済ませる〈対面のない交流〉に走ります。
 こうした形は前述の経歴書だけのやりとりと、どう違っているでしょうか?
 違法ではなく社会的要請に基づいた人助けであるとうそぶきつつ経歴書など身分を偽るための書面を作り、なりわいとしている不逞の輩もいますが、自分にとって都合の良い一通のメールで他人の歓心を買おうとする私たちの心は、こうした闇の世界で設けようとする人々とどれほどの距離があるでしょうか?
 
 自分をよく見せたいという願望は誰にでもあります。
 自分の弱点や欠点は隠したいものです。
 お互いがある程度こうした飾り合いをしているということは前提条件とした上で、人間関係が構築されます。
 飾らずにいられない哀しい者同士であればこそ、許し合いもできます。
 しかし、それは、許し合える〈程度〉の飾り合いでなければ成り立ちません。
 今の私たちは、この〈程度〉に関する感覚が崩壊しつつあるのではないでしょうか?
 自己欺瞞が見えなくなり、やがては仮面の自分を自分と錯覚し、同時に、他者の自己欺瞞が観えなくなり、他者の仮面を見破られなくなり、許せなくもなってきたのではないでしょうか?

 こうして真実のありようからどんどん離れた人間関係にあっては、必然的に根拠なき希望は叶い難くなり、互いに原因のある裏切られ体験は人間不信を募らせます。
 ここから逃れるすべは一つしかありません。
 あまりにも厚い仮面をかぶり合う恐ろしさに気づき、〈程度〉の感覚を取り戻すことです。
 そのための具体的な方法は、メールの自制など自分で考え、自分で実行するしかありません。
 ただし、決して欠かせないものが一つだけあります。
 それは「生身の人間として生身の人間と会う」ことです。

 なりすまし社会は私たちの人間性が崩壊する兆しであることを身震いしつつ認識したいものです。




 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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