コラム

 公開日: 2012-11-04  最終更新日: 2014-06-04

三十七の菩薩(ボサツ)の実践(第二十九回) ─食べものへの感謝、そして集中と分析─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈去ったクロやメリーへ塔婆を通じて捧げられたまごころ〉

 菩薩(ボサツ)になるための実践道。第二十九回目です。
 言葉は専門的ですが、内容には実生活でも役立つポイントが含まれています。
 
「止(シ)』を伴ったすぐれた『観(カン)』が
 煩悩(ボンノウ)を克服するのをよく知って
 四無色定(シムシキジョウ)を超越した禅定(ゼンジョウ)を修習(シュジュウ)する
 それが菩薩(ボサツ)の実践である」

 菩薩になるための六つの修行である六波羅蜜(ロッパラミツ)行に禅定があります。
 禅定とは、心身の統一と安定です。
 私たちが普段、み仏や御霊へ食べものを供えて合掌する時に持つべき心構えとしての禅定は、以下の誓文のとおりです。
「我、己を捨てて食べ物となる生きものに感謝し、心身を整えん」
 他の生きもののいのちをいただいて心身をゆったりさせることによって、必要な智慧がはたらかせられます。
 お釈迦様が悟りを開かれたのは、難行苦行を離れて村娘スジャータの差し出す乳粥(チチガユ)をいただき、静かな木陰に座って瞑想を深めたからでした。
 お大師様もまた、海に面した高知県室戸市室戸岬町の洞窟で虚空蔵求聞持法(コクウゾウグモンジホウ)という真言100万返の修行をされた時、修行と生活のバランスをとっておられたと推測されます。
 二つの洞窟を用い、片方を座って唱える道場(神明窟…シンメイクツと呼ばれる)とし、もう片方を生活の場(御蔵洞…ミクロドウと呼ばれる)として食べたり寝たりしておられたようです。

 行者の食べものは出世間食(シュッセケンショク)と言われ、5つの功徳があります。

①善悦(ゼンエツ)食
 心身の落ち着きを得ます。
②法喜(ホウキ)食
 仏法を学べることを喜べます。
③念食
 心に保つべき臆念がしっかりします。
④願食
 善き願いを持ち続けられます。
⑤解脱(ゲダツ)食
 煩悩から離れられます。

 これは、適度な飲食ができない中での難行苦行ではどうなるかという警告でもあります。
 心身に落ち着きがなくなり、食物探しで学びにくくなり、教えがいつも保てず、食べたいという願いに押され、煩悩からの脱出は困難になるのです。

 私たちの日常生活にあてはめてもよくわかります。

①適度な食べものがあれば安心であり、ものごとを落ちついて考えられます。
②仏法を学べるのも、飲食が確保されていればのことです。
③盗んではいけないという戒めを知ってはいても、飢えと渇きに苛まれていたなら、いざという時どういう行動に走るかわかりません。
④いかにすばらしい人道的な願いを持っていようと、飢えて倒れそうになっていれば、成就へ向かう必要な行動はとれません。
⑤飢えて生きものとしての危機が迫れば、最悪の煩悩である貪りの心、怒りの心、愚かさの心など、ありとあらゆる悪しき心が飛び出しかねません。

 このように、食べものと心身の安定を伴う禅定の心には密接な関係があります。

 さて、専門的な修行である「止(シ)」と「観(カン)」へ進みましょう。

 「止」は集中です。
 呼吸の数を数えたり、「今、自分は呼吸をしている」「今、自分は歩いている」などと自分がやっていることを意識したり、一輪の花や滝の音など何か一つのものに意識を集中させたりすることです。
 この訓練を続けると意識が散漫にならず、じっと思考を深められるようになります。
 「観」は分析です。
 代表的なものは、死体が骨だけになるまでの経過を観察したり、想像したりする「九想観(クソウカン)」です。
 膨張→腐乱→散乱→骨片をありのままに詳しく観想します。
 この訓練を続けると、ものごとを究極まで考え抜く力がつきます。

 止と観の力をはたらかせて現象世界を眺めると、人もネコも桜も家も因と縁によってこの世へ現れ、そしていつかは去って行くことがよくわかります。
 こうして因果の理を骨の髄まで納得し、空(クウ)を見極めれば煩悩は消えるとされています。
 それはどういう状態か?
 まだ悟っていない私などには断定できませんが、いくつか、それらしい感じはあります。
 たとえば、いかに酷い状況になろうと、これで行き詰まりと諦めたり、捨て鉢になったりはしません。
 棚ぼた式のできごとがあっても、これで万々歳だなどと舞い上がったりもしません。
 すべては変化し、人はいつも可能性の中に住んでいるからです。
 また、いつも、自分の身体、いのち、心は〈かりそめに〉この世にあるという実感を持っています。
 地・水・火・風・空である骨格や血液や体温や呼吸やそのバランスが奇跡的に保たれている時、それが生きていられる「今」の瞬間であると深く腑に落ちているからです。
 また、お塔婆を捧げて供養する時、この世のありとあらゆる徳を捧げるというまごころが実感されます。
 表面の梵字で表す「地・水・火・風・空」は現象世界のすべてであり、裏面の梵字で表す「識」は見えない世界のすべてだからです。

 こんなふうに、集中と分析によって教えが道理として理解・納得され、心の深いところへおさまると、不思議に安心感が離れなくなります。
 私は「この世の幸せとあの世の安心」が得られる場でありたいと願を立てて開山しましたが、幸せはこうした安心感が元となって流れ出す感謝や生きがいなのかも知れません。
 そして、この安心感こそがみ仏のご加護と言えるのかも知れません。

 食べものに感謝して、適度にいただき、心身をリラックスさせましょう。
 心を集中させたり、どこまでも分析を深めたりする時間を持ちましょう。
 「いじめはなぜ起こるのか?」「どうして人間関係がスムーズに持てなくなったのか?」「あの方の信頼感はどこから生じているのか?」「
 修行はいつでも、どこでも可能であり、私たちはいつでも、どこでも私たちなりの方法で菩薩に近づけ、菩薩になれるのです。

※「四無色定(シムシキジョウ)」とは、色や形や空間の概念も超えた世界にある神々(天界にあってまだ輪廻の中にいます)の精神世界ですが、地蔵菩薩や観音菩薩はそこをさらに超えて、輪廻転生を離れた境地にあるとされています。





 こうした内容に関心のある方はブログ(http://hourakuji.blog115.fc2.com/)の拙稿をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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